カナダのブリティッシュ・コロンビア州 2020年2月現在の認定フライトスクール一覧を含む認定の確認法はこちらの記事で!
フライトスクール選びの大きな考え方
本記事では、2つ目の「自分に合っているのか」に焦点を当てています。
自分がパイロットになる目的をプロファイル
さて、ここまでは学校が学校として認定されているかに焦点を当てて紹介してきました。
ここからは、訓練生個人が自身をプロファイルして、自分に何が必要なのかを考えて、自分に合っている学校を選んでいくことになります。
パイロットになる目的
パイロットにも様々な種類があります。使用する航空機の種類や目的、また条件の制限なども多様です。そもそも、自分はどういったパイロットになりたいのか?
これは学校を選択する際の、最初にして最大の要素と言えます。
航空機の種類
飛行機、ヘリコプター、グライダー、ウルトラライトプレーン・・・
色んな種類の航空機がありますが、ごくまれに色んな種類の航空機を同時に扱える学校はありますが、そういった特殊な例を除いて、多くの学校は、単一種類の航空機で飛行訓練を行います。飛行機なら飛行機だけを教えます。
自分が進むべき道を定めて、航空機の種類を選択しましょう。
免許の種類
どんなパイロットを目指すのかによって、どんな免許やレーティング(制限解除)を取らなくてはならないのかが変わってきます。
レクリエーションで飛ぶ、自家用免許で週末パイロットになる、事業用を取得してパイロットとして就職する、多発機や計器飛行証明を取得して航空会社に就職する、教官資格を取得して学生を教えながら、自分の技能を磨き、飛行時間を貯金していく・・・
これから通おうとする学校が、どこまでの免許の取得に対応できるのかは知っておかなければなりません。個人の目的に応じて最初の大きな舵取りが大きく変わります。
訓練する地域や飛行場
そもそもなぜカナダなのか?→どこの州・地域か?→どこの飛行場をベースにするか?
カナダ国内にも500以上あると言われる飛行場の中でも、それぞれ混雑の状況、地形や天候の特性、保有設備の違いなど、状況は様々です。いずれも一長一短の特色があるため、何が自分に必要なのかを自身で見極める必要があります。
例えば、空港トラフィックの混雑状況で言えば、混雑する飛行場は訓練時間に制限が生じます。サーキット訓練を計画しても、混雑状況によっては地上待機を強いられたり、場合によっては入れさせてもらえないこともあります。また、地上でエンジンを回したまま長時間の待機を指示されると、高価で貴重な訓練時間(と費用)が削られていくことになり、仕方ないと分かっていながらもやはり辛いものがあります。。
一方で、閑散とした飛行場は比較的自由に飛行訓練を計画できますが、航空会社への就職を計画している場合など、今後に別の飛行場で飛行する場合に、トラフィックの回避や、他機を考慮した飛行法など十分なテクニックを得られない可能性があります。
天候に関しても同じことで、天候が良ければ飛行可能時数は増えますが、経験値を考慮するとそれが必ずしもいいこととは言えません。
現実的には、訓練をするにあたって、飛行場に通うことになります。居住予定の地域から、飛行場までのアクセスや交通手段も大事な要素になります。
訓練プログラムの有無
上で少し触れた「免許の種類」と関係するところがありますが、自身がどこまでの免許取得を目指しているのかについては考える必要があります。航空会社への就職を目指すとすると、多くの場合「事業用操縦士(CPL)+多発機(MULTI)での計器飛行証明(IFR)」が最低限必要な免許になります。
多発機での訓練を念頭に入れておくのであれば、多発機を保有していて、多発(MULTI)での計器飛行証明(IFR)の訓練ができる学校を探すのが近道です。
途中で訓練の方針を変えたり、訓練の進捗状況に応じて学校を移ることも可能です。
しかし、学校に入校推薦書(Letter of Acceptance)を発行してもらって学生ビザが発給されている場合は、その滞在の根拠が変わることになりますので、注意が必要です。
また、新規の発給には改めて時間を要することも考慮しましょう。
なお、BC州の認定フライトスクール18校のうち、多発機を訓練機として保有している学校は、12校あります。
学校によっては、航空会社への就職までの訓練プロセスをプログラム化しているところもあります。日本人学生にはあまりメジャーではありませんが、地上座学から飛行訓練までを学校が管理していて、自家用(PPL)から事業用(CPL)という通常の段階を踏むことなく、最終目標とする免許の取得に向けて、飛行訓練が計画された統合プログラムです。「Integrated」と呼ばれ、CPLコース、またはATPL(旅客機の操縦に必要なレーティングまでを取得する)コースがあります。
多くの場合は、飛行訓練を実施する大学などが飛行学校と提携して行うプログラムで、BC州ではMontair Aviationのみ実施しています。
使用訓練機材と費用
使用訓練機材
使用訓練機材とは、飛行訓練で用いる飛行機の機種のことで、多くの学校のウェブサイトで、「FLEET」の項目で確認できます。
最も多くの学校で採用されているのが、ベストセラーの「セスナ」です。種類がいくつかありますが、最もメジャーで経済的なのがC-152です。
もともとグライダーを製造していたオーストリア製の「ダイアモンド」系は、軽量な繊維素材を使用し、運動性能にも優れ経済的な低翼機で、扱う学校の数も増えています。
その他にも、小型旅客機としても人気の「ビーチ」系や、セスナ・ビーチと並ぶ小型機のビックスリーとも言われる「パイパー」系、尾輪式の「アメリカン・チャンピオン」系、新鋭の「シーラス」を扱う学校など様々です。
それぞれの飛行機に特色があるので、時間あたりの使用コストだけでなく、飛行特性や可動率、装備の新旧なども含めて決めたいところです。
飛行訓練装置(シミュレーター)
シミュレーターの保有状況も重要な要素です。
訓練装置の保有状況は下記のカナダ運輸省のリンクで検索できますが、ほとんどの学校が保有する訓練装置はヒットしませんでした。
実際の飛行時数に代えて、一定の時間に限りシミュレーターの訓練でその時間を補うことができる制度になっています。実機訓練よりは安価ですし、天候状況の設定や故障設定などシミュレーターならではの訓練も可能なため、技量向上の面では、シミュレーターの有無や機能は重要な要素と言えます。
詳細は各学校のウェブサイトで紹介されているので、確認しましょう。
訓練費用
訓練費用は、一番大きな要素ではありますが、惜しんではいけない要素のひとつです。
最も大きく左右されるのが、機体による1時間あたりの使用コストです。昨今の燃料価格の高騰に伴って、更にサーチャージが追加される場合もあります。
支払い方式は、学校によって異なります。
ある程度の金額をデポジットとして収めて、そこから差し引いていく方式や、「PAY-AS-YOU-GO」と呼ばれる飛行した分だけをその都度支払う方式があります。
先払いのタイプでは、万が一転校する場合や自身の訓練方針を変更する場合など、返金の必要性が生じた際にトラブルになる可能性がありますので、十分に注意が必要です。
支払いにはクレジットカードが利用可能なところが多く、日本のカードを使えれば、日本の銀行口座に訓練費用を置いたまま支払いすることもできるので、大金を送金する必要がなく安心です。
訓練費用の見積もりを多くの学校ウェブサイトで掲載していますが、これらはあくまでも最低時数での計算になります。個人の技量などによって必要時間は異なるため、一概には言えませんが、一般にこの最低時数での費用に25%程度を加算して予算計画をすることが推奨されています。
詳細は学校に確認しましょう。
学校の強点・弱点
学校ごとに特色が生まれるのは、使用機材や費用などの違いだけでではありません。学校それぞれが独自に定めているルールも違っています。
例えば、ある学校では、天候の制限により訓練初期の学生の訓練飛行は全て取りやめとしていたとしても、別の学校では制限範囲内で、訓練を通常のように継続する、ということもあります。
じっくり知識と技量をリンクさせていくように訓練をプログラムする学校もあれば、とにかく早く進めていく方が早く感覚を身に付けられると進めていく学校もあり、方針は様々です。
いずれにせよ、認定を受けている学校であれば、カナダ運輸省による厳しい審査を都度受けています。大きな問題になるような運営は学校側がとっていないはずですが、ここは在校生による評判なども参考にしながらじっくり考えていきたいところです。
地上座学
航空機に初めて触れる人にとって、座学は特に重要な要素です。車の教習所でも、座学をじっくりやっているように、特に空中を飛行する飛行機の扱い方や各種捜査要領、天候や航空法に関する基礎知識などを理解しておかなければ、航空事故につながりかねません。
現在は、オンラインスクールで座学教育をまかなう学校も増えてきています。
ただし、同じようなレベルで同じような悩みや疑問をもつ学生同士が教室で一同に会して、ああでもないこうでもないという議論をしながら、本当にどうしてもわからないことを教官に質問していくというのがベストな気がします。
飛行教育では全ての教育に費用が発生します。教官に教えを請うことも、多くの場合に時間単位でお金が掛かりますので、何でもかんでも教えてもらう訳にはいきません。とはいえ、自分だけの勉強ではどうしようもない部分もある訳です。
日本では、多くの飛行訓練課程や飛行訓練校などでは、環境の許す限り「クラス制」「バディ制」を敷いて、座学や実技訓練を実施しています。
ただし、カナダでは学校の規模によっては、そうできない場合が多くあります。就職を視野に入れた免許取得なのか、プライベートまで取れればいいのかでも方向性は変わってくるものの、座学をしっかりやってくれる学校の方が初心者には安心できると言えます。
スタッフやインストラクター
飛行訓練中に限らず、学校の管理事項全般に関して、学校の教官や管理者とコミュニケーションをとることが多くあります。例えば、これからの訓練の進め方、カナダ運輸省とのやりとり、学生ビザの問題など、全般について気軽に相談できそうな学校を選びましょう。
少しでも英語に不安があれば、日本人スタッフやインストラクターがいる学校が安心です。ただし、昨今の航空業界は、人事的に流動的で、教官の出入りが激しいため、ウェブサイトだけの情報では現実に十分追い付いてない場合もあるので、注意が必要です。
多くの学校ではスタッフとして、学校の代表、事務担当、飛行教官(最先任教官:CFI)、ディスパッチャー、整備員(多くの場合外部整備会社への委託)その他のスタッフが在籍しています。
学校の運営方針によってはそれぞれを兼務していることもあります。
BC州で認定を受けている飛行学校で、学生ビザを発給できる権限がある18校のうち、保有機や取得可能免許は上の表のようになっています。(2020年9月現在)
2020.9.6追記
ピットメドウズベースの「Pacific Rim Aiation Academy」を追記し、18校に更新しました。
ウェブサイトを活用して分析
調査の結果でリストを作ったら、ウェブサイトを覗いてスクールについて調べてみましょう。
TCが推奨する確認すべき事項は次のとおり。
実際に学校を訪問
ウェブサイトのチェックを行って、各学校に関する十分なデータが得られたら、次は最終候補を幾つかに絞り、実際に学校に足を運んでみましょう。
学校に行く際は、必ずメールでもいいので、事前にアポイントメントをとり、訪問した際に必ず対応してくれるスタッフをつけてもらいましょう。
航空機やスタッフ、設備、学校の方針について見せてもらったり教えてもらうことができます。
実際に足を運ぶのは、学校の雰囲気をすぐにつかむことができるし、学校選びにおいてベストな方法だと確信しています。
決してウェブサイトの質だけで学校選びをしてはいけません。学校の規模感、スタッフや他の学生の雰囲気、使用機材の整備状況など、色んなことに目を配ることができます。
TCが推奨する学校訪問時の確認・質問のポイントが次のとおり。
もっと学校自体を深く知りたい場合のオススメの方法は、体験搭乗をすることです。
飛行機自体にも慣れてイメージをつかみやすいし、教官がどのように飛行機を扱っているのか、飛行場の雰囲気も見ることができます。
学校によっては、Introduction Flightとして特別価格で飛行できるところもあるので、オススメです。
学校の決定
情報を十分に収集し、データに基づいて分析し、そして実際に自分の目で見て話を聞いてフライトして体感をしたならば、ついにあなたの目標達成をサポートしてくれる学校を1つ選びましょう。
結論:一番いい学校とは、人それぞれです。自分に合っていて、自分が良いと思った学校こそが一番いい学校と言えるでしょう。