航空機の免許の種類はたくさんありますが、当記事では飛行機に焦点を当ててまとめています。免許やそれに付加する資格を取ると、それぞれ一体どういった飛行をすることができるようになるのでしょうか?
免許の分類
カナダの航空関連の免許や資格には、次の種類があります。
カナダの航空関連免許/資格の分類
許可証(Permits):限定版の免許。自動車免許で言うと、仮免許のようなイメージ。
免許証(Licenses):等級や証明を付加して限定を解除していくベース。車で言うと、普通免許のように、ベースになる免許。これ自体で業務ができる。
等級(Class):ベースになる免許や許可証の範囲内で行う、クラス変更(追加)。車で言うとオートマからマニュアルへの変更。限定を解除するという意味では、資格(Rating)との違いは不明瞭。
資格(Rating):ベースになる免許で可能な範囲を拡大するための追加資格。車で言うと、二種免許(タクシー)化や大型免許化などのイメージ。
本記事内で解説していきますが、許可証/免許証と等級/資格証明を特性毎に分類して一覧にすると、次の表のようになります。
許可証(Permits)
許可証の種類
飛行機の許可証
- 学生操縦許可証
- レクリエーショナル飛行機操縦許可証
飛行機以外の許可証
- ジャイロプレーン操縦許可証
- ウルトラライトプレーン操縦許可証
学生操縦許可証(SPP)
学生操縦許可証(SPP)の免許範囲 401.19
- 学生操縦許可証(SPP)の保有者は、次の条件を満足すれば、特定の種類の航空機の機長(PIC)として飛行できる。
学生操縦許可証(SPP)で機長(PIC)として飛行できる条件
- 許可証保有者の訓練目的
- カナダ国内のみ
- 日中のVFR状態
- 免許取得のための訓練を提供する者の監督下
- 乗客を乗せない
- 認定総合訓練課程で訓練中のSPP保有者は、VFR状況下であれば夜間も機長(PIC)として飛行可能である。
レクリエーショナル操縦許可証(RPP)
レクリエーショナル操縦許可証(RPP)の免許範囲 401.22
- 日中のVFR状況下において、次の内容が実施できる。
- 取得した等級と型式の飛行機において、次の条件で機長(PIC)として飛行できる。
RPPで機長として飛行できる条件
- 高性能機でない単発機
- 最大4名までの乗員が搭乗できるよう設計または型式認定を受けた飛行機
- 乗客は1名のみ
- ウルトラライトプレーンの機長(PIC)として飛行できる。
- 次の条件のPPL保有者自身の訓練や飛行検定の目的であれば、どんな航空機の機長(PIC)や副操縦士としても飛行できる。
訓練/検定の条件
飛行訓練の場合の条件
- カナダ航空法425.21「飛行訓練」で定められる者の監督下にあること
- 乗客を乗せないこと
飛行検定の場合の条件
- カナダ航空法401.15に従って行われること
- 乗客を乗せないこと
免許証(Licenses)
免許証には、9種類があります。
免許証の種類
飛行機の免許
- 飛行機自家用操縦士免許(PPL)
- 飛行機事業用操縦士免許(CPL)
- 飛行機定期運送用操縦士免許(ATPL)
飛行機以外の免許
- 飛行船免許
- 滑空機免許
- ヘリコプター自家用操縦士免許(PPL)
- ヘリコプター事業用操縦士免許(CPL)
- ヘリコプター定期運送用操縦士免許(ATPL)
- 航空機関士免許
自家用操縦士免許(PPL)
自家用操縦士免許(PPL)の免許範囲 401.26
- 免許と資格で認められる特定の等級と型式の飛行機の機長(PIC)または副操縦士として飛行できる。
- ウルトラライトプレーンの機長(PIC)として飛行できる。
- 次の条件のPPL保有者自身の訓練や飛行検定の目的であれば、どんな航空機の機長(PIC)や副操縦士としても飛行できる。
訓練/検定の条件
飛行訓練の場合の条件
- カナダ航空法425.21「飛行訓練」で定められる者の監督下にあること
- 乗客を乗せないこと
飛行検定の場合の条件
- カナダ航空法401.15に従って行われること
- 乗客を乗せないこと
事業用操縦士免許(CPL)
事業用操縦士免許(CPL)の免許範囲 401.30
事業用操縦士免許(CPL)の保有者は、昼間/夜間を問わず次に示す飛行ができる。
事業用操縦士免許(CPL)の免許範囲
- 自家用操縦士免許(PPL)の免許範囲で認められる飛行
- VFR雲上飛行資格の資格範囲で認められる飛行
- 免許と資格で認められる特定の等級と型式の飛行機を使用する民間航空業務に従事している間、次の条件を満たした飛行
民間航空業務で飛行する条件
- 登録書類で最小必要操縦者数が1名と規定される飛行機の機長(PIC)
- 副操縦士
- 飛行教官の資格があれば、カナダ航空法425.21「飛行訓練」に従って行う飛行教育
- 自家用操縦士免許(PPL)の航空身体適性が有効な限り、PPLの免許範囲で認められる飛行
日中のみの限定つきCPLの免許範囲
- 申請者が夜間飛行時間の要件をまだ満足していない場合でも、その他の要件を満足していれば、「日中飛行限定」の事業用操縦士免許(CPL)が発行される。
- 日中の飛行に限定されたCPLの場合、上記ボックスの1つ目と3つ目にあたる「自家用操縦士免許(PPL)の免許範囲で認められる飛行」と「民間航空業務で飛行する条件を満足した飛行」は夜間に実施できない。
- 夜間飛行時間の基準を満足すれば、この限定は解除される。
定期運送用操縦士免許(ATPL)
定期運送用操縦士免許(ATPL)の免許範囲 401.34
- 定期運送用操縦士免許(ATPL)の保有者は、自家用操縦士免許(PPL)及び事業用操縦士免許(CPL)の免許範囲で認められる飛行
- グループ1の計器飛行証明をもつ定期運送用操縦士免許(ATPL)の保有者は、免許と資格で認められる特定の等級と型式の飛行機を使用する民間航空業務に従事している間、次の条件を満たした飛行
民間航空業務で飛行する条件
- 登録書類で最小必要操縦者数が2名と規定される飛行機の機長(PIC)
- 副操縦士
有効なATPLを保有していても、グループ1計器飛行証明が無効(失効しているなど)の場合、CPLまでの免許範囲までが有効となる。つまり、ATPLとしての効果を発揮するためには、常に有効なグループ1計器飛行証明が必要と解釈される。
資格/証明(Ratings)
夜間飛行資格「Night Rating」
夜間飛行資格を付加できる元になる免許等 401.42
飛行機の免許
- 飛行機自家用操縦士免許(PPL)
飛行機以外の免許等
- ヘリコプター自家用操縦士免許(PPL)
- 飛行船免許
- ジャイロプレーン操縦許可証
夜間飛行資格の資格範囲 401.43
夜間に許可証または免許証で認められた免許範囲の飛行を夜間に実施可能
VFR雲上飛行資格「VFR Over-the-Top Rating」
VFR雲上飛行資格を付加できる元になる免許 401.44
飛行機の免許
- 飛行機自家用操縦士免許(PPL)
飛行機以外の免許
- ヘリコプター自家用操縦士免許(PPL)
- ヘリコプター事業用操縦士免許(CPL)
- ヘリコプター定期運送用操縦士免許(ATPL)
VFR雲上飛行資格の資格範囲 401.45 602.116
日中の巡航時において、次の条件を満足すれば「VFR飛行では、管制/非管制空域によらず地表面の目標を視認して行うこと」と定める602.114(a)及び602.115(a)の規定によらず飛行ができる。
地表面の目標を視認して飛行しなくてよい条件
- 雲と垂直方向に1000ft以上の距離をとって飛行
- 2層の雲層間を飛行中は、各層と垂直方向に5000ft以上の距離をとって飛行
- 巡航高度における飛行視程は5SM以上を維持
- 目的飛行場の天候予報において、飛行予定高度の上空3000ft以下に不明瞭な雲の層やBKN以上の雲量がないこと
- 目的飛行場の天候予報において、地上視程が5SM以上で雷雨や降雨現象が予報されていないこと
目的飛行場の天候予報の使用条件
- 到着予定時刻の1時間前から2時間後の間のTAFにおいて、TEMPO/BECMG/PROBを活用した最も悪い予報を用いること
- TAFが利用できず、予報が地域予報(FA)となる飛行場においては、到着予定時刻の1時間前から3時間後の間の予報を用いること
多発機飛行資格「Multi-Engine Class Rating」及び水上機飛行資格「Seaplane Rating」
多発機飛行資格「Multi-Engine Class Rating」及び水上機飛行資格「Seaplane Rating」は、等級資格「Class Rating」という区分です。
等級資格を付加できる元になる免許等 401.38
飛行機の免許等
- 飛行機自家用操縦士免許(PPL)
- 飛行機事業用操縦士免許(CPL)
- 飛行機定期運送用操縦士免許(ATPL)
- レクリエーショナル飛行機操縦許可証(RPP)
等級資格の資格範囲 401.39
計器飛行証明「Instrument Rating」
計器飛行証明を付加できる元になる免許等 401.46
飛行機の免許
- 飛行機免許(PPL/CPL)
飛行機以外の免許
- ヘリコプター免許(PPL/CPL)
計器飛行証明は、免許範囲上で有効な航空機の種類全体に対してこの資格証明が付与される。
計器飛行証明の資格範囲 401.47
- 計器飛行方式(IFR)の条件下で、資格証明が付加された免許の免許範囲の飛行
- VFR雲上飛行資格の資格範囲の飛行
飛行教育証明「Flight Instructor Rating」
飛行教育証明を付加できる元になる免許等 401.61
飛行機の免許
- 飛行機事業用操縦士免許(CPL)
- 飛行機定期運送用操縦士免許(ATPL)
飛行機以外の免許
- ヘリコプター事業用操縦士免許(CPL)
- ヘリコプター定期運送用操縦士免許(ATPL)
クラス4教官の資格範囲 401.69
- レクリエーショナル操縦許可(RPP)、飛行機免許(PPL/CPL)、夜間飛行資格、VFR雲上飛行資格の取得に向けた同乗飛行教育ができる。
- 学生の単独飛行の実施を許可できる。
- 学生のレクリエーショナル飛行機操縦許可証(RPP)または飛行機免許(PPL/CPL)の飛行実技検定の実施を推薦できる。
- 学生の夜間飛行資格とVFR雲上飛行資格の取得に推薦できる。
- ウルトラライトプレーンの飛行教官としての資格範囲の業務を監督なしで実施できる。
クラス3教官の資格範囲 401.70
- クラス4教官の資格範囲の業務を実施できる。
- 唯一の飛行教官となる規模の訓練施設における主任飛行教官(CFI)としての業務を実施できる。
クラス2教官の資格範囲 401.71
- クラス3教官の資格範囲の業務を実施できる。
- クラス4教官の監督ができる。
- 訓練施設の主任教官(CFI)としての業務ができる。
クラス1教官の資格範囲 401.72
- クラス2教官の資格範囲の業務を実施できる。
- 飛行教官の養成のための地上座学と飛行指導ができる。
航空機型式証明「Aircraft Type Rating」
包括的型式証明と個別型式証明 401.40
要件を満たせば、包括的な型式証明と個別の型式証明に分けて発行される。
航空機型式証明の資格範囲 401.41
各種申請料金
2020年4月現在
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