最後の第9弾は、通信を必ず行わなくてはならないMFと、任意で通信するATFにおける交話法についてです。
義務周波数(MF)における到着やサーキット
義務周波数であるMFをもつ空域に進入する場合は、到着の5分前にコンタクトします。サーキットに進入する場合や、直接ダウンウィンドやファイナルに入る場合も同様に、5分前にMFにてレポートします。
意図を伝える通信をする前には、イニシャルコンタクトをして通信設定を行うことが重要です。
フライトサービスステーション(FSS)は、複数の周波数を常時モニターしていて、通常は気象情報のレポートに備えたり運航上の業務処理で忙しいことが多いので、初めて通信する航空機からレポートされた全文をしっかりと受信できない可能性があるためです。
混雑する飛行場ではATISを運用していることが多く、これにより通信量を緩和することができます。イニシャルコンタクトの前にATISを聴取することができれば、その旨を識別符号をつけて知らせましょう。
これにより管制官は、航空機が最新の情報を有していると分かり、再度情報を知らせる必要がなくなり、通信費消の緩和ができます。
Fort St. John Radio, Navaho “GLIG”, 25NM to the SW at 5,500ft, inbound for circuits, request advisory.
Navaho “GLIG”, Fort St. John Radio, active RWY29, wind 270/07, altimeter 2996, traffic Cessna Caravan circuits RWY29.
“GLIG” descending to circuit altitude to join left downwind RWY29 looking for traffic.
“LIG”, roger RWY29, traffic Caravan 1NM final RWY29.
“LIG”, downwind 29, Caravan traffic in sight.
“LIG”, roger.
“LIG”, final RWY29 touch-and-go.
MFの空域では、全ての飛行場がレーダーを保有している訳ではありません。FSSが航空機に提供できる他機の情報のほとんどは、パイロットからレポートされた情報によります。そのため、パイロットが報告する情報は、常に明確かつ正確にするよう心掛け、変更が生じた場合にはその旨を伝える必要があります。
FSSは、MF空域における全ての通信の相手先になります。全ての通信をFSSに対して行わなくてはなりません。
Fort St. John Radio, ”LIG” clear of RWY29.
“LIG”, roger.
義務周波数(MF)におけるエンジン始動から離陸まで
飛行場の地上移動エリアに入る前に、パイロットの意図をFSSに伝えます。イニシャルコンタクトは必ず行い、もし可能であればATISをモニターしておきます。
Kuujjuaq Radio, King Air “FHUY”, with “B”.
FSS King Air “FHUY”, Kuujjuaq Radio.
Kuujjuaq Radio, King Air “FHUY” taxiing “A” to hold short RWY31, northbound departure.
“HUY”, roger RWY31.
離陸するため滑走路に入る前には、FSSにコンタクトをして出発の報告を中継する必要があります。
Kuujjuaq Radio, “HUY” backtracking RWY31.
“HUY”, roger.
Kuujjuaq Radio, “HUY” taking off RWY31, climb runway heading to circuit altitude, right turn out, northbound 10,000ft.
離陸後にはその旨を追加報告します。
“HUY”, airborne RWY31.
Kuujjuaq Radio, “HUY” clear of circuit, northbound.
“HUY”, roger.
義務周波数(MF)における空域の通過
着陸したりサーキット訓練をすることもなくMFをもつ空域をただ通過する場合は、進入5分前までにイニシャルコンタクトを行い、通過の旨をレポートします。
Thompson Radio, this is Duchess “FWYU”.
Duchess “FWYU”, Thompson Radio.
Thompson Radio, “FWYU”, 20NM SW of Thompson, 5,500 ft, flying through the area to Orr Lake.
MF空域を離れる場合にも同じくレポートします。
Thompson Radio, “WYU”, clear of the area.
飛行場周辺機共有周波数(ATF)
飛行場周辺を飛行する航空機が使用する周波数であるATFでの通信は、安全上の理由から実施すべきものとされています。自機の位置や意図を周辺の他機に知らせることで、安全を確保するように皆が行動できるようになります。ただし、ATF空域には無線機非搭載機(NORDO)も飛行しているということに注意しなければなりません。
Cartwright Traffic, Piper “GCAG”, 15NM S of Cartwright, 5,500ft, inbound for landing.
Cartwright Traffic, Piper “CAG”, 5NM to the S, 3,500ft, will descend to 1,500 to overfly the field.
Cartwright Traffic, “CAG” overhead field 1,500ft, descending to join mid right downwind RWY26.
Cartwright Traffic, “CAG”, right downwind RWY26.
Cartwright Traffic, “CAG”, final RWY26, full stop landing.
Cartwright Traffic, “CAG”, landed RWY26, clear of the active.
飛行場周辺機共有周波数(ATF)におけるエンジン始動から離陸まで
航空法上、 ATF周波数に対しては必ずしもパイロットの意図をレポートをする義務はありません。しかし、安全を確保するためには、この空域を飛行する無線機を搭載した全ての航空機は、義務周波数のMFと同じように通信を行うべきです。通信要領は、「義務周波数(MF)におけるエンジン始動から離陸まで」の項目で示した交話法を参照してください。なお、無線機を搭載した航空機は、レポートの義務はなくてもモニターする義務はありますので、注意しましょう。