この飛行教官ガイドについて
当ガイド「Flight Instructor Guide — Aeroplane (TP 975)」は、飛行教育証明を取得する訓練生が参照するだけでなく、既に資格を有する教官がガイドとして使用することを想定されて作られたもので、現在は2004年9月発効のものが最新版となっています。
ここで取り扱われる内容の一部は、個別の教官養成訓練や、教官の資格更新コースの中で議論された内容を元に編集されています。1990年代に作成された内容から、特に計器飛行と夜間飛行に関する指導法に大きな変更があり、更新がなされています。
内容はざっと以下のような構成になっています。
第1部「学習と学習要素」
地上座学教育や飛行前後ブリーフィング、上空の指導において教官が使用する指導技法について示されています。
第2部「地上/飛行指導シラバス」
上空指導に移行する前に、学生が知っておくべき各課目の目的や基本的な予備知識、教官が気にすべきアドバイス法、教官による上空指導の際に実施する手順等について、各課目別で示されています。
記載量が最も多いパートのため、本ブログ内では3つに分割して第2部を構成しています。
第3部「訓練指導計画の作成」
学習の各段階で一般的なレビューや評価を行いながら、一歩ずつ進めていく手法ついて示されています。
第4部「よくある質問」
各学生のバックグラウンドや気質に適した、よりよい質問方法を教官が準備する方法について示されています。
飛行教育証明の資格取得要件や飛行検定の内容、筆記試験の内容のまとめについては下記記事をご覧ください。
第1部 学習と学習要素
本記事は、4部で構成される飛行教官ガイドの第1部に基づくものです。
学習に関する導入
このガイドの第1部では、次のような事項に適用する基本的な指導技法について記述されています。
ここで示される技法を用いて学生に学習をさせ、求められる飛行検定標準まで訓練していきます。
学習と7つの学習要素
学習することとは
7つの学習要素
下記に示すのが、7つの学習要素です。
各要素について、もし自分自身に適用できそうであれば、学生にも同様に適用できるはずなので、よく読んでみて、新しい技術や知識の習得についてどう適用できるかを考えてみてください。
各学習要素は一単語で表現されていて、本ガイドだけでなく、筆記試験や飛行検定の指導技法に関する質問などでも、これらの用語は多用されます。
こうした学習要素は、正しく適用されて初めて便利な「ツール」となります。
もちろん問題は、こうした学習要素を飛行教育にどう活用するかということであり、これらの「ツール」を指導の中でどう活用するかは、各学習要素の中で具体的に列挙している「推奨事項」がヒントになります。よくレビューして議論することで、答えを導き出すことができるでしょう。
準備 (READINESS)
- 学ぶためには、その準備ができていなければなりません。
教官はこの必要性を理解し、学生にモチベーションを与えられるように全力を尽くします。
学生が強く明確な目的や学習に対する正当な理由を持っていれば、モチベーションに欠けている場合よりも、はるかに良く進歩させることができます。 - 状況によっては、学生の学習意欲を刺激するために教官ができることはほとんどない場合もあります。
例えば、訓練以外の部分で重要な責任を負っている、関心事項が分散している、重くのしかかる心配事項がある、切迫した予定に迫られている、解決の困難な個人的な問題を抱える場合など、こういった状況で学生の学習意欲を養うことは困難と言えます。
優位 (PRIMACY)
学生が新たな知識や技量を習得する際、最初の印象がほとんどブレずに記憶されます。すなわち教官が指導する事項は、初めての場合は特に精確でなければならないことを意味します。
学生は授業の詳細について忘れることがあっても、技量や知識の全体像については比較的長期間記憶しています。
多くの場合、学生が必要な予備知識に関する指導を受ける前に、機内で操縦する機会がありますが、学生が誤った操作法を真似てしまう可能性があるため、この際は特に正しく操作を実施する必要があります。
例えば、横風着陸の課目に入る前に、横風で着陸する機会もあり、この時点で悪い例が示されると、次に来る訓練の際には「未学習」として取り扱わなくてはなりません。
関係性 (RELATIONSHIP)
この学習要素では、「古い事実」と「新しい事実」との関係や学習を行う場合に「頭で考えること」と「実際に行う操作」の間の関係について学生が理解する必要性を強調しています。
飛行訓練において、学生は飛行法を学ぶ理由について理解するだけでなく、その飛行法が以前に実施したものとどう組み合わされ、全体のシラバスの中のどこに適合していくのかについて理解する必要があります。
各訓練を通して全体のプロセスを継続していくことは、学生の学習意欲の維持にも役立つため、訓練開始時に学生にこうした「関係性」を考慮させることで、学習準備を整えさせることができます。
鍛錬 (EXERCISE)
学習を行うには、口頭質問 / 問題の仮定 / 同乗教育での確認 / 単独訓練などの有意義な精神的もしくは身体的な活動が不可欠です。
飛行訓練においては、正しい訓練とその反復により、こうした精神的・身体的活動を達成することができ、指導事項や実施事項を応用させることで学習を深めていきます。
学習を継続したり、追加訓練でこれを強化していくためには、訓練シラバスの中にこうした訓練時間を含めるべきで、訓練が特定のゴールに向けて行われていることを確認する必要があります。
Lv. | 学習レベル | 教官の行動 | 学生の行動 | 質問の種類 |
---|---|---|---|---|
Ⅶ | 評価 | 確認項目を付与 | 記録し結論を導く | すべて |
Ⅵ | 統合 | 訓練条件を付与 | 情報をまとめ考えを形成 | すべて |
Ⅴ | 分析 | 訓練条件を付与 | 項目を細分化 | すべて |
Ⅳ | 応用 | 教示と説明 | 真似と訓練 | すべて |
Ⅲ | 納得 (理解) | 質問をすることで 授業を発展 | 回答と質問 | なぜ? どうして? |
Ⅱ | 知識 (情報) | レクチャーを実施 | 聴く | 何を? |
Ⅰ | 慣熟 | ブリーフィングを実施 | 聴く | どこで? いつ? |
教官として最も重要な語彙となる「どうやって」「なぜ」という質問に学生が答えられれば、その課目についてよく理解していると考えることが出来ます。
上の表の各学習レベルにおける教官と学生の活動の両方に注目すると、理解状況を確認せずに学習の応用レベルに移行すると、学生はその前のレベルを習得してそこに移行する場合よりもはるかに困難に直面することが分かります。
強度 (INTENSITY)
ニアミスを体験すると、学生の「見張り」への意識が大幅に改善されることはよくあるように、退屈な経験よりも劇的で刺激的な経験から学生は多くを学びます。
こうした冷っとする経験を学生に無理矢理与える訳ではありませんが、興奮したり、予期しないようなことを紹介することでて、学生の学習体験をより刺激的にするように努める必要があります。
例えば、学生が燃料管制法や場外航法飛行法を学んだ後に、場外飛行中に燃料計の表示を気にしていないことがあったとします。教官としてそのことについて指導する前に、安全な範囲で1つのタンクが空になるくらいまで燃料量を減らし続けさせてみます。すると学生は、飛行中のエンジン故障とほとんど変わらない状態になっていることにショックを受け、おそらく長期間その経験が記憶に残ることになります。
「強度」に関する学習要素は、学生が何よりも実際の経験から多くのことを学ぶということを意味します。劇的だったり現実的な効果を得るための鮮明な体験をさせるには、想像力を働かせることが必要です。
効果 (EFFECT)
学生は、敗北感 / イライラ / 怒り / 無益感などを感じる場合よりも、心地良さや満足感を得られるときの方がより多くを学んだり覚えたりするので、学習が強化されます。
例えば、最初の上空指導でスピンについて教示する際に、学生は実際の恐さではないにしても、いくらかの劣等感を感じるかもしれません。こうした消極的な経験をきっかけとしてその段階で飛行することを諦めてしまうかもしれません。あくまでもこれはかなり明白な例ですが、教官の行動がどのように欲求不満や怒りの感情を生み出す可能性があるかを考慮しておく必要があります。
また別の例で、例えば学生にある飛行法を実施させた後、学生が行ったエラーについてピックアップして教官として指導するとします。
各エラーの認識がいかに非常に正確でも、学生はそれについてどのように感じるでしょうか。もし学生に敗北感を与えることが目的だとすれば、おそらく大成功でしょう。しかし実際にはそうではないですから、最初に学生のパフォーマンスの良かった点を指摘してから、実施した主なエラーについて指導し、改善のための提案で締めくくるという方法がよいでしょう。
学習状況によらず、学生にプラスの影響を与え、満足感を与えることが必要です。
それぞれの学習体験は完全な成功である必要はなく、学生は各訓練内容を完全に習得する必要もありません。しかし、達成感や楽しい学習体験を与えることができれば、学生の成功の可能性は大いに高まります。
最新性 (RECENCY)
条件が同じであれば、最後に学んだ事項が最も記憶に残りやすいとされています。
逆に、学生が新しい事実やその理解から離れる時間が長くなればなるほど、それを記憶しておくことは困難になっていきます。
完全な指導の完結 ⇒ レビューの実施 ⇒ 新しい訓練内容の学習 ⇒ レビューの実施といったように、レビューの必要性については上で述べられているとおりです。
口頭質問
飛行教官としての重要な技量は、口頭で良い質問をする能力で、これによりすべての学習要素を包括することができます。
口頭質問の概要
授業の手法は、多くの技術を駆使したり、補助的な物を活用するなど様々あります。
学習を刺激したり、7つの学習要素すべてを満たすために効果的に適用できる補助的な方法の1つが、口頭で質問を行うことです。
質問を行うテクニックは難しいわりに、最も軽視されがちな指導分野の1つでもあります。
優れた口頭質問を行うには、教室内や個々の学生と向き合いながら、すばやく簡単に考え、思考の進展につれて変化を加え、明確で単純な言葉を用いて質問を表現する能力が必要です。
学生に質問したり回答に対応する際は、使用すべきテクニックに常に注意する必要があります。
口頭質問の目的
良好な口頭質問に求められる質
口頭質問により目的を果たすには、質問を作成したり使用する準備する際に、次に示すような望ましい質の良い質問を行うように心掛ける必要があります。
精神的な関与を得るための方法
質問が行き当たりばったりで無計画に行われると、学生は混乱する可能性があり、質問の目的が失われてしまいます。
すべての学生が精神的に関与できるよう、次のような手順を使用します。
学生に対する質問のしかた
常に正解を確認するだけでなく、学生の回答を扱う上で知っておく必要のあるテクニックがあります。
学生からの質問の扱い方
授業に関して学生が質問をすることを思いとどまらせないように配慮します。
質問を受けたポイントや事実について明確な説明がなかったため学生が質問を行うのであり、「1人の学生が質問をすると、他の6人も同じ質問をしたい」という古いことわざもあります。
学生の質問に関して考えるべきテクニックは、次のとおりです。
口頭質問の仕方に関する確認問題
指導における教示 (デモ) とパフォーマンス法
指導のデモとパフォーマンスに関する概要
ある教官訓練生が「授業のプレゼンテーション方法を1つだけ学ぶ時間があったら、どれを学ぶべきでしょうか」と尋ねたとしたら、その答えは「教示 (デモ) とパフォーマンス法」です。
なぜでしょうか?
教官の主な関心事は訓練です。訓練は主に、物理的であったり精神的なスキル / 手順 / 技術の進展に寄与するものです。例えば、航空機の飛行 / 設計図の読み取り / 車両の運転 / 溶接 / 建設 / 射撃 / 修理 / 問題の解決 / 計算尺の使用 / フォームへの記入など、これらすべてに限らずその他多くのことは、教示 (デモ) とパフォーマンス法を用いて最もよく指導することできるからです。
この方法は決して新たなものではなく、最も古い指導法の1つかもしれません。
洞窟に住んでいた時代の人が棍棒の作り方を子どもに教えるときに、教示をしながら手順を示していたことは容易に想像ができます。
教示 (デモ) とパフォーマンス法は、5つの基本手順に分けることができます。
各基本手順について、説明していきます。
1~2. 説明と教示
説明と教示を同時に行うことも、最初に教示を行ってから説明を行うことも、またその逆も可能です。
順番よりも指導するスキルが最良のアプローチにつながるかもしれません。
不時着陸の飛行を学生に指導するとして、次のいずれかの方法を考慮します。
教官が異なれば、このスキルでの指導法も当然異なります。
次に示すアプローチ法は、ほとんどの教官にとって最も効果的であると思われる推奨アプローチを表しています。
3~4. 学生のパフォーマンスと教官の監督
学生のパフォーマンスと教官による監督は、学生が大きな間違いを犯すことが許されない訓練の初期段階においては常に同時に実施されます。
教官による監督をもってエラーをできるだけ早期に発見し、修正しなければなりません。
学生は教官の監督を受けつつ、行うべき作業や操作をできるだけ小さな単位に分けて実施します。
5. 評価
教示 (デモ) / パフォーマンス法における「評価」部分は、学生が支援なしで操作できることを証明する機会です。
想定の不時着陸では、エンジン故障の模擬を教官が実施した後にすべての点検や見張りなど手順全体を実施することを学生に指導します。
学生がこの操作を実施中、教官としては「うーん」と言ったり、頷いたりすることも含め、いかなるコメントも手助けとなるため控える必要があります。ただし、操作全体を注意深く観察して学生が犯す可能性のあるエラーについては分析し、それに応じてデブリーフィングできるようにします。
当然、安全上の問題が発生すれば、速やかに学生のパフォーマンスを中断します。
エンジン・クリアリングや見張りの実施であったり、他にも多くの要因がある可能性があります。
訓練の評価段階において成功か失敗かを判断し、次の訓練に移行するか、またはこの訓練をもう一度実施すべきかを判断します。
教示 / パフォーマンス法の使用ルール
指導技法の要約と手引き
次で示すでような指導技法は、丁寧に適用することで教官による効果的な指導に役立ちます。
ほとんどの教官は、全員ではないにしても地上座学も並行して実施しますが、ここでまとめられる内容は教室で行うタイプの指導全般に言及されています。
指導技法 / 質問技法 / 訓練計画は、複数名を対象として行う指導でも、1対1で行う上空指導 / 個別の地上準備指導 / 飛行前ブリーフィングに対しても同じ様に適用可能です。
プロフェッショナルな方法で授業のプレゼンテーションを行うためには、事前準備を行い、次のように進行させていきます。
プロフェッショナルにプレゼンを行うために事前に行うこと
発達的指導法や質問による指導法
学生の進捗
1. 学習率
2. 成長と停滞
個人の違い
せっかく授業をしっかりと計画して臨んでも、すべての学生に同等の学習効果を与えられる訳ではないと気付くとがっかりすることがあるでしょう。これは至って自然なことであることがすぐに分かります。
学生の学習率についてはっきりと言えることは、彼らが同じ速度で学習するということはほとんどあり得ないということです。
個々の学習率の違いは、知力 / 予備知識 / 経験 / 興味 / 学習意欲 / 無数の心理的・感情的・身体的要因の違いに基づいており、学生がそれぞれ異なることを認識しておく必要があります。
またこの事実により、どれだけ / どのくらいの割合で / いつ指導すべきかの判断の要因となることを認識しなければなりません。
人格の違い
感情
感情は学生の訓練において重要な役割を果たします。
教官はそれらを制御するための感情とそれを扱うテクニックの種類を知っておく必要があります。
我々のほとんどは、感情と聞くと、熱意 / 憎悪 / 悲壮感といった強めの感情をイメージしますが、これらは感情の範囲全般においては決して一般的なものではありません。
我々が行うことや接触するものはすべて、何らかの感情的な気持ちによって彩られます。
感情は、穏やかな快感や不快感から、肉体的および精神的活動が麻痺するほどの激しい感情までさまざまな種類があり、我々全員が毎日多種多様な感情を経験しています。本人を悩ませたり、仕事の能力や意欲を妨害することはめったにないにしても、飛行訓練中の学生は異常な感情状態にあると言えます。
学生は、加速していく感覚の圧力に長期間にわたって晒されるような不慣れな状況にあることから、学習状況は我々が日常生活の中で予想する以上に、感情的な問題を激化させていくことがあります。
教官は学生のこの問題を無視せず、認識し克服する方法を学ぶ必要があります。
感情の度合い
強い感情的緊張の影響
感情的な逃避メカニズムの利用
違いへの対応
学生と教官の関係
学生と教官の良好な関係を確立するための主な責任は、教官にあります。
あなたの仕事を成功させるには、学生との関係において3つのことを成し遂げる必要があります。
学生の問題解決を手助けしてあげたいという願いは、学生と教官との関係においては重要な部分であり、問題のある学生を助けようとする明確な意欲があることは、何よりも尊敬 / 忠誠心 / 協力を維持するために役立つものとなります。
この意欲をしっかりと示せば、多くの場合に学生の問題はカウンセリングで解決することができます。
これは継続的に実施すべきことであり、訓練に関する悩みを抱える学生を手助けしようとする場合にはいつでも、堅苦しくなりすぎない形で相談に乗ります。
訓練を通して行った指導で学生の中に育まれた主導的な姿勢 / 判断力 / 飛行技量を駆使して良いパイロットになってもらうことは、教官にとっての望みです。
学生が教官の権威に恐れたり憤慨するのでなく敬意をもって接することができるには、教官自身が公正で、しっかりしていて、友好的でなければなりません。
次に示されるような事項は、優れた教官の資質を有していると見なされる要素です。
学生パフォーマンスの分析
飛行訓練のどの段階においても、学生のパフォーマンスに関する分析は必要です。
効果的にデブリーフィングを実施できる能力は、上手に飛べるという能力よりも、教官の良し悪しを決める要素になります。
この分析の唯一の目的は、将来の学生の成績を向上させることであることを理解する必要があります。
有効な批評には、次の3つの重要要素が含まれていなければなりません。
これらの各要素がなければ、この分析はその唯一の目的を達成せず、効果がありません。
強点の分析
強点を分析して満足感を与え、学生に何がうまくできていたかを認識させます。
教官が学生の強点を見つけられなければ、指摘された弱点に対する信ぴょう性や精度などの説得力も学生にとっては下がってしまいます。
学生がもつ強点を積極的に強化していくことは、多くの場合、教官が行う数々の改善提案よりも学生には大きな意味をもたらします。
弱点の分析
弱点分析の必要性はすぐに明らかとなり、3つ目の要素である改善のための具体的な方策の提案とも関連します。
学生を評価する際は常に、次のことを考慮してください。
将来に向けたパフォーマンスを向上させるには、前向きな提案が必須です。
ただし批評は、推奨される救済策を使用して最大3つの弱点の特定に限定する必要があります。
学生が一度に抱えるすべての弱点を修正しようとすると、逆に弱点の修正の失敗する可能性があります。実際の飛行指導においては、次の弱点について考える前に、1つの大きな弱点を指摘するようにします。
達人が一夜にして出来上がらないように、学生のパフォーマンス向上には時間がかかります。
学生の授業参加の度にパフォーマンスが確実に向上していくような場合は、さらに多くのことを学習できるでしょう。
大きな弱点について考える1つの方法は、「いま修正することで、他のエラーを一番多く修正することになる項目はどれか」です。
当初は軽微ものと見なされていた弱点は、学生の技量が向上すればただの弱点と言えるようになります。すべての弱点を処理するにしても、順番でいえば最も重要なものを最初に指導して処理します。
学生の効果的な成果分析の特徴
学生のパフォーマンスに関する効果的な分析を行うには、常に最大限の客観性を意識する必要があります。
個人的な偏見が飛行に関する評価や分析に影響を与えることは決してあってはならず、客観性は学生の個性と飛行技術の両方で考慮されるべきです。
時には個人間の衝突が発生することもありますが、飛行技術の分野においては独断的となり操作の実施に柔軟でなくなる場合もあり、プロの教官としてこれらは最小限に抑えます。
同じ操作を正しく実施するテクニックはたくさんあるということを常に覚えておいてください。
分析には一貫性が必要です。
状況が同じであれば、エラーには常に同等の重要度を与えて処理します。一貫した規則性がなければ、ただやりたいように、好きなように指導しているように見えてしまいます。
正直でいることは、批評を受け入れるにあたって最も目指すべき方向性です。
成績の振るわない学生に対し、実際よりも良い成績を与えてやる気を興させようとすれば、それよりも教官としての指導の有効性が危ぶまれる結果となります。
学生は自身の立ち位置を正確に知り、改善に向け具体的な対策を与えられるべきであり、これこそが学生のパフォーマンスを分析する唯一の目的であるため、この機能に重点を置く必要があります。
地上座学教育
地上準備指導
飛行前ブリーフィング
上空指導
飛行後デブリーフィング
飛行安全
飛行安全は飛行訓練における重要な要素です。
搭乗員と地上員の双方が、正しい安全上の慣行の必要性を認識している必要があります。
不正確 / 不安全 / 違法な慣行をなくす立場として、飛行安全プログラムを成功させ、正しい姿勢 / 適切な監督 / 厳格な実施 / 適切な訓練の励行が必要です。
学生は事例から学習するため、こうした例を設定していく必要があります。
経験豊富な教官は、優れたエアマンシップや飛行規律の原則を効果的に支持しています。
誰しも経験を積むにつれて危険な慣行を認識することができ、状況を是正させるために何をすればいいかが分かるようになります。
飛行安全に関する意識がすべての関係者により当たり前のものとならなければなりません。
不安全な手順について監視し、特定し、一貫性のある毅然とした行動によりそれらを排除する必要があります。
指導全体を通じ、燃料に対する意識の重要性 / 適切な見張りの必要性 / 固縛の緩い機内物品の危険性などについて強調していきます。