第2部 地上/飛行指導シラバス (2/3)
本記事は、4部で構成される飛行教官ガイドの第2部に基づくものです。
第2部は量が多いため、前編(課目1~15)と中編(課目16~23)と後編(課目24~29)に分割しています。
「飛行教官ガイド」の4部構成
第1部「学習と学習要素」
第2部「地上/飛行指導シラバス」
第3部「訓練計画の作成」
第4部「よくある質問」
課目16:離陸
16 離陸
「離陸」の教育目的
- 地表面 / 風 / 滑走路長などの各種条件下で機体を安全に離陸させる方法
- 実際の条件下でどの種類の離陸法を適用すべきかについて有意義な決断を下す必要性
「離陸」の動機づけ
- 必要に応じて実施
「離陸」の重要予備知識
- POHを使用し、推奨の通常離陸法について説明
離陸に関する追加の考慮事項
- 横風について、制限表を参照
- POHを参照し、最小の地上走行法を実施
最小の地上走行が必要になる例
- 障害物のない短距離
- 障害物のある短距離
- 柔軟地
- 荒地
- 硬い表面
- ウィンドシア
- 密度高度の算出法について説明
- POHの離陸性能表を確認し、離陸性能における密度高度や機体重量の変化による影響の判断法を指導
- 離陸距離の計算にコッホチャートを使用する方法について説明し、離陸続行または断念決心点の選定について検討
- 次の事項が離陸距離に与える影響について説明
説明事項
- 風 (正面風 / 横風の成分表の使用)
- わずかに変化する風や背面風
- 勾配の上下
- 硬さ / 砂泥 / 粘土 / 草 / 砂利 / 氷雪などの表面の種類
- 乾湿 / 汚れ / 氷雪などの表面状態
- 翼上の雪 / 泥 / 氷 / 霜 / 汚れ
- 層流型翼などでの不正確な操縦法
- 荒地
- 地上風が弱風か背風に変化する場合の障害物回避における考慮事項
- 機体重量
- 前輪および後輪の航空機については、必要に応じて次のことについて説明
説明事項
- ホイールバローイング
- トルク反作用
- プロペラ後流
- 高い機首上げ姿勢での離陸時の非対称推力
- 浮揚時のジャイロスコープ効果
- ウェザーコッキング
- グラウンドループ現象
- 大型機の離陸に関し、次のような事項について考慮
大型機による後方乱気流(翼端渦)に関する考慮事項
- 浮揚タイミングの遅らせ
- 浮揚地点の決定
- 離陸許可の断念
- 滑走路進入待機位置のマーキングを使用し、離陸待機中の他機を遅らせず有効滑走路を避けるようなエアマンシップを発揮
- 計器表示
計器表示
- 必要に応じCASをIASに変換
- 各種離陸時の対気速度の監視
- 必要に応じ学生に適宜質問
「離陸」指導上の要点
- 離陸自体は短時間であるため、適切な地上準備指導が特に重要であり、滑走路へ移動する直前に重要点を簡潔に要約して指導
実際に指導を行う際には騒音で聞き取りにくい場合があることから教官は明瞭かつ十分な声量が必要 - ラダー制御が不十分でない限り、離陸滑走中のブレーキ使用は回避
- 滑走路の遠方で視覚的参照をもち、直進維持に集中するよう学生に指導
- 離陸滑走の開始が上手くできれば、離陸滑走全体における直進維持が容易となるため、最初の数メートルの滑走の重要性を強調
- 教官は学生にリラックスさせるよう努め、制御に必要な場合の支援を除き離陸滑走を修正させるよう指導
- 短距離/不整地離陸の訓練の目的は、最大の機体性能を得られるようにすることであることを強調
短い滑走路長や不整地において学生が運航をする資格を取得する前では、多大な経験となるが、細心の注意が必要
こうした状況では、可否判断のため離陸区域を実際に歩いて確認する必要があり - 短距離離陸要領は、離陸滑走できるしっかりした円滑な地表面が想定され、短距離の不整地で離陸できるかどうかの判断は、利用可能距離 / 障害物の有無 / 地表面状況の評価後に実施
※ 最小滑走離陸は不整地離陸と同様の要領で実施するが、層流翼の特性を持つ機体など特定機種については、POH指定の離陸法の適用が必要
- 離陸中は、プロペラ後流が水平尾翼の揚力効果を高めるため、着陸時よりも低い速度にてホイールバローイング発生の可能性あり
離陸中に機体を通常離陸速度を超える速度に保持するために過度にエレベータを前方も制御すると、ヨーイング発生時に深刻なホイールバローイングが発生する可能性あり - 点検を入念に完了し、単に形式的とならぬようチェックリストの使用を強調
- 風 / 表面状態 / 障害物 / 乱気流 / 他機から乱流などの影響について、離陸前は拡大して考慮させ、離陸の安全性を判断させる
続行する場合には、問題が発生してから修正させるのではなく、元から使用する離陸の種類を選定させる
「離陸」の指導法と学生訓練
- 離陸 (理想的な条件)
通常離陸
- 離陸前点検と進入点検を完了し、該当時には離陸許可を取得し、離陸経路に向首
- 離陸出力を設定し、直進を維持
- エレベーターが有効になった後の離陸姿勢は、前脚機は機首上げ、尾輪機は機首下げ
- 選択した上昇速度まで加速するため、浮揚前後の姿勢制御について教示
- 必要に応じフラップ格納要領について教示
- 計器表示 (速度と針路の表示)
- 横風離陸
横風離陸
- 離陸前点検の完了
- 操縦桿を風上側にいっぱいに保持
- エルロンが使えるようになったら、横風の影響を打ち消すのに十分な分だけ使用
- 安全な離陸速度に到達し、地面から完全に離れ、バンク制御
- 地面への再接地を回避
- 適度な高度にて、風上側への調和のとれた適切な旋回で偏流を修正
- 使用時はフラップを格納
- 滑走路の中心線に沿って飛行しつつ、通常の離陸上昇
- 短距離障害物回避離陸 (硬い地表面)
短距離障害物回避離陸
- 離陸前点検を完了し、利用可能な最大離陸距離を確保できるよう機体を配置
- 出力の適用とブレーキの使用について教示し、離陸滑走時の空力抵抗を最小限に抑える姿勢を維持して推奨速度で離陸
- 離陸後に最大上昇角速度に加速する飛行法について教示し、地面効果に必要な事前注意事項について強調
- 不整地離陸
不整地離陸
- 離陸前点検を完了し、利用可能な最大離陸距離を確保できるよう機体を配置
- 出力の適用とブレーキの使用について教示し、滑走時の抵抗を最小限に抑制しつつできるだけ速やかに浮揚すべく機体重量を車輪から翼にできるだけ速やかに移動させる姿勢を維持
この際、滑走路上で機体の尾部を引きずらないよう注意 - 前方の視認性が低下するため、必要な事前注意事項を学生に指導
- 離陸後、所望の上昇速度まで加速するための飛行法を教示し、地面効果に関して必要な事前注意事項を強調
- 上昇経路に障害物がない場合の最小滑走離陸
最小滑走離陸に関する教示事項
- 不整地離陸技法との類似点
- 地面効果を得た後の上昇時に、所望の上昇速度に加速するための飛行法
- 条件次第で次のような状況での離陸滑走への影響を教示
各種条件下での離陸滑走の影響に関する教示事項
- 滑走路勾配
- 背面風
- 最大離陸重量
- 高密度高度 (エンジン回転数の低下で模擬)
- 濡れた滑走路
課目17:場周飛行(サーキット)
17 場周飛行(サーキット)
「場周飛行(サーキット)」の教育目的
- 場周経路飛行法や会合離脱法
「場周飛行(サーキット)」の動機づけ
- 必要に応じて実施
「場周飛行(サーキット)」の重要予備知識
説明事項
- 適切な方向 / 距離 / 高度を含む場周経路
- 安全性に重点を置いた矩形の場周経路の飛行法
矩形の場周経路の飛行法と安全上の重点事項
- 他機と間隔の確保
- 場周経路の規模への適合
- 無線の使用法
- 後方乱気流
- 航空交通管制指示と許可の了解と遵守
- 場周経路からの離脱要領
場周経路からの離脱要領
- 場周経路の離脱時の考慮事項
場周経路の離脱時の考慮事項
- 管制空港 / 非管制空港での出発方向
- カナダ航空規則 (CARs) 第602.96~97、100項とAIPカナダ RACの適用
- 管制圏における飛行要領
- 場周経路への会合要領
場周経路への会合要領
- 管制 / 非管制の飛行場 / 空港
- 他機を回避するための安全上の事前注意事項
- 管制圏内や通過する場合の飛行要領
- クラスA / B / C / D / E / F / G空域で運航する要件
- 特別VFRでの場周飛行の考慮事項
- 必要に応じ学生に適宜質問
「場周飛行(サーキット)」指導上の要点
- 場周飛行訓練の進行にしたがい、機体の取扱い精度や優れたエアマンシップの向上について指導
- 学生がすべての場周経路に関する詳細事項についてすぐに理解しつつ無線通信もできるようになることを期待せず、場周経路の飛行に十分な技量の習得までは、教官がすべての無線通信を実施すべきで、飛行の安全性は最優先
- 後方乱気流に関する危険性から、場周内での適切な間隔維持が重要であり、着陸許可を受け入れるだけでなく、着陸復行も視野に入れる正しい判断能力を学生に強調
- 学生が風上側に向首する最終旋回の判断が困難な場合には、判断時間を作るため、緩旋回として旋回率減少させ、必要に応じバンク角を増減させることを指導
- 場周経路は通常左旋回だが、右旋回パターンにも習熟が必要
不慣れな飛行場への運航を計画する場合、場周経路に関する情報をどこで確認できるかについて学生に確認 - 出力を用いた進入法 (パワーアプローチ) を通常行う場合には、教官は時折パワーオフ降下を実施させ、機体の滑空性能に関する学生の技量や判断力向上を考慮
- 管制空港と非管制空港で、場周経路の離脱会合要領が異なる場合があるため、この違いに関する学生の理解度を確認
- 不慣れな空港に進入する際、通過ポイントに関して、地域では当然のように使用する地名の「マクスウェインズ・マリーナの到着を通報せよ」といったように指示されることがあり、不慣れな場合にはすぐにATCにその旨通報するべきであると学生に指導
「場周飛行(サーキット)」の指導法と学生訓練
- 場周経路
教示事項
- 矩形場周経路における精確な飛行法と偏流修正
- 無線要領 / コクピット点検 / 見張り
- 状況が許せば次の事項について教示
状況次第で実施すべき教示事項
- 場周経路での間隔確保 / 速度 / 経路サイズ
- 次のようなパイロット判断について
場周経路内でパイロットが行うべき判断事項
- 後方乱気流の回避
- 着陸復行 (オーバーシュート)
- 航空交通管制指示や許可の了解と遵守
- 計器監視
- 場周経路の離脱会合要領:
場周経路の離脱会合に関する教示事項
- 修正要領
- 必要に応じ無線要領
- 該当時は、管制圏内もしくは管制圏通過の飛行要領について教示
- 特別有視界飛行方式 (スペシャルVFR)
特別有視界飛行方式 (スペシャルVFR)
状況が許せば、出発と到着要領について教示
課目18:進入と着陸
18 進入と着陸
「進入と着陸」の教育目的
- 各種条件下における機体の安全な着陸のために必要な技術
- 実際の条件下でどの種類の着陸を行うか有意義な判断を下す必要性
「進入と着陸」の動機づけ
- 必要に応じて実施
「進入と着陸」の重要予備知識
- 指定があればPOHに記載の情報を使用し、適切なタイミングで通常着陸の推奨技法について説明
説明事項
- 更に考慮すべきことについて説明
- 横風着陸
- 出力の使用による短距離 / 障害物回避のための進入や着陸 (定点着陸 / 精密な進入)
- 不整地着陸
- 障害物を越える着陸
- タッチ&ゴーとストップ&ゴー着陸
- POH内の着陸距離の性能表について説明し、密度高度と重量が着陸滑走長へ与える影響の判断法について指導
- 着陸滑走距離が次の要素によりどう影響し、それがなぜかを説明
説明事項
- 風 (正面風 / 横風成分表の使用)
- 僅かな変動風や背面風
- 上昇 / 降下勾配
- 最大離陸重量
- 硬さ / 泥 / 草 / 砂礫 / 氷雪などの表面の種類
- 濡れ / 乾燥 / 泥 / 氷雪などの表面状況
- 濡れた滑走路とハイドロプレーニング現象
- 密度高度
- 次の事項について説明
説明事項
- 速度の監視と制御を実施しつつ、接地に向けたパワーオフ / オンの進入要領
- 地上の視覚情報を参照し、アンダーシュートとオーバーシュートを認識
- 前脚機における次の事項について説明
説明事項
- 着陸時の衝撃から前脚を保護するためのエアマンシップの事前注意事項
- ホイールバローイング現象
- 尾輪機における次の事項について説明
説明事項
- グラウンドループ現象に関する説明 / 原因 / 予防策
- 尾輪を確実に接地させておくなどの方向管制に関する考慮事項
- 前方の視認性が低下することによる事前注意事項
- 次の事項について説明
説明事項
- 大型機の後方に着陸する際の考慮事項
大型機の後方に着陸する際の考慮事項
- 間隔の確保
- 接地点と後方乱気流による考慮事項
- パイロットの着陸許可断念要領と時期
- 次の事項に関する着陸復行法
着陸復行法
- 出力 (姿勢 / キャブヒート)
- フラップの格納
- 滑走路に関連した飛行 (上昇経路)
- ウインドシアや乱気流など、最終進入経路におけるフラップと風の影響
- 次のような事項に関連するエアマンシップ
発揮すべきエアマンシップ
- 滑走路の離脱ポイント (高速離脱)
- 有効滑走路のクリア
- 着陸後点検
- 必要に応じ地上滑走許可
- 勾配の上下や通常使用滑走路と異なる幅の滑走路への着陸進入時の目視的錯覚
- 計器表示
計器表示
- 進入中の速度と高度の監視
- 必要に応じCASからIASへの変換
- 必要に応じ学生に適宜質問
「進入と着陸」指導上の要点
- 事故の統計によると航空事故の多くは着陸関連であると言われており、着陸の状況における事故につながる可能性を検討し、対処する能力の確保が不可欠
- 風 / 地表面状態 / 障害物 / 乱気流 / 他機の後流などの影響について、着陸前の状況については学生に拡大して考慮させ、すべての関連事項を考慮して着陸が安全かどうかを判断するよう指導
進入続行を決意した場合は、問題発生してから対処するのでなく、使用する進入着陸の種類を事前に選択する必要あり - 着陸滑走が停止するまでは着陸は終了していないため、管制塔との通信によって注意が分散しないよう、機体を停止するか、無線使用前に地上滑走するよう指導
- 着陸後点検は、滑走路から十分に離れ、可能な場合には誘導路の位置線を越え、機体を完全に停止させて実施することで、地上滑走中の事故やフラップと着陸装置レバーの誤操作などが回避可能
- 着陸は継続的な課題であり、他の学生が犯した間違いから学ぶことも大事
- 着陸中には、滑走路に対し前方だけでなく、垂直方向や可能な限り横方向の動きについても正しく理解できるよう、学生が十分前方を見ていることを確認
- 学生による自身の間違いの修正を許容すべきだが、自己完結するとそこから学ぶことはなくなってしまうため、制御を失ったり安全性が損なわれる可能性がある場合には、全部または一部のみでも操縦をとれるよう準備
- 「タッチ&ゴー」着陸は、学生が着陸滑走の最終段階を制御する上で妥当な程度の習熟に至った場合にのみ指導
- 出力設定の変更による出力進入を修正する必要がある場合は、わずかな変更で十分になるよう、常に早期に修正することを推奨し、最小限の出力変動のみ必要な進入を目指し努力するよう指導
- 長い滑走路に着陸する際、学生が精確な判断を行わなくても問題なく着陸できる場合があるが、事前決定した接地帯に着陸するよう指導 (接地点は通常、境界線上でないこと)
- 学生は必要に応じフラップを有効活用し降下角を急勾配化することができるが、実際の着陸におけるフラップの影響は重要な考慮事項であるため、場合によっては判断の訓練のため所定のフラップ設定で着陸するよう指示
- 必要なラウンドアウト (接地前の降下率減少操作) とそれに続く接地へのホールドオフのための機体の姿勢変化は、操縦桿の機械的な動きではなく、地面に対する視覚的参照によって判断する必要があり、学生が自身で判断ができるまで、教官は十分かつ一貫して教示
- 機首が大きく上がるバウンドを修正する際に、スロットルを正しく開けることが出来る学生もいますが、場合によっては緊張や混乱で操縦桿を前方に移動させすぎることがあるため、こうした操作は明らかに危険であり、注意深い監視が必要
- 最初のソロ前に学生の着陸に何ら問題がなかった場合には、あえて良くない着陸例を教示し、適切な回復操作を確実に実施できるよう指導
- フルフラップで進入後の着陸復行は、最初のソロ飛行の前に教示と訓練を実施
- 離陸 / 場周飛行 / 着陸の教示を行う間には、学生には適宜休憩を付与
- 前脚とラダーステアリング機能のある機体で横風着陸する場合、その修正に「横滑り」法を利用する際に多数の「ホイールバローイング」事故が発生しているため、ラダー操作により前輪をステアリングさせる機体では、前輪の接地直前には慎重なラダー操作が必要で、前輪の滑走路接地直前に、ラダーの中立化が必要
特に小型機において、偏流修正として「横滑り」法は、接地直前の方向修正を必要とせず目的の結果を達成できることから、多くのパイロットが好んで利用
「進入と着陸」の指導法と学生訓練
前脚機の着陸
通常離陸に関する教示事項
- 着陸進入経路に会合
- フラップや横滑りを活用し所望の最終降下角を確立
- パワーオン / パワーオフ進入
- レベルオフ / フレア (引き起こし)
- 着陸時には正面を見る
- 待つ (ホールドオフ) 操縦反応の減少
- 着陸姿勢
- 接地とホイールバローイング防止のための機首上げ姿勢
- 着陸滑走とエレベーター操作を緩め機首下げ
- 直進の維持
横風着陸に関する教示事項
- 最終進入 (風上方向へのクラブ) / 出力の使用
- 必要に応じ推奨フラップの使用
- 偏流対策で対地約200ftで風上側翼を下げる
- 接地待機中 (ホールドオフ) の偏流修正
- 風上側主脚からの接地
- 接地時の姿勢と方向管制によるホイールバローイング回避
- 着陸滑走時のエルロンの水平維持と方向管制
尾輪機の着陸
通常着陸に関する教示事項
- 前輪機の通常着陸に関する教示事項1~7と共通
- 3点着陸姿勢
- 接地時の直進維持、操縦桿を最後方に保持にグラウンドループ現象の回避
- 着陸完了と機体停止までの最大限の注意を継続
横風着陸に関する教示事項
- 前輪機の横風着陸に関する教示事項1~5と共通
- 風上側の主脚と尾輪で接地し方向管制
- エルロン制御の減少ともう一方の主脚の接地
- 着陸滑走中のエルロンによる水平維持と方向管制
脚着陸に関する教示事項
- 出力を使用し適切な速度で進入
- 地面付近で水平飛行
- 主脚の高度で接地
- 主脚の接地時にエレベーターの前方操作
- 主脚を滑走路上にしっかりと維持
- 方向管制
- エレベーター制御の減少と尾輪の接地
- 尾輪の接地をしっかりと維持
横風での脚着陸に関する教示事項
- 最終進入要領は尾輪機の通常着陸の1~6と共通
- エルロン制御を減少させもう一方の主脚を滑走路上に接地
- 直進を維持
- エレベーター制御を減少させ尾輪を滑走路上に接地
- 尾輪の接地をしっかりと維持
- 着陸滑走路中、エルロンで翼を水平に維持
前脚機/尾輪式機共通事項
障害物を越える進入と着陸
- POHで示される推奨速度での進入と必要に応じフラップ使用
- 所望の速度と正確な降下角を維持するため姿勢/出力の使用
- 操縦の応答
- 着陸前のフレア完了に伴う出力減少
- 横風や不整地など状況に応じた着陸
- 正確な接地点の考慮
短距離着陸
- POHで示される推奨速度での進入と必要に応じフラップ使用
- 障害物のない場合の降下角と出力使用
- 障害物を越える進入の場合は上記「障害物を越える進入と着陸」参照
- 接地後のブレーキ使用
- 接地後のフラップ使用と安全配慮
不整地着陸の教示事項と特に気にすべきこと
- 最小速度での接地
- 着陸滑走時できるだけ長く機首上げ姿勢の維持 (尾輪機は操縦桿を最後方に保持)
- ブレーキ使用前の事前注意
着陸復行
- 進入から
- 着陸断念から
着陸を断念し復行する際の考慮事項
- 出力 / 姿勢 / キャブヒート (寒冷状況時)
- フラップの格納
- 滑走路に関連した飛行 (上昇経路)
タッチ&ゴーとストップ&ゴー着陸の考慮事項
- 方向管制
- 操縦補助の使用法
- 十分な離陸滑走残距離の重要性
着陸後の要領
- 滑走路からの離脱
- 着陸後点検の完了
- 必要に応じ地上滑走許可の受領
- 次のような状況で安全確保できれば着陸距離への影響について教示
各種条件の着陸距離に関する教示事項
- 背面風
- 草地や濡れ / 乾燥した表面
- 滑走路の勾配
- 最大着陸重量
課目19:初単独飛行
19 初単独飛行
「初単独飛行」の教育目的
- 学生の初単独飛行が安全に実施できる準備ができていることを確認
「初単独飛行」の動機づけ
- 必要に応じて実施
「初単独飛行」の重要予備知識
- この課目に関する個別の地上訓練は不要だが、他の課目に関する地上指導中に最初の単独飛行で遭遇し得る状況について時折言及することは有意義
学生の不安の助長は回避
「初単独飛行」指導上の要点
- 学生のソロ飛行準備が整ったら、ソロ飛行前のブリーフィングは簡潔にし、学生が飛行中に何をすべきかを確実に理解できるよう最小限の指導を実施
- 初ソロ飛行前の同乗飛行後は、続く飛行に十分な燃料を残すことが必要
また、注意散漫とならず最小限の注意のみで飛行させるためには、十分な日光 / 適切な天候と風 / 他機の飛行状況が必要 - 疲労を最小限とすべくソロ前の飛行は45分を超えないこと
- 学習能力は各人で異なるため、学生を初ソロ飛行に送る前に必要な同乗飛行教育の時数は、必ずしも教官の指導能力を反映するものではなく、学習進捗の少し遅い学生でも最終的には良いパイロットになることもある
ソロを早期に実施した学生が不安を抱えてしまうことは、学生自身にとって自信を喪失し不利益になることは当然として、もっと言えば教官にとっても問題 - 初ソロ飛行は、学生の飛行経歴上、決して忘れられることのない非常に重要なステップであり、個人的な祝福をして大事に扱うことはもちろん、「初ソロ飛行証明書」の発行など学校で行う伝統的な活動は、学生にとって大変有意義
- 初ソロ飛行の実施可能性を学生が意識すると、うまく行かずにその計画自体が遅れる原因となることがあるため、実際の初ソロ飛行直前までは、学生にその予定を伝えることは控えるべき
- 初ソロ飛行の前に、この「飛行教官ガイド」の第3部の訓練計画1~10に指定される全課目を学生が完了していることを確認
- 通常飛行要領だけでなく、次に示すような場周経路で起こり得るすべての緊急事態に対処できる能力が必要
初ソロ飛行前に確認すべき場周経路飛行法
- 滑走路表面や風の状況に対する適切な技法を使用し、安全に離陸
- 該当時は、ATCの許可や指示を確認して遵守
- 他機からの安全間隔を維持しつつ、正確な経路を飛行
- 適切な進入プロファイルからの逸脱を認識した場合には修正し、正確な進入を実施
- 正しい着陸復行要領を使用
- 滑走路表面や風の状況に対する適切な技法を使用し、所定の接地帯内に着陸
- ポーポイズ / バルーニング / バウンスなど誤判断による着陸から回復
- エンジン故障時、場周経路の任意の場所から不時着陸を実施
- 短い離陸滑走距離や上昇率の増加など、機体性能の変化を予測するよう学生に指導
- 学生は次回のソロ飛行前には、通常再度の同乗飛行確認が必要
「初単独飛行」の指導法と学生訓練
- 状況次第では学生が必要な技量を有していると認められるまで、数回の同乗での場周飛行訓練を実施
- 該当時は、管制塔に通報
- 学生を初ソロ飛行に生徒を送る
課目20:低空飛行での偏流による錯覚
20 低空飛行での偏流による錯覚
「低空飛行での偏流による錯覚」の教育目的
- 偏流により生じる錯覚に対し旋回中に調和のとれた飛行を維持することで対処
- 低高度での操縦中に偏流の影響を修正することで所望の航跡を維持
「低空飛行での偏流による錯覚」の動機づけ
- 必要に応じて実施
「低空飛行での偏流による錯覚」の重要予備知識
- 次の事項について説明
低空飛行での偏流による錯覚に関する説明事項
- 強風時の低高度飛行における各種錯覚とその影響
強風時の低高度飛行における各種錯覚とその影響
- 正面風で対地速度減少時の減速錯覚
- 背面風で対地速度増加時の増速錯覚
- 背面風側から旋回時の外滑り (スキッド) 錯覚
- 正面風側から旋回時の内滑り (スリップ) 錯覚
- 低高度の場周飛行 / 低シーリング状態での進入 / 強風に関連した低高度旋回など、錯覚により潜在的な危険飛行状態を生じさせる可能性のある状況
- 次の事項について事前注意
事前注意事項
- 正面方向をよく確認
- 安全速度を維持
- 偽の錯覚の中で調和のとれた飛行を維持し精確に旋回
- 良好な見張りと計器のクロスチェックを維持
- 安全高度を維持 / 地域規則を遵守
- 住人や家畜を脅かしたり迷惑を回避
- 急激な旋回をしない
- 低高度での飛行に十分な空間を維持
- 必要に応じ学生に適宜質問
「低空飛行での偏流による錯覚」指導上の要点
- 本課目では、適切な見張りを実施しつつ飛行空域で適用される制約を遵守した最低高度を飛行し、低高度飛行において内在する危険性について指導
- 偏流の影響が分かりやすいように、強風のために単独飛行が中止になったような強風が吹く日を選定して実施するが理想的
- 錯覚により不精確で潜在的に危険となる飛行につながる可能性があるため、学生はそれらを完全に理解し、通常より低い高度における飛行で適切な訓練を実施
- 偏流の存在を理解し、それがなくなるよう方位を調整して飛行することで、風向を判断させる方法を指導するが、それ自体は簡単でないものの、良い慣習となる
- 強風下で不時着陸や予防着陸を行うと、偏流による生ずる錯覚で急速に危険な状況となるため、特にベース旋回から最終進入に入る際に学生がラダー操作で旋回率を増加させようとした場合には指導が必要
- 市街地上空の飛行に関するカナダ航空規則 (CARs) を実際に適用する良い機会となる
- この課目を効果的に実施するためには、推奨飛行要領を示した下図を参照
- 場周経路や不時着陸および予防着陸要領を指導する際は、強風条件を利用し、この課目で学んだ原則を適用させるよう作為
「低空飛行での偏流による錯覚」の指導法と学生訓練
- 低高度において適切な空域で次の事項を実施
低高度における偏流による錯覚の指導内容
- 風上方向に飛行し、対地速度の低下に注目
- 風下方向に旋回し、対地速度の増加に注目
- 風下側から風上側への180°転回の際に、明らかな外滑り (スキッド) に注目し、調和のとれた飛行を維持し、旋回中に予定飛行経路に対する風による偏流の影響に注目
- 引き続いて実施する風上側から風下側への180°転回の際に、明らかな内滑り (スリップ) 注目し、調和のとれた飛行を維持し、旋回中に予定飛行経路に対する風による偏流の影響に注目
- 適切な円形経路を実現するには、バンク角の変更が必要であり、360°転回を実施する際の明らかな内滑り (スリップ) と外滑り (スキッド) に注目
- この課目を実場面でどう適用するかを示す推奨の教示法については、「指導上の要点」の項を参照
- この課目で学習した原理を応用した強風下における予防着陸要領について教示
- 必要に応じフラップを使用して上記項目を反復し、より良い制御法と視認性の向上について教示
※ 本課目は左右両方向の旋回で実施
課目21:予防着陸
21 予防着陸
「予防着陸」の教育目的
- 地表面の状態が不明な飛行場 / 不慣れな飛行場や着陸地 / 不整地表面への着陸に備え、したがうべき要領について学生に指導
「予防着陸」の動機づけ
- 必要に応じて実施
「予防着陸」の重要予備知識
- 予防着陸につながる可能性のある状況について説明
予防着陸につながる可能性のある状況
- 飛行場表面の状況 / 不慣れな飛行場や着陸地
- 燃料不足
- 天候悪化
- 機位喪失
- 日没など
- その他 (病気 / 故障等)
- 利用可能な最良の着陸表面を選択するための考慮事項について話し合い
利用可能な最良の着陸表面を選択するための考慮事項
- 風向と風速
- 適した着陸地の捜索要領
- 地表面状況の把握の手掛かり
- 進入時の障害物
- 最良の着陸降下経路
- 道路への接近や電話
- 離陸時の十分な滑走長
- 着陸復行への配慮
- 着陸地の上空確認に関する考慮事項を説明
上空から着陸地を確認する際の考慮事項
- 適切なコクピット点検
- 場周経路や着陸地確認の飛行形態と速度
- 地上の家畜や人財への迷惑回避
- 着陸経路決定要領 / 低視程状況での方位計と旋回点の使用
- 地形 / 視程 / 障害物などの状況に応じた場周経路と高度の点検
- 偏流の錯覚に関連する配慮 (課目20関連)
- 可能であれば無線通信要領
- 進入と着陸法 / 着陸形態 / 速度選定と制御
- 最終着陸点検
- 着陸フレア後の出力解除
- 訓練進入後の着陸復行への配慮
- 森林部や水上への着陸時の考慮事項について話し合い
- 飛行場で場周訓練する際の低空飛行や、該当する場周飛行要領の準拠に必要となるすべてのカナダ航空規則 (CARs) 関連事項の確認が必要
- 必要に応じ説明事項に関する要素について学生に適宜質問し明確化
「予防着陸」指導上の要点
- 基本的に予防着陸は、次の2つのカテゴリーに分類可能
予防着陸の2カテゴリー
- 不慣れな飛行場や着陸地における事前計画した着陸や、状態が不明な場合、もしくはその両方という場合
- 天候悪化 / 日没等による暗闇 / 燃料不足などにより、不整地な地表面に着陸する必要がある場合
- 気象条件や雲底高度などの詳細の想定について学生に絵を描くなどして状況付与し、一度開始後したら条件を変えずに現実的な条件で実施
飛行場周辺で実施する場合には、滑走路からの高度や距離などは、他機の状況や市街地など飛行安全上の考慮事項などが制限要因となる場合を除き、想定の気象条件と一致させて実施
滑走路が長い場合は、事前に使用部分を明確に定義して実施
接地点は通常、滑走路の実際のスレッシュホールドは使用しないこと - 確認飛行と着陸に向けた最終進入を実施する際、通常の場周経路と進入との違いについては、明言しておくべき
確認飛行の際に使用する速度は、POHにて規定される速度以上とし、指定がない場合には、通常の進入速度以上とする
飛行形態 / 速度 / 高度は、機体の安全飛行上、最小限の注意ですむよう選定することで意図した進入と着陸経路の効果的な確認に時間を割くことが出来る - 予防着陸における最重要点は、早期の決断であり、それにより、利用可能で最も良い着陸地の選定に十分な時間を確保
- 非常に有益な訓練機会であるため、進入中の速度管制の重要性について強調
- 進入中に着陸について考えすぎることが原因となる事故が多く、まずは適切な出力使用 / 速度監視 / 適切なエアマンシップの発揮により安全な接地を行うよう進入に集中するよう学生に指導
- 50ft以上の高度では明確でない場合もあるが、予防着陸の最終段階で、機体の沈みが速すぎるとに感じる可能性があることを指導
また、接地の前後で出力を足して、接地時の衝撃を緩和するよう準備することで、地面近くのウインドシアの影響緩和にも役立つ - 教官は往々にして経験豊富なので、進入時の障害物を通過後にスロットルを閉じ、機首を大幅に下げる技量を有していても、経験の浅いほとんどのパイロットは一貫して低速進入時に急降下角となる状況で、安全な着陸フレアを実施するのに必要な判断力を有しておらず、地表面付近での乱気流やウィンドシアによって状況が悪化する可能性もあるという危険性について考慮
接地点を選定後は、障害物回避のための進入経路を設定し、着陸フレアが十分な高さで完了するまでは最終進入の出力を残しておくことでフレアや接地の衝撃を緩和する必要がある場合に既に「スプールアップ」したエンジンでは追加出力が容易に利用可能
正しい進入速度を維持すれば、スロットルを閉じた際に「フロート」がほとんど発生しないため、経験を積むにつれて、進入手順を変えることは可能だが、着陸表面が最小限のような場合でない限り、障害物を通過した後にスロットルを閉じる利点はほとんどない - 予防着陸を訓練中に、偏流による錯覚が引き起こす低高度での旋回中に起こり得る危険な状況について学生に完全に認識させる
- ラダーで旋回率を上げようとするのは、特に強い横風の場合、ベースレグから最終進入旋回で現れる可能性が高くなるため、低速度 / 低高度での横滑りの危険性を学生に強調
「予防着陸」の指導法と学生訓練
- 次のような想定条件について概説
概説する想定状況
- 不慣れな飛行場や着陸地への着陸 / 不明な表面状態 / その両方など非緊急事態
- 雲底や視程悪化など天候状況 / 残燃料損失など緊急事態
- 風向風速の決定 (適した着陸地 / 最良の着陸滑走路 / 復行経路の選定)
- 適切な操縦形態と速度を設定し、次の事項を教示
教示事項
- 安全上の事前注意
- 適切なコクピット点検や乗客ブリーフィングの実施
- 可能であれば無線通信要領
- 着陸進入経路の選定
- 目視を継続できる効果的な着陸表面の点検のための場周経路サイズと高度
- 方位計など場周経路と最終進入経路への会合のための補助器具の選定
- 着陸地の確認の実施
- 着陸復行 (オーバーシュート) し選定地へ着陸するための場周進入し、次の事項を教示
教示事項
- 安全速度など安全上の事前注意
- 着陸点検
- 場周飛行や進入時の方向確認器具の使用
- 最終進入要領 (速度 / フラップ)
- 着陸要領 (着陸表面の特定地点への接地と着陸フレア後の出力解除)
- 学習した原理 / 着陸地選定 / 承認された要領について学生に訓練機会を付与
課目22:不時着陸
22 不時着陸
「不時着陸」の教育目的
- 出力故障が発生した場合にとる要領を指導すること
「不時着陸」の動機づけ
- 必要に応じて実施
「不時着陸」の重要予備知識
- 次の事項について説明
不時着陸の必要性に関する説明事項
- 燃料欠乏 (燃料タンクベント閉塞 / 切替器 / プライマーアンロック)
- 潤滑油欠乏
- 機械的不具合
- キャブレター着氷
- エンジン空気取入口の閉塞
- その他 (差し迫る出力故障)
- エンジン故障時にとるべき行動について次のように概説
エンジン故障時にとるべき行動の概説事項
- 正しい降下姿勢とトリム設定で機体を制御
- キャブヒートの使用 (前項と同時)
- 着陸地選定 (風 / 高度 / 地表面状況)
- 進入の計画 / キーポイントの選定
- キーポイントに向首しつつ出力喪失時の点検の実施 (燃料 / 燃料ポンプ/ プライマー / キャブヒート / 混合器 / スイッチなど) と遭難通信の実施 (無線機とトランスポンダー)
- 安全点検と乗客ブリーフィング(危険物の除去と緩め / シートベルト / 脱出口 / 燃料 / スイッチ / 個人物件など)
- 最終進入の考慮
- 接地の計画
- ブレーキの使用と着陸滑走時のその他の考慮事項 (必要に応じ制御によるグラウンドループ)
- 必要に応じ課目の主要要素を学生に適宜質問し明確化
「不時着陸」指導上の要点
「キー」とは
- 「キー」とは、不時着陸のため選定する着陸地から通常使用するベースレグの距離に近い位置把握するために選定する顕著な地形物標と定義され、この場合のベースレグ距離とは、機体の滑空範囲内に十分に収まっている必要あり
- キーポイントとは、高度損失後に適切な進入角を確立するまで、着陸地からの距離を維持するために選定される参照ポイントで、これにより過剰なバンク角での旋回や、着陸地の境界線以降で過度に高速となり得る状況を回避可能
- キーポイントは、風の状態を考慮し、滑空進入で行う通常のベースレグとほぼ同距離となる着陸地の延長線上に設定
- 不十分なエアマンシップの発揮やエンジンの取り扱いが不十分であるために、訓練で行う不時着陸が実際の状況になることは決してあってはならないため、学生は降下中に適切な間隔でエンジンクリアリングを実施し、優れたエアマンシップを発揮
出力を残したまま、フラップを使用し通常の降下角や速度を確立する方法については許容 - 場周経路内 / 着陸復行中 / 訓練空域への進出帰投時など、あらゆる機会で訓練が可能
- 通常、進入用にフラップを展張以降は最終進入において500ft以下まで降下させる必要はほとんどないが、学生が常にアンダー / オーバーシュートする場合には、条件が許せばより低高度への進入継続をさせ、進入の失敗を証明
- 飛行場において交通状況が許せば、場周経路内の適切な位置でスロットルを閉じ、接地点に向けた実際の進入で学生に訓練機会を付与
こうした「実際の」訓練を通じ、進入と着陸の判断が大幅に向上するだけでなく、他にも同様の方法で許可された着陸地を使用することで、この課目に対する多様性や興味へに発展 - 最終進入開始前に高度を下げている間は、すべての旋回で通常着陸地方向に向かわせる必要があり、パワーオフ降下訓練で得た経験を活用して、接地点を確認する視覚的兆候を認識するように学生に指導
- 本課目は、学習要素を適用する絶好の機会であり、学生が不時着陸の各種段階を最初からすべて実施できることに期待してはならず、操作を複雑にしすぎると適切な学習や進捗の妨げとなるおそれがあり、上空指導の(1)~(3)で指摘されるよう学習は進歩的であることを目指す
学生が不時着陸に向けた進入法を学ぶ間、出力損失点検や安全点検は教官によって適切な順序で実施し、その後に学生の技量の上達が認められたならばこうした点検事項も徐々に実施 - 訓練空域までの往復の移動時間を有効に活用し、適切な着陸地やキーポイントの選定、出力損失点検や安全点検の事前確認を実施
- 離陸中に発生する想定のエンジン故障は、不要な懸念を避けるため、事前に航空管制官に通報
- 地上準備指導においては、黒板に着陸地を描き、高度を指定し、実際の訓練でたどる飛行経路の航跡について学生に描いて説明させる
- 進入は毎回異なる地点から実施する必要があり、それは正確な地点に正確な高度で到達することを最も簡単な要領で飛行できるよう教えるためであり、その方法が状況によって異なることを学生に指導
- 着陸地に向け降下中ベースレグで調整が必要な場合には、横滑りの実施が有効だが、着陸地との距離が急激に詰まり、高度が急速に失われるため、これを行う場合は注意が必要
横滑りの時間が長すぎると、アンダーシュート (着陸地への不達) が発生する可能性あり
確実に着陸地に入れる場合には、フラップ / 横滑り / 滑り旋回を利用して、余剰高度分を処理し、選定した着陸面の3分の1までの地点で接地できることを実証 - 不時着陸の訓練は、着陸地からの距離や機体の滑空距離を考慮する降下訓練の一部であり、場周経路の飛行で学んだ判断と変わらず、決して目新しい課目ではないことを強調
場周経路内の交通量が多く継続的なパワーアシスト進入が必要な飛行場にて訓練する学生は、この分野により重点を置く必要があり、パワーオフ進入着陸を実践できる機会は有効に利用
注意事項
- 一部の航空機には燃焼式の暖房装置が装備されており、着陸時に機体の構造的な故障に見舞われた場合に火災に至る危険性があるため、こうした暖房装置は、安全点検時にオフにすることが不可欠
「不時着陸」の指導法と学生訓練
- 最初の対地約3,000ftからの教示進入では、降下のためにスロットルを閉じる前に出力損失点検 / 安全点検 / 無線通信要領について教示し、学生に訓練機会を付与
学生がこれらの分野にかなり習熟していれば、次の事項を実施
学生の習熟が認められた場合の訓練事項
- 風向を示す
- 着陸地と使用するキーポイントを指し示し、風向と地表面状況から選定理由を説明
- 出力故障を模擬
- 同時に正しい滑空姿勢としトリム設定 / キャブヒートを使用
- キーポイントに向首
- 出力喪失時点検 / 安全点検 / 無線要領について言及
- 進入の計画 / エンジンクリアリング(暖機)要領を簡潔に説明
- 次の事項について強調
強調事項
- 正しい速度と姿勢により一定降下角にて降下
- 着陸地に向けたダウンウィンドの終端付近で高度を下げながら、最後のベースレグにおけるキーポイントは、偏流修正法やクラブ法で滑空進入する場合でも、通常飛行する飛行場でのベースレグ飛行法と同様であり、実際の風を考慮して着陸地境界までの正しい距離を把握
- 一定降下角での降下中に接地点の視覚的表示を認識
- 接地点に向けエイミングし、着陸地の1/3の地点までに着陸
- 利用可能な着陸地を最大限に活用するためのフラップ / 横滑り / 滑り旋回の活用など最終進入時の考慮事項
- 着陸復行方法について教示
- 数回の進入において、対地約3,000ftから学生の訓練機会を付与
進入時に学生に与える訓練内容
- 簡単な状況から始め、より複雑な状況に進むよう、学生は進入を飛行
- 各訓練進入中に必要に応じ指導
- 監督下で学生が数回の進入を成功させた後、次の事項を実施
監督下での訓練後に学生に与える訓練内容
- 各種高度において事前警告なしで出力損失を模擬
- 進入実施中、着陸地とキーポイントの適切な選定と適切な点検の実施について強調
- 精度向上を追求
- オーバーシュート / 離陸 / 場周経路内などでの出力損失状況を模擬
- 安全性を決して妥協しない
課目23:パイロット航法
23 パイロット航法
「パイロット航法」の教育目的
- 安全な場外飛行の準備と実施ができるように学生に指導
「パイロット航法」の動機づけ
- 必要に応じて実施
「パイロット航法」の重要予備知識
- 次の目的で使用する要領について話し合い
パイロット航法における各種要領
- 気象通報や予報を取得し、着陸滑走路における横風の可能性など、予定飛行と目的飛行場に関する適切な情報を確認
- 適切な針路を選定
- 予定の航跡に沿って、次のような考え得る危険性について特定
予定航跡上の考え得る危険性
- 管制塔 (タワー)
- 危険空域 等
- 航空図を準備し、航跡線 / 距離測定 / 10°偏流線 / 距離目盛などを記載
- エンルート上で緊急時に使用できる代替飛行場を選定
- エンルートの針路と所要時間を算出
- 航法飛行計画フォームとフライトログを準備し、カナダ運輸省 (TC) 様式の飛行計画または飛行旅程を提出
- 次のような事項について概説
パイロット航法に関する概説事項
- 針路の設定要領
針路設定要領
- 直上通過 / 既知の地点から方位上昇
- 方位計をマグコンパスに設定する際の事前注意事項
- 針路設定直前の方位計確認の必要性 / エンルートでの定期的なリセット
- 機体が予定針路上にあることを視覚的に確認する必要性
- 航空図使用による針路決定要領
- 10°偏流線などによる航跡誤差の飛行中の修正 / 次のチェックポイントの到着予定時刻 (ETA) の修正や確認に使用されるパイロット航法技術
- フライトログに飛行進捗について記載する要領
- 代替飛行場に目的地変更 / 出発飛行場へ帰投 / 代替経路を飛行する要領
- 必要に応じ、航法無線援助機器の基本的な使用
- 低高度もしくは視程不良時の航法に関する考慮事項
- DFステアの指示を要求する方法など、機位不明時もしくは喪失時に実施する操作
- 機体ドキュメントの有効性とジャーニーログを点検し、予定飛行に十分な時間が残っていることを確認
「パイロット航法」指導上の要点
航法に関する用語
- ICAO標準の定義に準拠し、本ガイド中では「コース」や「ルート」という単語は省略
- 過去には「コースを設定」「コースを変更」などの用語が使われていたが、教官は学生に適切な用語で指導
- 「針路」は「真」「磁気」「コンパス」と組み合わせられ、「予定」または「実績」は「航跡」に付加可能
- 航法訓練中のある時点で、低高度でパイロット航法訓練を行い、エンルート上で予定方位もしくは修正方位の維持の重要性を強調
- 低高度の航法訓練中および訓練空域への往復飛行中、学生は上空で正確なプロットを行うことは特に求められていないが、航跡やETAの修正の「経験則」的な略算は必要
- 使用する航法飛行計画フォームやフライトログには、少なくとも下の例の様式やログ内に含まれるすべての情報を含むこと
- 本課目は、次のような多くの良好なエアマンシップの発揮と飛行要領について指導する絶好の機会
発揮するエアマンシップと各種要領
- 実用上の重量平衡計算
- 空港登録の使用
- エンルートでの燃料給油要領
- 航空図を使用した方向決定
- エンルートの天候と飛行場情報
- 予想位置サークルの常時設定におけるDR航法の有用性
- カナダ飛行補足情報誌の使用
- 飛行計画 / 飛行旅程の提出と処理
- 単独場外飛行訓練は、訓練コース全体で学生が蓄積した技量や経験の集大成となるため、ソロを承認する前に、この課目を正常に完了するために必要な技量を有していることを自身にも学生にも確認し、学生が支援を受けることなく適切な飛行前計画と準備を実施できることを確認
- 天候が適切 / 機体が使用可能 / 予定飛行に十分な燃料が搭載 / 飛行中に発生する可能性のある状況における正しい対処要領について学生が徹底的に理解していることを細心の注意をもって確認
- 単独場外飛行の許可を受ける前に、学生は次のことができることを証明
単独での場外飛行実施前に確認すべき項目
- 体系的なパイロット航法技術を適用した航跡の維持 / 回復に必要な方位修正
- 適切な精度の針路で飛行
- 精確で合理的な次のチェックポイントの到着時間の算出
- 計画経路から予定外の迂回
- 飛行中にフライトログに、修正対地速度 / ETA / 新針路 / チェックポイント到着時間を記録 (管制圏や位置確認などを含む飛行の航法飛行計画フォームと飛行ログのサンプルは下を参照)
針路を決定するために必要なコンパス方位を段階的に算出できるよう、各種の列を設定
位置推定 / 対地速度確認 / ETAなどを機上で記載できるだけの余白を設定
地上で記載できる項目は作成しておき、上空では必要なものだけを記載
飛行計画は複雑化しないよう配慮
場外飛行を完了できる準備と飛行に必要な基本的事実のみ学生に指導
- 学生訓練中の様々な機会において、訓練空域の出入域 / 針路の設定 / 針路の維持 / 地図判読 / 航跡の確立 / 対地速度の決定などを段階的に教示することで、この課目の教示と単独訓練がさらに進行し、有意義で楽しめるものとなる
「パイロット航法」の指導法と学生訓練
- 学生に次のような事項について指導
指導事項
- 「設定向首点」上で必要な針路を確立し、方位計を確認し、飛行ログに向首開始時刻を記入 / 出発した方位角について目視確認
- 最初の旋回点と目的地におけるETAを算出
- 正確な針路維持の重要性について認識
- 一定時間経過後、適切なピンポイントを特定し、10°偏流線を使用して「実航跡」を判定
- 必要な航跡に復帰するか維持するための針路を算出
- 次のチェックポイントでETAの確認または修正のために対地速度を算出
- 旋回点で必要な方位を設定し、ETAの修正、燃料量が十分であることを確認
- 倍角修正法を主に使用し、加えて開閉角修正法、目視修正法などを使用
- 針路を確立し、道路や河川など顕著な目視物標を活用して、場外飛行課目後の段階のある時点での予備力の考慮を含め、残燃料の範囲内で適切な代替飛行場に進む方法を確立
- 往復の航跡を暗算で計算
- 無線航法援助施設を利用し、飛ぶべき方位の決定や位置線を確認
- 予定のエンルート時間をコンパス針路を維持して飛行することの重要性に重点を置き、低高度もしくは視程低下時の航法に関する特別な考慮事項について教示
- 航空交通管制の支援を受けるための手順を含め、機位不明もしくは損失時にしたがう手順について教示
- 必要に応じ、飛行計画もしくは飛行旅程を事後処理
続きは②(3/3)へ