第8弾は、緊急時の通信や、スペシャルVFR、フライトプランの変更、PIREPなど通常と異なる飛行をする場合の交話法についてです。
航空無線資格の「ROC-A」における緊急時の交話法は別記事をご覧ください。
緊急時の通信要領
緊急時の通信を行う場合は、状況を正しく詳細に伝えることが重要です。もしそういった状態に陥ったら、できるだけ速やかに「MAYDAY」コールを実施すればするほど、救助機関も速やかに対応できます。援助が必要でない緊急の状態であれば、「PANPAN」コールを実施することで、援助の要請の有無を判別することができます。
遭難通信(MAYDAY)
航空機が重大で差し迫った危険に脅かされ、速やかな救助が求められる「遭難」の状態に陥った場合に「MAYDAY」を使用します。
Mayday mayday mayday, Cessna 172 “FOIJ”, engine fire, landing in field 2NM SW of Gander, 3 persons on board, endurance 2 hours.
緊急通信(PAN PAN)
航空機や人員に安全上の懸念がある状態で、速やかな救助は特に必要ない「緊急」の状態に陥った場合に「PANPAN」を使用します。
Pan pan, pan pan, pan pan, Helicopter “FGNB”, passenger aboard in medical distress, request land threshold 19, 2 persons on board.
もし無事に着陸出来たら、可能であれば管制機関にコンタクトして最新状況のレポートに努めましょう。
燃料欠乏(Fuel Emergency)
残燃料量が下限値を下回り、もっとも近くの安全な飛行場に着陸する必要がある場合に燃料に関する緊急事態を宣言します。
Mayday mayday mayday fuel, Lethbridge Radio, Cessna 152 “GINK”.
残燃料量の低下(Minimum Fuel)
残燃料量が限界に近づいている場合に行うこのコールは、他の飛行場へのダイバートやサークリングでの待機、ダウンウィンドの延長などが燃料上余裕がないということ管制官に知らせます。最低限の燃料量を確保した状態で目的地に着陸できるように計画をしておかなければなりません。「PAN PAN」の状態に似ていますが、管制官に燃料の状況を正しく伝えることができれば緊急事態の宣言をする必要はありません。
Yellowknife Radio, this is DC-3 “FHGI”, minimum fuel.
管制機関の電話番号を携帯電話に登録しておくことが推奨されています。通信上の不具合でうまくコンタクトを取れない場合は、安全上必要な場合には電話を使用することも考慮しておくべきでしょう。電話番号はCFSに記載されています。
VDFステアの要求
VHF方向探知(VDF)による航法は、機位が不明な場合などに方位情報の支援が必要なVFR機が管制機関にリクエストすることで利用できます。FSSから方位情報を得られたとしても、レーダーで捕捉されているとは限らないことに注意する必要があります。障害物や他機との間隔をとって安全を確保する責任はパイロットにあります。
St. Catharines Radio, Cessna 150 “FLLM”, requesting VDF steer to St Catharines Airport, over Smithville 5,500 ft, heading 085.
Cessna “FLLM”, St Catharines Radio, VDF navigation assistance will be provided to St Catharines VDF.
“LLM”, transmit for bearing by holding mike button, give call sign, wait 2 seconds, repeat call sign.
Cessna “FLLM”………Cessna “FLLM”.
“LLM”, altimeter “2996”, maintain VFR.
“LLM”, your heading to St Catharines is 060, report aerodrome in sight.
060 to St Catharines, report aerodrome in sight, “LLM”
スペシャルVFRの要求
パイロットが特別有視界方式(スペシャルVFR)で飛行しようとするときは、管制官にその旨リクエストをして承認を得る必要があります。気象条件が基準以上であれば、到着、出発または管制圏内の飛行に関するクリアランスを得ることができます。
St Andrews Tower, Bonanza “GEFD”, inbound to land with information “D”, requesting special VFR.
Bonanza “GEFD”, St Andrews Tower, special VFR is approved in the St Andrews control zone. Cleared straight in RWY36.
Special VFR approved, cleared straight in RWY36, “GEFD”.
St. Andrews Ground, Caravan “FKLR” on apron 3 with information “D”, request special VFR and taxi.
Caravan “FKLR” St. Andrews Ground, weather below special VFR minima, visibility 1 half mile, only IFR operations are permitted. What are your intentions?
“FKLR” will return to the hangar and file an IFR flight plan.
“KLR”, roger
上空通過(OTT)
義務周波数を有する空域を通過する場合、FSSにVFR上空通過(OVER-THE-TOP)をする旨を知らせます。管制圏やターミナルコントロール空域の上空を通過する場合は、クリアランスを受領する必要があります。
Hamilton Tower, Grob “GVPF” with information “O”.
Grob “GVPF”, Hamilton Tower.
Hamilton Tower, Grob “GVPF” request VFR Over-The-Top to Kingston.
“VPF” cleared through the Hamilton control zone VFR Over-The-Top.
PIREP
管制機関やFSS機関は、パイロットからの天候報告であるPIREPを重要視しています。地上での気象情報解析には限界があるので、実際に上空を飛行している航空機からの最新で詳しい情報を共有することで、その空域を飛行する他の航空機の安全を確保できるためです。レポートする際は、できるだけ詳細な情報提供に努めましょう。担当機関であるFICに直接レポートすることができれば、より速やかに情報を各部に展開することができますが、近くの管制機関でも構いません。
London Radio, Katana “FPBK” with PIREP.
“PBK”, roger
Katana “FPBK”, E of Campbellford VOR, over the town of Madoc, 3,000 ft, OVC at 4,000ft, moderate turbulence.
フライトプランの変更
もし提出したフライトプランに記載された経路や飛行時間、目的地を変更する必要が生じた場合は、可能な限り速やかに管制機関に知らせます。
Edmonton Radio, this is Piper Seminole “FREM”.
Seminole “FREM”, Edmonton Radio.
Seminole “FREM” on VFR flight plan from Red Deer to Saskatoon, I would like to make a change to my flight plan.
“REM”, roger.
Divert to Vermilion Airport for 30 min stopover, then continue from Vermilion to Saskatoon. New ETA at Saskatoon 1700, “REM”.
“REM”, Vermilion 30 min stop, proceed to Saskatoon, new ETA 1700.
“REM”.