パイロットの勤務時間と休養時間の法規制について【CARs:カナダ航空法規則】

FLIGHT
  1. 搭乗員の疲労 (勤務/休養) について
      1. 規範的な部分
      2. 実践的な部分
      3. 疲労リスク管理システム (FRMS)
  2. 「Fatigue」に関する記載
    1. AIM
    2. IPM
  3. 会社の管理義務 700.20
    1. 誰が責任をもって規定を守るのか
  4. 用語の定義
    1. 新規追加
    2. 削除
  5. 飛行時間 (Flight Time)
    1. 最大飛行時間 (Maximum Flight Time) 700.27(1)
      1. 最大飛行時間の管理責任
      2. 適用される飛行時間
  6. 飛行勤務時間 (Flight Duty Period: FDP)
      1. 夜間終了勤務/夜間勤務/早朝開始勤務の定義
      2. 時間帯に関する定義
    1. 時刻帯順応 (Time Zone Acclimatization)
      1. 時間に順応すること 700.19(2)
      2. 「Acclimatized」の考えの使い方
    2. 最大飛行勤務時間 (Maximum Flight Duty Period)
      1. 最大FDPの時間計算法
      2. 増強クルー (Augmented Crew) の最大FDP 700.60
      3. クラス1 休養設備
      4. クラス2 休養設備
      5. クラス3 休養設備
    3. 長距離飛行
      1. 長距離飛行 (Long-range Flights) 700.61
      2. 超長距離飛行 (Ultra long-range flights) 700.62
  7. 最大労働時間数 (Maximum Number of Hours of Work) 700.29
      1. 最大労働時間数
      2. 待機関連の労働時間数の計算法
  8. 休養期間 (rest period)
    1. 新たに定義された休養に関する用語
    2. 飲食休憩 (Nutrition Break) 700.37
    3. 最小休養時間 (Minimum Rest) 700.40
    4. 追加休養 (Additional Rest)
      1. 破滅的スケジュール (Disruptive Schedule) 700.41
      2. 時差と宿泊地による休養追加条件
      3. 時差とFDPの開始時間による休養追加条件
      4. 複数回の特定時間帯にかかるFDPの場合の追加休養条件
      5. 飛行以外の勤務に関する追加休養条件
      6. FDPの延長に伴う追加休養条件
    5. フライトデッキ内での管理休養(Controlled Rest) 700.72
    6. 配置移動 700.43
  9. 予測外の運航状況 (UOC: Unforeseen Operational Circumstances) 700.63
      1. 機長判断 (Authority of pilot-in-command) 700.63(1)
      2. 分割飛行勤務に変更するオプションの考慮
  10. 分割飛行勤務 (Split Flight Duty) 700.50(1)
      1. 待機クルーの分割飛行勤務に関する制限事項
  11. 待機(Reserve)に関する規則
      1. 新たなに定義された待機に関する用語
    1. 最大待機勤務時間 (Maximum Reserve Duty Period) 700.70
      1. 通常クルーの最大連続待機勤務時間
      2. 増強クルーの最大連続待機勤務時間
    2. 待機可能時間 (RAP: reserve availability period)
      1. 待機可能時間 (RAP) を会社から通知されるタイミングに関する規定 700.70 (1)
      2. RAPの開始時刻に関する会社の順守規定 700.70 (2)
      3. RAPの連続時間に関する規定
      4. FDPを含めた最大時間の制限
  12. 勤務開始の遅延 (Delayed Reports) 700.52
      1. 遅延を通知されるタイミングによる違い
      2. FDPの延長に関する規定
      3. 遅延後のFDP開始タイミング
      4. 搭乗員への連絡
  13. 参照リンク
    1. 関連

搭乗員の疲労 (勤務/休養) について

搭乗員の疲労は航空安全に直結します。

搭乗員の疲労管理 (Fatigue Management) については、従来よりカナダ航空規則 (CARs) 第700.19項から第259項までに規定されていますが、2018年12月12日にこれに関する大きな動きがあり、カナダ官報第2部Canada Gazette, Part IIにおいて、パイロットの飛行勤務関連規則pilot duty regulationsに関する変更に関して記載がなされる、その内容が航空サーキュラーとして発行されました。

規範的Prescriptiveな部分と、実践的な部Performance-based分に分けて規定されています。

規範的な部分

会社が守る最大の
  • 労働時間 (hours of work)
  • 飛行時間 (flight time)
  • 飛行勤務時間 (flight duty periods)
会社が守る最小の
  • 休養時間 (rest periods)
  • 非勤務時間 (time free from duty)

実践的な部分

会社が守るものの中で各個のフライトに対して適用されるもので、TC未公認ではあるが、疲労リスク管理システムfatigue risk management system (FRMS) などを使って管理するもの。

本記事で紹介する疲労管理に関する規則は、703運航(エアタクシー)、704運航(エアコミューター)、705運航(エアライン)に適用されるものであり、702運航(使用事業/Aerial Work)や医療避難飛行(Medevac)については、別の規定となっているため注意が必要です。

疲労リスク管理システム (FRMS)

カナダ運輸省 (TC) が公認するものではないが、705運航、704運航、703運航だけでなく702運航にも適用される。このシステムの要件については、以下のサーキュラーで定まっている。

「Fatigue」に関する記載

AIM

AIM AIR 3.8では「FATIGUE」についてこのように書かれています。

疲労反応時間を遅らせ集中力を低下させ注意の誤りerrors of attentionにつながります。
最も一般的な原因は、休息不足insufficient rest睡眠不足lack of sleep過労ですoverexertion
疲労は、貧血anaemia睡眠時無sleep apnoea呼吸インフルinfluenzaエンザ風邪head coldsどの一般的な病気だけでなく、ビジネスのプレッシャー経済的または家族の問題などの他のストレスによっても悪化aggravatedる可能性があります。
パイロットは、急性acuteまたは慢性chronic疲労運動能力判断力に及ぼす微妙な影響を認識し、これらのいずれかが存在する場合は飛行を避ける必要があります。
パイロットは、疲労を防止するために睡眠管理good sleep hygiene行う必要があります。飛行していないときでも、疲労や眠気にdrowsiness悩まされることが多いパイロットは、医療関係者にhealth-care provider相談し徹底的な診察を受ける必要があります。

退屈Boredom疲労は両者相互に作用しあって悪化させる関係です。退屈を克服する方法の1つは、対地速度groundspeed燃料消費量fuel-consumption頻繁にfrequentチェックし、精神的に活発mentally activeな状態を保つことです。
代替飛行場diversionに行くにはどうするかを計画したり、関連する飛行場のチャートを調べたりすることも役立ちます。

AIM AIR 3.8「FATIGUE」

IPM

計器飛行マニュアル「IPM」の1.3.3では「FATIGUE」についてこのように書かれています。

慢性的または急性いずれの場合も「疲労」は深刻な問題となります。特に、正確さと集中力が必要不可欠となる計器飛行において、疲労は注意力や飛行全体の精度低下重大な判断ミスをもたらす可能性があります。コクピット内での長時間の不快な状態、食生活の悪さ、体調不良があればより悪化することになります。睡眠不足うつ症状に発展することもあるし、逆にそそれ自身が原因である場合もあります。多くの場合、悪天候下において、あとはもう計器進入で着陸するだけ、という最終飛行のときが最も危険と言われています。

IPM 1.3.3「FATIGUE」

会社の管理義務 700.20

全ての航空会社は、「Monitoring System」と呼ばれるシステムを整備しなけばならず、搭乗員の飛行時間や勤務時間、休養時間についてモニターする義務があり、システムの詳細については、社内運航規程 (COM) の中で示されることになっています。

次の項目について、記録の保管義務が定められています。

会社の記録保管義務
  • 全飛行時間
  • 各飛行勤務時間の開始終了時刻と時間
  • 各勤務時間の開始終了時刻と時間
  • 各休養時間の開始終了時刻と時間
  • 全非勤務時間 (free from duty)

誰が責任をもって規定を守るのか

会社?搭乗員個人?誰かひとりの責任ではなく、皆が守らなくてはいけません。

航空会社air operatorには、上記700.20の規定に基づき、飛行時間や勤務時間を管理するためのシステムの保有が義務づけられています。また、700.28では搭乗員に最大時間を超えるような飛行勤務時間をアサインしてはいけないように定められており、そういった意味で会社に責任があるのは間違いありません。

しかし、一方で同じく700.28では、搭乗員個人がそれを受け入れてはいけないということも規定されています。ですので、「機長が守るもの」という考えはここでは出てきません。

もっと広い視点でとらえると、運航管理責任者Operations Managerの責任として、安全な飛行運航safe flight operationsを行うことが723.07で示されています。もちろんこの「安全」には、搭乗員が規定以上の勤務をさせられないことが含まれますので、運航管理責任者にも責任があると言えます。

搭乗員の勤務時間に責任をもつ主体
  • 航空会社
  • 搭乗員個人
  • 運航管理責任者

用語の定義

搭乗員 (Flight Crew Member)

飛行中(During Flight Time)パイロットまたは飛行機関士として活動することをアサインされた搭乗員

新規追加

勤務可能態勢 (fit for duty)

疲労fatigueアルコール/薬物消費consumption of alcohol or drugs精神的mental/肉体的状態physical conditionにより、各搭乗員flight crew memberとして活動actする能力ability損なわimpairedれていないこと

配置移動 (positioning)

航空会社の要請により、搭乗員がflight crew memberある地点one locationから別のanother地点へ移動transferすること
(会社指定の宿泊施設suitable accommodation搭乗員の自宅member’s lodgingなどへの往復のto or from移動travel含まれnot includeない)

削除

flight deck duty time
flight duty time

飛行時間 (Flight Time)

Flight Time」とは、機体が離陸を目的として自力で移動開始した瞬間からエンジン停止などで飛行終了まで。
※「Air Time」は、機体が地表面を離れた瞬間から次の着陸地点で再度地表面に接地する瞬間まで。

最大飛行時間 (Maximum Flight Time) 700.27(1)

最大飛行時間の管理責任

飛行時間について、法廷の範囲内で勤務が割り当てられているかを追跡Trackする責任があるのは、会社だけ個人だけではなく両方です。
規則は明確で、会社はこの制限を超過する飛行のアサインをすることできず搭乗員個人はそれを受諾できないというものです。いくつか例外はありますが、航空会社営業許可証 (AOC: Air Operator Certification) やカナダ航空規則 (CARs) 第720.16項に詳細の記載があります。

適用される飛行時間

計算にあたっては、全ての飛行時間Flight Timeを合計して算出します。会社1つの勤務に関する飛行時間だけではなく、個人が関連するすべての飛行勤務が適用対象で、増強クルーAugmented Crewとしての飛行も含まれる。

例えば、航空会社に所属しながら、オフの時間に飛行学校で飛行教官をする場合には、飛行時間としてそれぞれを合計して計算しなくてはならないので注意が必要です。
増強クルーの場合、座席に着いていない時間も計算対象です。

最大飛行時間 (Maximum Flight Time)
  • 112時間 連続28日間中 (新規追加項目)
  • 300時間 連続90日間中 (変化なし)
  • 1,000時間 連続365日間中 (1200から減少)
操縦士1名の飛行のみ
  • 8時間 連続24時間中 (新規追加項目。IFR/VFRによらない。)

ここでの適用は703運航 (エアタクシー)、704運航 (エアコミューター)、705運航 (エアライン) のみに限定されるため、医療避難 (Medevac) に関する飛行は、ここで示す最大FDPの基準とはやや違った基準になっているので注意が必要。(700.100 700.199)

常に過去27日間、過去89日間、過去364日間で何時間飛んでいたかを把握していなければ、今日何時間の飛行ができるかが分かりません。会社がアサインの上で把握責任はあるが、受諾するのはパイロットの責任です。

例: 過去27日間103.4時間飛行していたら、今日飛べるのは112 – 103.4 = 8.6時間
過去89日間290.2時間飛行していたら、今日飛べるのは300 – 290.2 = 9.8時間
過去364日間986.7時間飛行していたら、今日飛べるのは1,000 – 986.7 = 13.3時間
このように認識をした上で、その日の飛行勤務を開始する必要があります。

飛行勤務時間 (Flight Duty Period: FDP)

Dutyすなわち仕事workをしている期間(時間)として新たに定義された概念で、飛行時間(Flight Time)に加え、次に示すような時間も対象。

FDPの開始要件 (いずれか早いもの)
  • 飛行開始前のreporting for a flight会社指定assigned作業
  • 最初の飛行flight開始reports
  • 配置移動positioning開始reports
  • スタンバstandby開始reports
FDPの終了要件
  • 最終フライト後のエンジン停止

夜間終了勤務/夜間勤務/早朝開始勤務の定義

夜間終了勤務 (Late duty)

開始: 指定なし
終了: 24:00から01:59までの間 (時刻帯順応を加味)

夜間勤務 (Night Duty)

開始: 13:00から01:59までの間
終了: 02:00以降 (いずれも時刻帯順応を加味)

早朝開始勤務 (Early duty)

開始: 02:00から06:59までの間 (時刻帯順応を加味)
終了: 指定なし

時間17181920212223000102030405060708091011121314
WOCLWOCL
例1早朝Early開始勤務dutyの例
例2夜間Late終了勤務dutyの例
例3夜間勤務Night Dutyの例
夜間終了勤務/夜間勤務/早朝開始勤務の例

時間帯に関する定義

サーカディアン・ロー時間帯
(WOCL: Window of circadian low)

身体的低調期順応時刻帯を基準at the location you are acclimatizeとして、02:00から05:59の時間帯
飛行におけるパフォーマンス低下が予期され、覚醒度が大きく低下する身体的低調期で、脳が眠気を誘発するため、飛行の制限や考慮が必要になる時間帯。

時刻帯順応 (Time Zone Acclimatization)

CARsで「搭乗員のバイオリズムbiorhythmが現地時刻帯に順応すること。」として新たなに定義された用語で、在いる場所currently locatedではなく順応地域の時刻帯acclimatized time zone (通常本拠地の空港) を基準に考えられるようになりました。これまで搭乗員は到着した時刻帯に順応しなければならなかったので、これが明示されたことは重要です。

例: バンクーバーYVRベース(本拠地)のパイロットにとって、バイオリズム的に順応している時刻帯は「太平洋時刻帯Pacific Time Zone」と言うことができ、飛行勤務時間(FDP)を「大西洋時刻帯Atlantic Time Zone」を使用するハリファックスの現地時間08:15で開始したとすると、ここはを適用する地域なので、順応する時刻 (すなわち太平洋時刻帯) で考えると04:15なので、このパイロットの「時刻帯順応を加味した勤務開始時刻は04:15となる。
これにより、結果として乗務員の最大飛行勤務時間が大幅に短縮されることとなる。

時間に順応すること 700.19(2)

搭乗員が時差のある新たな場所in the new locationに移動すると、時差1時間に順応するのに24時間の割合で時差による概日リズムの乱れcircadian disruptionsから回復recoverするのに十分な時間を要すると定義されている

「Acclimatized」の考えの使い方

最大飛行勤務時間(FDP)や休養時間を算出するための各種一覧表を使うにあたって、まず「時刻帯順応Acclimatizedを加味して」という記載があるかどうかを確認します。基本的に、次のいずれかに当てはまる場合は該当します。

本拠地でなく現在地での時刻帯に順応する基準 700.28(5)
  • 時刻帯差が4時間未満の新時刻帯で72時間滞在 (必要な休養時間any required rest periodを含む)
  • 時刻帯差が4時間以上の新時刻帯で96時間滞在 (必要な休養時間any required rest periodを含む)
  • 日ごとの順応速度は、別の時刻帯で24時間滞在する毎に1時間ずつ順応

上記は一部矛盾するが、一般的に会社がどの考え方を適用するかを社内運航規程(COM)の中で定めている。

\時差
滞在時間
1時間
MST
2時間
CST
3時間
EST
4時間以上
AST
24時間MSTMSTMSTorPST
48時間CSTCSTorPST
72時間ESTEST
orPST
96時間AST
PSTを基準とした順応時刻帯の変化例

例1: 月曜の朝にバンクーバーを出発、同日1800ESに3時刻帯差(=時差3時間)となるトロントに到着し6日間滞在
火曜の朝0700ESTに飛行勤務開始なら、飛行勤務の開始時間上バンクーバー時間であるPSTを使用するので、0400PST開始
金曜の朝0700ESTに飛行勤務開始なら、トロント時間を使用して0700EST開始

※ただし、この間にあたる期間の「順応」の考え方については、2つの方法が定義されており、いずれの考えを使うかは会社次第

考え1: 到着72時間後にあたる木曜の1800ESTまでトロント時間に順応することはない
考え2: 水曜の朝0700ESTに飛行勤務開始なら、トロント方向に使用時差が1時間ずれるので、0500MST開始。木曜の朝0700ESTに飛行勤務開始なら、トロント方向に使用時差が計2時間ずれるので、0600CST開始。金曜の朝0700ESTに飛行勤務開始なら、トロント方向に使用時差が計3時間ずれる(すなわちトロント時間になる)ので、ESTをそのまま使用し0700EST開始

月曜火曜水曜木曜金曜
イベント朝YVR出発
1800EST
YYZ到着
0700EST
FDP開始
0700EST
FDP開始
0700EST
FDP開始
1800ESTで
72時間経過
0700EST
FDP開始
使用時刻帯
(順応の考え方1)
※72時間後まで不適用
PST
(UTC-8)
0400PST
(UTC-8)
早朝開始Early duty勤務
0700EST
(UTC-5)
現地に順応
使用時刻帯
(順応の考え方2)
※24時間ずつ順応
0400PST
(UTC-8)
早朝開始Early duty勤務
0500MST
(UTC-7)
早朝開始Early duty勤務
0600CST
(UTC-6)
早朝開始Early duty勤務
時刻帯順応に関する考え方の例

例: 月曜の朝にバンクーバーを出発、火曜の1100GMTに8時刻帯差(=時差8時間)となるイギリス・ロンドンに到着し3週間滞在
到着96時間後にあたる土曜の1100GMTまでロンドン時間に順応することはない
水曜、木曜、金曜に飛行勤務を実施しても下記のように、ずっとバンクーバー時間をFDPで使用する
1500GMTは0700PSTなので0400勤務開始の欄を使用
0800GMTは0000PST(深夜)なので2030勤務開始の欄を使用
土曜の1100GMTからいきなりロンドン時間の使用に切り替わる

残念ながら、この時刻帯順応の概念は、Medevac702運航には適用されない

最大飛行勤務時間 (Maximum Flight Duty Period)

  • 実際に飛行している時間の飛行時間Flight Timeを元に規定した上記の制限に加え、働く時間、すなわち飛行勤務時間Flight Duty Periodに対する制限もあり、条件によって9時間から13時間の間で定められている。
飛行勤務時間の開始
  • 勤務workday開始reportした瞬間
    (時刻帯順応acclimatizationに関する例外規定も適用)
飛行勤務時間の終了
  • 最終飛行のエンジン停止

最大FDPの時間計算法

  • 最大飛行勤務時間は、次に示すいくつかの要素を使って計算する。
最大FDPの計算要素
  • 一日の平均飛行時間Average Flight Duration (30未満 / 30以上50未満 / 50以上)
  • 一日のフライト数
  • 飛行勤務Flight Duty開始時間
  • 日中のVFRか
  • 時刻帯順応acclimatedの加味
開始
時刻帯
1レグあたりの平均飛行時間数と飛行回数備 考
30未満1~1112~1718以上
30~50未満1~78~1112以上
50以上1~45~78以上
0
1
2

3
am00-049時間開始0159まで+
終了0200以降=
夜間勤務

開始0200以降
早朝開始勤務
404-0510時間9時間早朝開始勤務
505-0611時間10時間9時間
606-0712時間11時間10時間
7
8
9
10
11
12
07-1313時間12時間11時間
13
14
15
16
pm13-1712.5時間11.5時間10.5時間終了0200以降=
夜間勤務
17
18
19
20
21
17-2212時間11時間10時間
2222-2311時間10時間9時間
2323-0010時間9時間
最大飛行勤務時間 (FDP)

例1: 21:00のFDP開始で2時間程度の飛行を2回予定、最大FDPは12時間
例2: 07:30のFDP開始で飛行を5回予定、最大FDPは12時間だが1回減り4回になると13時間
例3: 07:30のFDP開始で飛行を6回予定、最大FDPは12時間だが1回増え7回になると11時間

日中のVFRのみの場合は、一番左列の時間を適用

増強クルー (Augmented Crew) の最大FDP 700.60

増強
クルー数
休養設備クラス最大FDP
321
1名14時間
15時間
2名15.25時間
16.5時間
18時間
休養設備の条件
FDP中の
飛行回数
全搭乗員
搭乗員共通最終着陸操縦士
1回上空休養 休養設備
2回
3回
90分間2時間
4回以上最大FDPは通常基準を採用
上空連続休養時間の条件
  • 上の表で示される「増強クルーに対する最大FDP」は、3以下のフライト数となるFDPのみに次の条件にすべて合致した場合に適用される。

例1: FDP中に飛行回数が2回、増強クルー1名でクラス2休養設備にて最終着陸パイロットが2時間、その他の搭乗員も90分間上空で休養できれば、最大FDPは15時間まで延長可能。
例2: FDP中に飛行回数が4回の場合、通常の最大FDPが適用され、開始時間によって9~13時間
例3: 増強クルー2名での1回のFDP中、上空休養するのにクラス1が使用できれば18時間、クラス3しか使用できなければ15.25時間

3クラスの休養設備 (rest facility)

クラス1 休養設備

バンクbunkもしくは以下のような場所に設けられたその他の水平表面horizontal surface

水平表面の要件
  • フライトデッキや客室とは別に設置
  • 室温や照明のコントロールができる
  • 騒音noiseやその他の妨害をdisturbances最小化すること

クラス2 休養設備

以下のような場所に設けられた完全に横になってhorizontal sleeping position眠れる座席seat

横になって眠れる座席の要件
  • light音をsound低減できるようカーテンやその他の方法で乗客とは離れて設置
  • 携帯酸素装置が備え付けられている
  • 乗客や搭乗員による妨害をdisturbances最小化minimizesすること

クラス3 休養設備

  • 垂直位置から40以上倒せreclinesレッグサポートleg and foot support付き座席seat
  • 休養設備rest facilityでの休養時間勤務duty時間含まれる
  • 最初のフライトが105分未満の場合のみ2回目以降のフライトにクルー追加も可能だが、全員同じ場所で勤務を終えること
  • 追加クルーのうち少なくとも1名は、離着陸時にフライトデッキにいること。ただし、2回目以降で追加した場合の最初のフライトは適用外
  • 上空休養は、高度10,000ft以上かつTODの15分前までだけ
  • FDPが延長された場合の休養時間は、次のうち最も長い時間
FDPが延長時の休養時間
  • 延長されたFDP同時間
  • 適切な宿泊施設14時間
  • 本拠地で終了した場合自宅で16時間

フライトflight deckデッキ (コックピット) 内での管理休養Controlled rest (Napping under control) は別の項目であり、FDP飛行時間flight times延長とは無関係

長距離飛行

長距離飛行 (Long-range Flights) 700.61

長距離飛行に関する規定 700.61
  • FDP内にWOCL(window of circadian low)にかかるinfringes増強クルーなしun-augmented flight crewsの運航の場合、7時間以上スケジュールされた飛行scheduled flightの後に行わないこと。
  • 同一搭乗員with the same flight crewより引き続き7時間以上の飛行後に搭乗員のWOCLかかるinfringes追加飛行additional flight運航operateさせるためには、疲労fatigueリスクrisk管理システムmanagement system(FRMS) が必要。
  • 「positioning」や「deadheading」といった勤務のための配置(移動)など、勤務dutyの定義に合致meetするすべての活動All activitiesは搭乗員の勤務時間duty periodとしてカウントcalculationされる。

7時間以上の予定飛行後に、同一クルーでWOCLにかかる飛行をさせる場合には、増強クルーを設定しFRMSが必要

超長距離飛行 (Ultra long-range flights) 700.62

超長距離飛行 (Ultra long-range flights) に関する規定 700.62
  • 飛行勤務時間flight duty period (FDP) 最大18時間
  • 飛行時間Flight Time 最大16時間
  • 航空会社:搭乗員に対し飛行時間16時間以上FDP18時間以上のアサインは禁止
  • 搭乗員:そうしたアサインの受け入れは禁止
  • 飛行時間 16時間を超えるような超長距離飛行ultra-long-range flightの運航を計画する場合は、疲労fatigueリスクrisk管理システムmanagement system(FRMS) が必要

最大労働時間数 (Maximum Number of Hours of Work) 700.29

  • いかなる勤務duty労働workは、飛行の有無flying or non-flyingに関わらず労働時間としてカウントし、最大労働時間以下の時間になる必要がある。

最大労働時間数

7日間28日間365日間非勤務時間 (Time Free From Duty) の条件
連続時間(日数換算)休養内容
オプション
1
60時間192時間2200時間168時間(7日間)1日間×FFD
672時間(28日間)4日間×FFD
オプション
2
70時間504時間(21日間)120時間×FFD
5×本拠地夜間local nights rest休養
早朝開始early duty勤務、夜間終了late duty勤務、夜間night 勤務duty: アサインなし
飛行勤務時間flight duty period: 12時間まで
最大労働時間数が連続maximum number of hours of work48時間中に24時間まで
最大労働時間数

週に1日以上の完全な休みを与えることで週60時間働かせられるのが一般的な考え。
移民局や労働局でも「週30時間」というのがいわゆるフルタイムの定義とされているので、これだけでもその倍の時間となる。
連続になるとその権利が拡大するようになっていて、各週ではその基準に満たなくても、週平均48時間でもそれが4週間続くと4日間の完全休養が発生するので、実質週1日が休み扱いになる。これは年間分は2200時間で52週間で割ると約42時間となる。

繁忙期などでどうしても週70時間を超えるような場合には、3週間のうちに5日間の完全休養が必要となり、更に本拠地休養が同期間で5回含まれること、基本的に日中勤務であって一回のFDPが12時間を超えないような制限が追加される。

待機関連の労働時間数の計算法

待機関連の労働時間数の計算法
待機形態該当労働時間Hours of Work
Reserve (自宅待機)待機可能時間reserve availability period (RAP)33%
Standby (出勤待機)待機Standby時間Period100%

休養期間 (rest period)

新たに定義された休養に関する用語

休養時間 (rest period) についてCARsで新規に用語の定義が追加されました。

休養時間 (rest period)

航空会社air operatorが提供する適切な宿泊施設suitable accommodationへの往復移動時間travel time除くexcluding搭乗員が勤務しoff dutyない連続期間continuous period

本拠地夜間休養 (Local Night’s Rest)

休養場所: 時刻帯に順応した場所
休養時間: 9時間以上
適用期間: 22:30から09:30までの間

非勤務時間 (single day free from duty)

勤務duty従事しないfree from時間
開始: 最初本拠地夜間休養local night’s rest
終了: 次回本拠地夜間休養local night’s rest

飲食休憩 (Nutrition Break) 700.37

飲食休憩 (Nutrition Break) 700.37
  • 会社は6時間飛行勤務時間Flight Duty Period (FDP) につき、15以上飲食休憩を与えること。
  • 休憩break中の食事food飲み物drinkの提供は、あくまで航空会社の裁量であるものの、カナダ労働法Canada Labour Codeの労働安全衛生 第2部125(1)(j)項にて、飲料水potable water提供義務dutyがある。
操縦士数飲食休憩備考
操縦士×2名巡航中作業負荷的に問題無ければ
1名が飲食休憩 /
1名が機体制御の責任
操縦士×1名 /
時間飛行
地上飛行の合間に地上で飲食休憩
(TCCAの推奨)

最小休養時間 (Minimum Rest) 700.40

休養場所最小休養時間要件備考
本拠地HOME BASE12時間3つの
オプション
のいずれか
11時間+ 移動時間travel time
10時間会社提供の
適切な宿泊施設suitable accommodation
拠点地以外AWAY FROM BASE
本拠地 (home base) の定義 AC 700-047 700.36
  • 搭乗員が飛行勤務flight dutyまたは配置移動positioningについて勤務開始reportするために通常出勤するnormally commutes場所」としてCARsで新規に定義された概念
  • 会社は搭乗員個別にこの「Home Base」を指定assignすることになっており、月や日によって変わるといったことがないよう、ある程度の永続性a degree of permanenceが必要
  • アサインは1箇所だけで、搭乗員が籍をdomiciled有する場所によらないmay or may not
  • 航空会社は通常、本拠地home baseにおいて適切な宿泊施設suitable accommodationを搭乗員に提供する必要はないが、会社と搭乗員が契約上合意agreement有する場合には、そのようにする場合も可
  • 本拠地home baseにおける現地時間local timeが、搭乗員が最初の勤務時間を開始reportする際に「順応」acclimatized基準点とreference pointなる
  • 搭乗員は「勤務に適合fit for dutyしている」ことを報告する必要があることから、時刻帯の異なる場所での休暇から復帰して勤務する場合、本拠地への時刻帯に順応することについても考慮する必要がある。
  • 居住地から本拠地に通勤している場合でも、順応の基準値は本拠地である

バンクーバー在住でカルガリーに本部のある会社に通勤する場合、勤務開始するのは本拠地であり、時刻帯順応の基準点もカルガリーとなる。

追加休養 (Additional Rest)

  • 休養の追加に関する規定は、同時に複数の項目を考慮できる可能性がある。

破滅的スケジュール (Disruptive Schedule) 700.41

  • 新規則では、夜間勤務から日中勤務を行き来するような「破滅的な予定disruptive scheduled」の組み方について、適切な休養を入れるようになっている。
破滅的スケジュール (Disruptive Schedule) 700.41
  • 夜間終了勤務late duty/夜間勤務night dutyから早朝開始勤務early dutyへ、またその逆を行き来する場合は、通常の休養時間に加えて本拠地夜間休養local night’s restをすること。
夜間終了勤務late duty早朝開始勤務early duty
夜間勤務night duty

例1: 月曜0130(時刻帯順応を加味)に夜間終了勤務 (late duty) が終了し、次回スケジュールは0200から0659の間に開始する早朝開始勤務 (early duty) 。これは「Late/Night⇔Early」の破滅的スケジュDesruptive Scheduleールに該当するため、「本拠地夜間休養」すなわち順応時刻帯で2230から0930の間で9時間以上の休養が必要。この場合、早朝開始勤務を開始できるのはその翌日水曜の0200以降となる。

例2: FDP開始が0700の場合、これは早朝勤務early dutyには該当しないため、「早朝勤務にはならない勤務開始時間」と「夜間終了late勤務/夜間勤務night dutyの終了時刻」との間の分だけの通常の休養時間rest periodのみが必要となる。

  • 時刻帯が本拠地home baseから4時間以上離れている場合や、大洋横断transoceanic飛行に対しては適用外

時差と宿泊地による休養追加条件

\時差
宿泊地
時差
0~3時間
時差
4時間
時差
5~10時間
時差
11時間以上
本拠地通常
規定
12時間
11時間+移動時間
10時間 宿泊施設
離隔 36時間離隔 60時間
未満以上未満以上 or
WOCL内
未満以上 or
WOCL内
13時間 宿泊施設本拠地夜間休養
123
本拠地外10時間 宿泊施設11時間 宿泊施設14時間 宿泊施設
時差による休養追加条件
本拠地外での時差による休養追加条件 700.42
  • 時差が4時間の場合、適切な宿泊施設suitable accommodationにおける連続consecutive11時間の休養
  • 時差が4時間を超える場合、適切な宿泊施設suitable accommodationにおける連続consecutive14時間の休養

本拠地以外(away from home)での休養時間は基本的に「適切な宿泊施設で10時間」です。「4時間」はカナダのほぼ全土をカバーできる時差のため、国内線とはいえ端から端まで移動した場合の時差としてこの時間が採用されているとみられます。(ただし実際は5時刻帯あり)

時差とFDPの開始時間による休養追加条件

FDP開始から本拠地帰還までの時差による休養追加条件 700.42(2)
  • 時差4時間 本拠地離隔期間36時間以上の場合、本拠地home baseにおける連続consecutive13時間の休養
  • 時差5~10時間 離隔期間60時間以下+FDPがWOCL含まない場合、1本拠地夜間休養local night rest
  • 時差5~10時間 離隔期間60時間を超えるかFDPがWOCLを含む場合、2本拠地夜間休養local night rest
  • 時差11時間以上 離隔期間60時間以下の場合、2本拠地夜間休養local night rest
  • 時差11時間以上 離隔期間60時間を超える場合、3本拠地夜間休養local night rest

複数回の特定時間帯にかかるFDPの場合の追加休養条件

規則の変更で新たに加わった休養の考え方の部分。

FDPに
WOCL
含む場合
休養内容タイミング備考
連続31×本拠地休養local night rest最終3回目勤務時間duty periodWOCL
02:0005:59
連続53時間×FFD 宿泊施設飛行Flight勤務時間duty period
56時間consecutive×FFD最終last 勤務時間duty period
FDPの一部がWOCLに連続3回かかる場合 700.51
  • 3回目勤務時間duty period1本拠地での宿泊local night rest
FDPの一部がWOCLに連続5回かかる場合 700.51
  • 飛行Flight勤務時間duty period適切な宿泊施設suitable accommodationにおける3時間FFD
  • 最後last 勤務時間duty period連続consecutive56時間FFD (勤務からの解放free from duty)

飛行以外の勤務に関する追加休養条件

最大FDPの超過対象追加休養
1時間未満非飛行勤務non-flying duty
(配置移動以外excluding positioning)
なし
1時間以上FDP延長分extension
同時間equal
時間によらず飛行勤務Flight Duty
増強クルー14時間 宿泊施設
と上記の長い方
最大FDPを超えるFDP後の非飛行勤務(non-flying duty) 700.40(2)
  • 1時間以上FDPを超過後非飛行勤務non-flying duty (配置移動以外excluding positioning) が対象
  • 休養rest時間はFDP延長分extension同時間equal分延長

例: 最大FDPが13時間という条件下での12時間のFDPの後に、会社が搭乗員に機体の清掃を2.5時間命じたとする。合計FDPは14.5時間となり、必要な休養時間は同時間である14.5時間となる。

例: 最大FDPが9時間という条件下で本拠地で終了する8時間の夜間FDPの後に、会社が搭乗員に機体の清掃を2.5時間命じた場合、合計FDPは10.5時間となる。通常、休養時間は12時間であり、直近のFDPはこれ未満の10.5時間なので、休養時間は12時間である。

FDPの延長に伴う追加休養条件

FDPの延長 700.63(3)
  • 休養rest時間はFDP延長分extension同時間equal分延長
  • UOCが適用される場合もある
FDPの延長 (増強クルー) 700.60(7)
  • 休養rest時間はFDP延長分extension同時間equal分延長
    もしくは適切な宿泊施設suitable accommodationにて連続14時間のいずれか長い方
  • UOCが適用される場合もある

フライトデッキ内での管理休養(Controlled Rest) 700.72

フライトデッキでの管理休養 (Controlled Rest) の許可条件
  • 休養時間は45以下
  • 巡航中cruise portionのみ
  • 予定降下開始scheduled beginning時刻より30分前までにat least 30 minutes before完了
  • 他の搭乗員は同時にat that time管理休養を行えないno other
  • 2名以上at least twoの搭乗員がフライトデッキ残るremainこと


巡航中

管理休養可能時間30分
Aさん45以下15P1
BさんP145以下15P2
CさんP245以下15
  • 管理休養開始前には以下を考慮
開始前の考慮事項
  • 勤務duties内容を他の搭乗員に引き継ぐtransferこと
  • 休養中に実施すべき特定の職specific duties務内容を含む飛行ステータスstatus of the flightについて確認reviewすること
  • 休養中でも起きる条件wake-up criteriaについて確認するreviewこと
  • 客室乗務員flight attendants開始start終了end時刻を知らせるreviewこと
  • 管理休養終了後は以下を考慮
終了後の考慮事項
  • 管理休養controlled rest中の搭乗員は、勤務duties中とみなさassumeない
  • 休養終了15分後まで勤務の付与は禁止
  • 搭乗員が勤務に復帰returnsしたら、他の搭乗員による運航ブリーoperational briefingフィングを受けること

配置移動 700.43

  • 配置(移動)positioningとは、2週間のローテーションなどの飛行勤務flight dutiesまたはその他の業務other duties遂行performする必要がrequiredある場合に、会社が搭乗員を本拠地から別の場所another location移動travelさせること
  • 飛行勤務flight dutyのための「配置」に要した時間飛行勤務時間flight duty period(FDP)としてカウントされる
  • 3時間を超えてFDPの延長が必要な場合は、次の条件で最大FDPを延長することが可能
配置移動に伴う3時間を超える最大FDP超過ができる条件 700.43(3)
  • 搭乗員の同意が得られていること
  • 7時間超えないこと
  • 3時間以下であれば、配置移動を理由とする最大FDPの超過は合意もなく可能ではあるが、次回のFDP開始までに次の時間分の休養時間を付与する必要がある。
最大FDPを超えるFDP後の配置移動(positioning) 700.43
  • FDP超過時間が3時間以下の場合、合計勤務時間total hours worked同時間equalの休養
  • FDP超過時間が3時間を超える場合、合計勤務時間total hours worked同時間equal+最大FDP超過分の休養
配置移動による
最大FDPの超過時間
3時間以下3~7時間7時間を超過
次回FDP
までの休養時間
勤務時間分hours of workそもそも
禁止
最大FDP
超過時間
合意の有無不要必要
  • 病気sicknessなどで本拠地に戻る配置移動positioning back to home baseの場合、単に通常の「勤務duty」として記録recorded (FDPではない)
  • 休養時間は上記要領で算出した場合でも、通常与えられる休養時間より短縮されることはない

例1: 最大FDP13時間で12時間のFDPに先立ち、3.5時間の配置移動が必要だった場合、合計勤務時間は15.5時間となり超過分は2.5時間(≦3時間)であることから、必要休養時間は15.5時間

例2: 最大FDP13時間で12時間のFDPに先立ち、6.5時間の配置移動が必要だった場合、合計勤務時間は18.5時間となり超過分は5.5時間(>3時間)であることから、必要休養時間は24時間

予測外の運航状況 (UOC: Unforeseen Operational Circumstances) 700.63

予期していない運航上の状況の例
  • 先が見えないUnforeseen=予期できないunexpected=不測の事態unanticipatedとして、運航会社にはどうしようもbeyond the controlできないもの
UOCに該当する例
  • 天候の予測外の悪化
  • 管制上の理由による遅延
  • 機器の不具合 など
UOCに該当しない例
  • 例: FDP終了後(着陸後)に、CIQ (税関/入国/検疫) における予定外の検査など空港の管理上の問題を理由に遅延が発生している場合は、勤務時間duty time (hours of work) としては考慮されるものの、UOCには定義されない。
予測できるかできないかの線引き
判明した時間が
FDP開始時刻から
予測可否の解釈UOCの対象
60以前予測可能foreseen
60以内予測不可能unforeseen対象

例: FDPが1100開始で、天候の悪化予報が1000前に出された場合、これは60以上前に判明しているため予測不可能とは言えず、FDPの延長は不可

機長判断 (Authority of pilot-in-command) 700.63(1)

  • 飛行勤務開始の60以内もしくは飛行中UOCが発生した場合には機長は次の事項を考慮しなければならない。
UOC発生に際して機長が考慮する事項
  • 搭乗員の疲労状況level of fatigueの判定consult
  • 搭乗員の飛行勤務時間(FDP)の延長extend短縮reduce
  • 搭乗員の休養rest延長extend
UOCに際し延長可能なFDPの最大時間基準
運用人員FDP中の
飛行回数
最大FDPの
延長可能時間
操縦士1名のみ1時間
増強クルーnon-augmented crew
以外
2時間
増強クルーaugmented crew13時間
2
3
2時間
  • 最大FDPを追加後の飛行において、離陸後に(上空で)更なるUOCが発生した場合には、目的地または代替飛行場までは飛行継続すること
UOCによりFDTと飛行時間の上限を最大3時間引き伸ばせる4条件 720.17
  1. FDT延長後の最小休養時間minimum rest periodが「延長されたFDT時間」と同時間以上at least equal to追加increasedされること
  2. 機長(PIC)pilot-in-commandは、規定の方法company operations manual会社air operatorに延長する「長さlength」と「理由reason」を知らnotifyせること
  3. 会社air operatorは、次回の運輸省の監査auditが完了するまでの間、その受領した通知を保管retainすること
  4. 会社air operatorは、可及的速やかに運輸大臣Ministerに対し通知notifyすること
最大の飛行時間とFDTに含まれる時間
  1. 飛行前後の業務に必要な時間the time necessary for pre-flight and post-flight duties
  2. 飛行自体(及び連続する複数飛行the flight or series of flights)
  3. 天候予察forecast weather
  4. 便間の準備等turn-around timesの業務
  5. 運航に関するthe nature of the operation一般的なこと

分割飛行勤務に変更するオプションの考慮

分割飛行勤務への変更の条件
  • 地上休養時間ground rest period開始前変更を行うこと
  • 搭乗員の疲労状況level of fatigue飛行安全safety of the flight悪影響でないadversely affectと判断consultingし、機長が同意agreeすること

分割飛行勤務 (Split Flight Duty) 700.50(1)

  • 飛行勤務時間(FDP)の期間中に適切な宿泊施設における60以上の休養を挟むことで、最大FDP自体を長くするという「分割飛行勤務Split Flight Duty」に関する規則は大きく改善much improvedされ、事前にadvanceケジューscheduledルされていなくても利用できるようになったり、予測外の状況に関する「UOC」への言及についても記載されたことで、会社にとってはスケジュール管理面で選択肢が増えた形になったと言えます。
  • 分割飛行勤務Split Flight Dutyには、次のようなルールがあります。
分割飛行勤務に関するルール
  • 休養breakは必ず適切な宿泊施設suitable accommodationで行われること。
  • 宿泊施設までの移動時間はこの休養に含まれない。
  • 休養実施時間帯は、現地時間ではなく時刻帯順応を加味した時刻を使用。
  • 休養breakは必ず60以上 (旧規則では4時間以上だった)
  • 下記の45を休養時間から引いて考えること。
  • 夜間終了勤務時間night duty periodsで分割飛行勤務を利用する場合、連続3まで使用可consecutive night duty periods能 (新規則により追加)
  • 分割飛行勤務を利用して飛行勤務時間FDPが延長された場合でも、その後の飛行勤務までの間の休養時間に追加規定はないため、通常の時間が適用。
45分間の減算考慮 700.50(2)
45分の内訳
  1. 就寝準備 (getting ready for bed)
  2. 睡眠に入るまで (fall asleep)
  3. 起床し惰性的な睡魔を克服し勤務に備えるまで (waking up)

就寝準備と睡眠自体は休養開始時に、起床その後の要素は休養の最後に通常行われるものですが、45分間のうちの3要素の時間配分までは、航空規則(CARs)では定められていません。

上記の時間は、「休んだことにならない時間」と考えられて、それを最大FDPの時間追加の理由にされてしまうと「乗員 (労働者) が不利益だ」という考えに基づいて制定されています。
したがって、「会社が搭乗員のFDPを延長したい」ことから逆算して休養時間を与えるのが本来の一般的な有り方であることを踏まえれば、「休養時間に45分を加えておく」という考えが必要になってきます。

  • 上記を加味して、最大飛行勤務時間(FDP)の延長は、次に示す時間分が認められる。(旧規則ではいずれの場合も一律に休養時間の半分で計算されていた。)
休養実施時間帯基準時間
(中間休養時間)
補正時間
(一律)
換算
係数
00-06休養時間
休養施設
(60以上)
-45100%0400から2時間休養
最大FDPは37.5延長可
06-2450%最大FDPを2時間延長する必要が
あったため、会社は搭乗員に
1200から4時間45分の休養を与えた
UOCによる
短時間short-term再計画re-planning
(予定外)
UOCにより60分間休養
最大FDPは7.5分延長可
最大FDPの延長可能時間数

00:00から05:59という時間に休養をしたということは、普段休養するような時間に休養しているのと同じようなもので、WOCLもしっかり休養でクリアしていることを考えると、その後に追加できるFDPの時間はあまり考慮する必要がないので、100%換算となる。
一方で、普段休養をしないような昼間の時間や、急な状況変化に伴って休養を強いられ、その後に勤務をすること場合は、負担が比較的大きいと解釈できるため換算時の係数が50%と設定されている。

上記の計算を適用しても、最大FDPの上限18時間 (700.62)

例: 非増強クルーとして取り得る最大のFDPとして13時間最大休養時間maximum break allowanceとして5時間14を追加されているとすると、理論上の最大FDPは単純に足し算をして18時間14分となるが、実際には上記の上限規則を適用して18時間きっかりとなる。

待機クルーの分割飛行勤務に関する制限事項

待機(Reserve)の場合の分割飛行勤務に関するルール

待機勤務時間Reserve duty period (RDP) 中に、分割飛行勤務となり飛行勤務がアサインされた場合 (新規則で追加)

  • RDPの延長可能はで休憩後は最大2時間まで
  • 休養後は最大2までの飛行が上限

待機(Reserve)に関する規則

待機のカテゴリ
待機カテゴリ名称通知後に飛行勤務開始
できるまでの時間
待機場所
Reserve1時間を超えてmore than one hour指定なし
On-Call1時間以内one hour or less
Standby特定場所specific location

新たなに定義された待機に関する用語

待機可能時間 (RAP: reserve availability period)

待機(Reserve)中の搭乗員が飛行勤務flight duty開始Reportできる連続24時間中の期間

待機勤務時間 (RDP: reserve duty period)

待機(Reserve)中の搭乗員が飛行勤務開始できる時間から開始し、FDP飛行勤務時間終了終了

最大待機勤務時間 (Maximum Reserve Duty Period) 700.70

通常クルーの最大連続待機勤務時間

開始時間最大連続
待機時間
待機時間
の例
02-1818時間0600-2400
18-1917時間1900-1200
19-2116時間2000-1200
21-2315時間2100-1200
23-0214時間0000-1400
最大連続待機勤務時間条件

増強クルーの最大連続待機勤務時間

開始
時間
増強
クルー数
休養設備最大連続
待機時間
クラス2クラス1
120時間
21-03222時間
×26時間


増強クルーの最大連続待機勤務時間条件

待機可能時間 (RAP: reserve availability period)

待機可能時間 (RAP) を会社から通知されるタイミングに関する規定 700.70 (1)

会社が待機について知らせる事項
  • 待機勤務時間(RAP)の開始時刻
  • 待機勤務時間(RAP)の終了時刻
  • 待機を行う場所(地名location)
搭乗員がRAPを通知される限界時間
  • 搭乗員のWOCLRAP入らない場合、開始時刻の12時間まで
  • 搭乗員のWOCLがRAPに入る場合、開始時刻の32時間まで
  • RAPの開始時刻がWOCL内にかかるように変更された場合、変更開始時刻の24時間まで

RAPの開始時刻に関する会社の順守規定 700.70 (2)

RAPの開始時刻に関する会社の順守規定
  • RAP開始時刻の変更は、通知したcommunicated時間の2時間2 hours before倒しもしくは4時間4 hours after倒しまで
  • RAP開始時刻の変更は、連続168時間(7日間)のうち合計8時間まで
  • 上記の場合でも、その連続168時間のうち連続2日間FFD(休養)を与えられていれば可能
  • RAP開始時刻を0200過ぎafter 02:00に変更した場合、次回RAPまでに連続2日間FFD(休養)を与えること

RAPの連続時間に関する規定

RAPの連続時間に関する規定
  • RAPの連続最大時間maximum duration連続14時間休養時間rest period連続10時間設けること (合計24時間)
  • RAP開始時刻が0200~0559までの間(時刻帯順応を加味)の場合で、かつ搭乗員に連絡さcontactedれていない場合は、RAPを最大で2時間もしくは0200~0559の間にあたる時間50%、いずれか短い方の分だけ延長可能
  • FDPを終了後に、FDPの休養要件を満足すれば、搭乗員はRAPに復帰することになる
  • ただしこの場合でもRAPのスケジュール上の終了時刻は変わらず、最大RDPはもともとスケジュールされていたRAPの開始時刻に基づいて決定される。

FDPを含めた最大時間の制限

  • 会社は基本的に、最大待機勤務時間(RDP)もしくは最大飛行勤務時間(FDP)のうちいずれか短い方を越えるアサインを搭乗員に対して行ってはならない。ただし、下記の条件を全て満足すれば超過することができる
最大RDPもしくは最大FDP(のうち短い方)の超過可能条件 700.70(10)
  • FDP開始前24時間以上前at least 24 hours’ notice通知されていること
  • 22:30~7:30の間に通知がされていない
  • 通知した時間からFDP開始までの間に勤務dutiesのアサインがない

勤務開始の遅延 (Delayed Reports) 700.52

遅延を通知されるタイミングによる違い

  • 搭乗員が勤務開始report for dutyのために適切な宿泊施設suitable accommodation出発leftする前に勤務開始reporting time時間の遅延delayについて通知advisedされた場合は、飛行勤務時間flight duty period(FDP)の最大時間maximum durationは、当初initialの勤務開始時間もしくは遅延delayedを加味した時間のいずれか短くなshorterる方で計算される。

整備technical天候weather上の問題による遅延delaysなど、予定plannedされていた出発がdeparture妨げpreventられるようなFDPの開始前の休養時間中にduring the rest period発生occursした場合に上記が適用applies

FDPの延長に関する規定

  • 最大飛行勤務時間maximum flight duty periodは、別の飛行経路different routeペアリpairingングの変更がされたとしても開始時刻の遅延という理由では延長できない

例1: 最初のFDP勤務開始時刻が06:00、30分の飛行を11未満行う予定だと、表を参照して最大FDPは12時間となる。遅延された開始時刻が09:00になったとすると、表を参照して最大FDPは13時間となる。しかし、より短いFDPは06:00からの分なので、最大FDPは12時間のままとなる。

例2: 上記と同じ状況で、最初のFDP勤務開始時刻が22:30だとすると、最大FDPは11時間となる。遅延された開始時刻が02:00になったとすると、最大FDPは9時間となる。より短いFDPは02:00からの分なので、最大FDPは9時間となる。

遅延後のFDP開始タイミング

勤務開始時刻が遅延する時間数によって、次のように開始時刻は解釈される。

遅延時間数と開始時刻の関係
遅延時間数
(予定時刻からの起算)
FDP開始時刻または条件解釈
4時間未満遅延した開始時刻遅延扱いというより
単に予定変更扱い
4時間以上
10時間未満
当初の勤務開始時刻
4時間
一律4時間後に変更
4時間後からは
働いた時間にカウント
10時間以上次の条件で
休養時間とみなされる
逆に休養したこと
されてしまう
10時間以上の遅延を休養時間に振り替える条件
  • 適切な宿泊施設を出発前に遅延について通知されていること
  • 相互合意時間mutually agreed timeまで会社はair operator搭乗員の休養を遮らないdisturbこと
  • 会社が勤務開始の遅延に関するCARs700.52のその他の規定を遵守していること

当初の出勤開始時刻が0600の場合
例1: 遅延により0900になったとするとFDP開始は0900
例2: 遅延により1200になったとするとFDP開始は1000

搭乗員への連絡

  • 航空会社は、10時間以上の遅延が生じて休養中の搭乗員に基本的に連絡してはならないが、会社が選択した次のいずれかの場合であれば連絡は可能
遅延により振り替え休養中の搭乗員に会社が連絡できる条件
  • 搭乗員が適切な宿泊施設におり、
    予定上の宿泊施設出発時刻30以内であれば可能
  • 当初の出勤開始時刻60以内は連絡可能
連絡手段に関する解釈
  • 電話休養を積極的に遮るactively disturbものと考えられるが、テキストtexteメールemailなどのメッセージ送信積極的でpassivelyないものと解釈され、いつでもany time可能
  • そのため搭乗員は、就寝時は携帯電話をサイレントdo not disturbモードにして休養すべき
  • 本拠地home base本拠地外でaway from home baseの搭乗員への連絡に関する区別はdifferentiation、規則での規定はなしnot stipulated

参照リンク

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