海外で飛行訓練する多くの訓練生の心配事の一つは、航空管制交話法だと思います。。
本記事では、全部で9つのシチュエーションに分けながら、カナダの非営利団体「NAV CANADA」が提供する「VFR PHRASEOLOGY」をベースに、日本語での解説をしていきます。
第1弾は、まずは基本的な用語の使用法とコールサインの付け方、管制機関の役割についてです。
一般の用語
用 語 | 意 味 | イメージ |
ACKNOWLEDGE | Let me know you have received and understood this message | 分かったら教えて |
AFFIRMATIVE | Yes | そのとおり |
APPROVED | Permission granted | そのように やっていいよ |
BREAK | Separation between portions of the message | 話変わるけど |
BREAK BREAK | Separation between messages for two different aircraft | そんでこっちの 君に言うけど |
CHECK | Examine a system or procedure | 調べて |
CONFIRM | Verify (clearance, instruction, action, information) given | これで合ってる? |
CONTACT | Establish communication with… | ~とお話しする |
CORRECT | True/accurate | 合ってる |
CORRECTION | An error was made in transmission, the correction will follow | 間違えた |
DISREGARD | Ignore EXPEDITE Comply with instruction as soon as safely able | さっきのは やっぱなし |
GO AHEAD | Proceed with transmission | どうぞ |
HOW DO YOU READ | Can you hear my transmissions clearly? | こっちの声どう? |
I DO NOT UNDERSTAND | I do not understand, please rephrase your last transmission | 分かんなかったから もう一回 |
I SAY AGAIN | I repeat for clarity or emphasis | 大事なことだから 2回言うけど |
IMMEDIATELY | Immediate action required for safety reasons | ほんとに今すぐ |
MONITOR | Listen to (frequency) | 聴いて |
NEGATIVE | No/permission not granted/not correct/not capable | 違う、ダメ |
OVER | End of transmission, requires response | 返事ちょうだい |
READ BACK | Repeat all, or specified part of message back | 何て言ったか 分かった? |
ROGER | I have received your transmission (generally used by ATC rather than pilots) | 聞き取った (分かったとは 言ってない) |
SAY AGAIN | Repeat all, or specified part of last transmission | もう一回言って |
SPEAK SLOWER | Reduce rate of speech | ゆっくり言って |
STAND BY | Wait and monitor frequency, caller will re-establish contact | ちょっと待って |
UNABLE | Cannot comply with instruction/clearance/request | できない |
WILCO | I understand message, will comply | 分かった、 そうする |
WORDS TWICE | Communication difficult: please say every word/group of words twice Communication difficult: therefore I will repeat every word/group of words twice | 聞き取りづらいから 2回ずつ言って なので 2回ずつ言うよ |
トランスポンダー用語
ATC用語 | 意 味 | イメージ |
SQUAWK XXXX | Input assigned transponder code | スコークXXXX をセットして |
SQUAWK IDENT | Press the “ident” feature of transponder | IDENT押して |
SQUAWK MODE CHARLIE | Ensure MODE C function is selected | モードC入れて |
STOP SQUAWK MODE CHARLIE | Turn off MODE C function | モードC止めて |
RESET/RECYCLE TRANSPONDER | Turn transponder off, and then back on | もう一回 スコークセットして |
CONFIRM SQUAWK | Visually and then vocally confirm the selected mode/code | スコーク 合ってる? |
SQUAWK STANDBY | Select “standby” function | スコーク STBYにして |
ROGER IDENT | Used by FSS to acknowledge a request to squawk ident or change to a new code | 分かった、 IDENTね |
YOUR TRANSPONDER APPEARS UNSERVICABLE /MALFUNCTIONING | You are not showing up properly on the radar screen. Cycle transponder OFF and back ON to see if this fixes the issue | こっちで 掴めないんだけど 機械が壊れてない? |
航空機のコールサインの呼称法
管制機関とのイニシャルコンタクトでは、コールサインを省略せずに呼称します。管制機関から先に省略したコールサインで呼称された場合のみ、省略バージョンをこちらも使うことができます。
カナダの旅客機など指定されたもの
指定名+便名(例:「Canada 452」)省略はできません。
カナダの訓練機など指定がないもの
航空機製造社名/型式+登録番号の下4桁(例:「KATANA “GDIB”」「ROBINSON 22 “FLMV”」
省略形は登録番号の下3桁(例:「”DIB2″」「”LMV”」)で、最大2桁までに省略されることがあります。
海外登録のプライベート機
航空機製造社名/型式+登録番号を全て(例:「CHALLENGER “N6739X”」)
省略形は登録番号の下3桁(例:「”39X”」)で、国内機と同じです。
軍用機
CANFORCE+登録番号の下4桁か便名、指定の軍用コールサイン(例:「GONZO 08」「ROYAL 01」)
公的機関の航空機
沿岸警備隊機:CANADIAN COAST GUARD+便名(例:「CANADIAN COAST GUARD 305」)
アイスパトロール機:CANICE+便名
民間捜索救難機:RESCUE+便名 または CASARA+登録番号
ヘリやグライダーなど飛行機以外
ヘリコプター、グライダー、ウルトラライトプレーンは、飛行機のように製造社名を呼称する代わりに、コールサインの前にその種類を呼称します。(例:「Ultralight “GEEH”」)
大型機
最大離陸重量が300,000 lbsを超える大型機は「HEAVY」、エアバスA380は機種指定で「SUPER」を通常のコールサインの後に加えて呼称します。(例:「FEDEX 370 HEAVY」)
イニシャルコンタクト以降はこの呼称は省略されます。後方乱気流を回避する責任は各機のパイロットにありますので、大きな空港周辺を飛行する場合はこのコールサインが聴こえたら十分注意して飛行する必要があります。
似たコールサイン
2つ以上の似たようなコールサインをもつ航空機が同周波数内で通信している場合は、管制官は次のような要領で、通信の錯誤を起こさないように対策しています。
•航空機によく聴くよう注意喚起する
•コールサインに製造社名を付けて呼称する
•片方の航空機には4桁で呼称させる
•片方の航空機には登録番号を使って呼称する
(例:「AIR CANADA 452 と JAZZ 4425 がいる場合、AIR CANADA NC、JAZZ EP」)
管制機関のコールサイン
航空管制機関のコールサインは、基本的に空港名+機能名で示されます。
空港管制機関
クリアランスデリバリー:「〇〇 CLEARANCE DELIVERY」
グラウンドコントロール:「〇〇 GROUND」
タワーコントロール:「〇〇 TOWER」
進入管制区等
アライバルコントロール:「〇〇 ARRIVAL」
デパーチャーコントロール:「〇〇 DEPARTURE」
ターミナルコントロール:「〇〇 TERMINAL」
広域管制機関
エリアコントロール:「〇〇 CENTRE」
リモート機関
フライトサービスステーション(FSS)、フライトインフォメーションセンター(FIC)
エアポートアドバイザリーサービス(FSS):「〇〇 RADIO」
フライトインフォメーションサービスエンルート(FISE/FSS):「〇〇 RADIO」
それぞれの管制機関の役割
空域管制機関(Terminal/Centre)
空域管制機関は、管制指示や許可、アドバイザリー、IFR機やVFR機への注意喚起を行っています。航空管制官は、カナダ中の航空交通の流れを安全で効率的かつ秩序あるものにするよう調整しています。
各機関が「飛行情報区(FIR)」という大きな受け持ち空域をもっています。各FIRはそれぞれ細かいセクターに分割され、各管制官に担当が割り振られます。レーダーやハイテクな各種飛行場システムを駆使し、セクター内の全ての航空機の動きを把握し、空域を通過する航空機への指示や、ターミナル飛行場周辺の出発到着機への管制許可を出したりしています。
空港管制機関(Tower/Ground/Clearance Deliveryなど)
管制塔は、交通量が比較的多い飛行場がもっている「管制圏」の中の航空管制と情報提供業務を行います。管制官は、飛行場への出発や到着の指示や許可をパイロットに出すだけでなく、各機の間隔を適切に取るよう指示を出します。飛行場周辺の空域の飛行情報だけでなく、地上の車両の情報なども提供し、注意喚起をしています。
飛行場アドバイザリーサービス(FSS/MF)
比較的混雑していない飛行場では、他機との安全な間隔を確保する責任はパイロットにあります。飛行場アドバイザリー業務は、その飛行場内、もしくは遠隔地にあるフライトサービスセンターにて勤務する「フライトサービススペシャリスト」により提供されます。
気象情報、飛行空域内のトラフィック情報や滑走路、風、高度計規正値など、パイロットに必要な情報を提供する飛行場アドバイザリー業務、また、地上の車両管制や緊急時の援助も行います。管制機関からの管制承認の中継は行うことができますが、管制指示を行うことはできません。
飛行情報サービス(FIC/WXBRIEF/Enroute Services)
飛行情報センター(FIC)は、航空交通機関をとりまとめ、飛行前や飛行中の情報や、VFR機への注意を行うことに責任を有する機関です。こうした機関で勤務する「フライトサービススペシャリスト」は、気象解析やブリーフィング、カナダ空域を飛行するパイロットに対するNOTAMの提供などを行います。また、VFRフライトプランや注意すべき情報の提供、捜索救難業務への責任も有しています。
地方飛行場無線施設(Community Aerodrome Radio Stations
NAV CANADAは、「地方飛行場無線施設(CARS)」を利用し、国内の北部地域や遠隔地域の飛行情報を提供しています。また、Yukon準州、Northwest Territories準州、Nunavut準州、James Bay海岸沿いの北部Quebec地域などの指定場所にも、航空気象情報や地方サービスを提供しています。こうした施設には、METARを提供するための気象観測装置を持ち、パイロットに運航情報を提供するためのコンソール区画があります。オペレーターは、通常の管制機関と航空機の交話と同じ要領で通信し、飛行計画や航空気象観測の結果の提供、緊急時の対処などを行います。
周波数同期機能(Frequency Coupling)
ある周波数で通信が行われると、その周波数上の通信を自動的に他の同期された周波数で再放送できる機能があります。これを使用することで、ある周波数で通信を必要とする全ての無線局が、もともと設定している周波数だけに限定されることなく、必要な情報を聴知することができるようになります。この機能の最大の利点は、2つの局が2つの周波数で同時に通信することで発生する干渉を減少させることができる点です。これは、フライトサービスでもタワーなどの管制機関にも該当します。