カナダのブリティッシュ・コロンビア州にある「ナショナル・ヒストリック・サイト」91ヵ所を、ジャンルごとに紹介しています。
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本記事では、行政施設・裁判所編として6ヵ所を紹介します。
行政施設
チリワック市庁舎(1984年登録)
1980年まで市庁舎として機能した古典主義のボザール様式の建築物です。
決して大きくはない建物ですが、鉄筋コンクリートで全体が建設されており、1930年以前に建造された市庁舎としてはカナダで唯一の存在となっています。
バンクーバーの建築家トーマス・フーパー氏によって設計され、1912年に建設されましたが、この時代のこうした建物では珍しい独特のクラシック風の柱廊をもつ外観が印象的です。チリワック市の行政や警察、法廷施設を兼ね備え、市民にとっての象徴的な建築物として役割を果たしました。
1980年に自治体の建物としての機能は停止されましたが、市内の重要な遺産であり、現在でもチリワック博物館として残されています。建物の裏側には、造園や戦争記念公園があり、市民にとって長年の重要な拠点となっています。
ヴィクトリア市庁舎(1977年登録)
カナダ西部において現存する第二次帝国様式の2階建て・レンガ造りの公共建築物です。
ヴィクトリアで最初の市庁舎として、1875年にイギリス人のジョン・ティーグ氏によって設計されました。建設は設計の3年後に開始され、12年の年月を3段階に分けて費やし、1890年に完成しました。外側の4方向に向けて2段階に勾配がきつくなる形状のマンサード式屋根や、中央の時計塔が印象的なデザインです。
建設費用を賄うため、市議会の会議室や市役所といった機能だけでなく、消防ホールや公共市場、刑務所、宿泊施設などのさまざまな機能を兼ね備えて使用されました。1963年には後部の建物が増築され、以降もヴィクトリア市庁舎は、地方自治体の本部として機能するだけでなく、象徴的建築としての魅力を維持しています。
カスロ市庁舎(1984年登録)
石積みやレンガで作られた基礎の上に立ち、寄棟屋根のある2階建ての木造骨組み構造の市庁舎で、BC州本土で現存する最古の市庁舎と言われています。
この1898年に建設された市庁舎は、19世紀末のクーテネイ地域にある鉱山を拠点として振興した町に建てられた市民施設の典型と言われ、ネルソン出身のエワート氏とケリー氏の運営する建設会社によって設計されました。
シンプルで安価な木枠の構造にもかかわらず、地域の住民に対し威厳や強さを感じさせ、存在感を誇りました。当時のカナダでは主流だった市庁舎の機能と同じく、議会室や市民事務所に加え、法廷や拘置所、消防署や警察署の機能などの様々な施設が併設されていました。
内装は、建築以来ほとんど手が加えられておらず、当時のまま現在も残されています。
裁判所
ロスランド裁判所(1980年登録)
急勾配の斜面に位置し、周囲を一望できる2階建ての淡い黄色のレンガ造りの建築物です。19世紀後半に建設された特徴的なカナダの裁判所のひとつです。
四隅すべてに突き出た塔部分が特徴的で、外観は多色で彩られています。内装も美しく保存されており、木製のパネル張りの法廷や、植民地時代の司法長官であったマシュー・ベイリー・ベグビー氏と植民地時代の知事を務めたジェームズ・ダグラス氏の紋章が飾られた巨大なステンドグラスの窓が特徴的です。
旧ヴィクトリア法廷(1981年登録)
ブリティッシュコロンビア州のために建設された、カナダとの合併後に州政府によって建設された最初の主要な公共建築物で、BC州の最高裁判所として使用されました。その後は海事博物館として使用されましたが、現在は大規模な修復が必要な状態で、使用されていない状態で残されています。
以前は、現在の州議会がある敷地の中に併設された植民地行政府の保有する建物の1つで法廷が開かれていましたが、1889年にこのヴィクトリア法廷が開設され、1962年まで使用されました。
長方形の3階建ての建物で、非対称でありながらバランスのとれた構成と平らな屋根を備えた建物は、2つの丸塔や丸いアーチ型の窓に加え、重厚な蛇腹状の2階と3階回部分と素朴な1階部分の対比が特徴的です。
1889年に完成して以降の7年間で、バンクーバーやニュー・ウェストミンスター、ヴァーノン、ナナイモにもレンガ造りや石造りの裁判所の建築が続けられました。
ただし、建築家のヘルマン・オットー・ティーデマン氏のスタイルとして、美しさよりも実用性を重視する機能的な建築を行ったことで、さまざまな様式の織り交ざった構成の折衷的な建築となりました。
旧バンクーバー法廷(1980年登録)
現在は、バンクーバー・アートギャラリーとして使用されているかつての法廷で、バンクーバーの成長期を象徴する建築です。
この記念碑的な石造りの法廷の建設は、1907年から1911年の間に行われました。地域で著名な建築家であるF. M.ラッテンベリー氏により設計され、古典的にインスピレーションを得たデザインをもってBC州の新たな大都市となっていくバンクーバーの中心部に、正義の象徴として長年存在してきました。
1914年までに、市は建物を拡大することとし、トーマス・フーパー氏の設計により建物の西側に2階建てで本館に接続される大きなウィングが追加されました。
当時、バンクーバーは人口の拡大傾向にありましたが、そのブームも景気後退によって収まりを見せたため、2回目の別館建設は実現しませんでした。
建物は半世紀近くにわたって市の司法の中心として機能してきましたが、1970年代までに建物は裁判所の要件への対応が困難になり、新しい施設の建設が必要となりました。
バンクーバーの建築家であるアーサー・エリクソン氏が、通りの向こう側に新たな法廷を設計し、旧法廷は最後の公判が1979年に行われると法廷としての機能に幕を閉じ、以降はアートギャラリーに改築されました。
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