飛行検定ガイドの位置付け
飛行実技検定ガイドは、自家用操縦士免許(PPL)や事業用操縦士免許(CPL)など各種免許や資格(Ratings)の発行に関する技能要件を満たすために必要な飛行実技検定に関しての情報が記載された手引きです。
民間航空検定官や派遣された検定官が使用する手法や手順、採点基準について記載されています。
飛行教官たちは、このガイドを活用して、受検予定の学生に所要の準備をさせます。
検定を受検する予定の学生も、このガイドに習熟しておき、訓練中にもここに記載される基準を常に意識しておく必要があります。ただし、このガイドの中で示されている基準は、あくまでも最低基準であることを常に念頭に置いておく必要があります。
当ブログ記事の活用のすすめ
ガイド自体は、検定前に必ず一度はすべて目を通しておくべきですが、文量も多く、例のごとく非常に読みにくい構成になっているので、当ブログの記事シリーズを活用して、まずは検定の直前にならない余裕のある時期に日本語でざっと目を通して概要を理解するような使い方をして頂ければいいかなと思います。
PPLとCPLの取得要件のまとめについては下記の記事へ
用語の定義
検定官(examiner)
航空法の4.3項で認められたパイロット検定官または飛行検定の実施にあたり認定された民間航空検定官
地上検定項目(ground items)
航空機の飛行前点検に先立って行われる計画や準備の作業
(Ground flight test itemsも同じ)
上空課目(air items)
飛行前点検、エンジン始動、エンジン試運転、地上滑走、緊急手順を含む航空機で行う作業や運動
(Air flight test itemsも同じ)
技量(proficiency)
熟練度や技術の高い度合いを有し、飛行中に合理的に与えられたどんな状況下でも航空機を扱えること
不整地(soft-field)
離着陸をする草地や非舗装地、柔らかい地面や粗い地面で、もしこの着陸技術がなければ滑走時に大きな抵抗を受ける可能性や降着装置を破損するリスクのあるところ
TTL
飛行業務担当のカナダ運輸省地域技術チーム
所望しない航空機の状態(undesired aircraft state)
安全に対する余裕が確実に減少してしまうような、操縦者による不適切な操作が行われたことによって発生した航空機の状態で、回復可能なもの
安定した進入法について (一般論)
最終進入時の正しいパスを飛行するとは、以下のような状態であると示されます。
VFRでの安定した最終進入
- ブリーフィングとチェックリストが完了していること
- 航空機がその時の風と滑走路状況に応じた着陸のための適切な形態になっていること
- 適切なパワーセッティングが行われていること
- 最大降下率が1000ft/m以内であること
- 速度が目標速度の+10kt~-5kt以内であること
- 大きな変化の不要な方向管制と機首位置管制ができていること
- 対地200ftまでの時点で安定していること(多発機のガイドでは対地500ft)
IFRでの安定した最終進入
上記のVFR時の状態に加え、
- ILSまたはLPVアプローチでは、横方向及びグライドスロープ/進入角に対し½スケール以内の誤差であること
- LNAV/VNAVアプローチでは、横方向及び進入角に対し½スケール以内の誤差であること
- 速度が目標速度の+20kt~-0kt以内であること
- IMCでは対地1000ftまでに、VMCでは対地500ftまでに安定していること
航空機が1000ftまでに安定していても、その後に操作や飛行状況により不安定になる場合もあるため、検定官は評価の際にそうした事態も考慮する。
対地200ftまでに安定しなければ着陸復行(オーバーシュート)を行うこと。
(多発機とIFRのガイドでは、「上記の状況にならなければ」)
検定の準備
各種免許等の発行に向けた飛行検定や再検定を申請するため、カナダ航空法の第421.14項の要件を満たし、受検者は以下を提出する。
検定官に提出するもの
- 身分確認用の署名付き写真証明
- 有効な許可証、免許証または締約国で発行された外国の免許証
- 適切なカテゴリーの航空身体適性を有している証明
(保有していれば上記3件を航空書類用ブックレット(ADB)で証明) - 検定の完了日から30日以内に作成された有効な飛行教育証明を有する教官に署名された推薦書で次の内容を含むもの
教官による推薦書に含まれる事項
- 飛行訓練教範(FTM)と飛行教官ガイドの次に示す全課目の訓練が完了していること
該当課目
PPL:課目1~24、29、30(課目13も含む)
CPL:課目1~25、29、30
- すべての課目に対する見極め検定が完了していること
- 免許発行のための飛行検定を受検するのに十分なレベルに達していると認められること
- 教官が受検者を検定の実施に推薦していること
CPLの場合
- 免許発行に必要な200時間の総飛行時間の75%以上を取得していることの証明
- 筆記試験に合格していることの証明
- 次の内容を証明する飛行教官からの推薦書(統合コースの場合は不要)
教官による推薦書に含まれる事項
- 筆記試験で不足していたと認められる科目の復習を実施したこと
- フィードバックレポートが実施されたこと
- 受検者がCPL取得に必要な知識に関する基準を満たしていること
- この内容は、上記の推薦書に含めて良いが、それぞれについて別の署名が必要
計器飛行証明の場合
- 24ヵ月以内に筆記試験(INRAT)に合格したことの証明
部分再検定の準備
検定で不合格となった場合には、不合格の日から30日以内に再検定が行われれば、部分再検定となる。部分再検定の申請にあたり、次を提出する。
部分再検定で提出するもの
通常の検定と同じもの
- 身分確認用の署名付き写真の提示
- 有効な許可証、免許証または締約国で発行された外国の免許証
- 適切なカテゴリーの航空身体適性を有している証明
(保有していれば上記3件を航空書類用ブックレット(ADB)で証明)
- 前回の検定の飛行検定報告書のコピー
- 次の内容を含む飛行教育証明を保有する教官に署名された推薦書
教官による推薦書に含まれる事項
- 受検者が失格した課目に対する追加の補備訓練を受けたこと
- 受検者が合格できることを認められること
- 教官が受検者を再検定に推薦していること
教官による推薦書
推薦書の要件
- 推薦書には、飛行検定の30日前までに有効な飛行教育証明を保有する教官が署名し、日付を記入する必要がある。
- クラス4の飛行教官が推薦する受検者の場合、クラス2以上の指導教官が共同署名する。
- 再検定の場合は、追加訓練を担当した教官が推薦書に署名する。
航空機の装備に関する要件
検定官は、受検者が次を提示することを確認する。
飛行実技検定に必要な航空機と装備品
- 次の条件を満たす飛行機であること。
- 条件を満たしていれば、準備する機体は1機だけに限定されない。(CPLのみ記載)
飛行機の検定使用条件
- 飛行実技検定で求められるすべての運動が可能であること。
- CPLの場合、上記の運動に「意図的な旋転」も含む。
- 規則第425条「飛行訓練」の425.23(1)~(3)の項目の要求に適合していること。(多発機の場合は425.23(1)(2)のみ)
- 適切な最新の航空図と最新のカナダ飛行情報補足誌(CFS)
- 外の視覚的目標物に頼らずに計器飛行状態を模擬できつつ、検定官に対しては安全な視界を確保できる効果的な手段(フード等)
飛行実技検定に必要な航空機と装備品(計器飛行証明IFRの場合)
- 初回の計器飛行証明取得ための飛行検定で使用する機材は、次の条件を満たす飛行機またはフルフライトシミュレーター(FFS)であること。
- 計器飛行技能検定(IPC)の場合は、上記に加えて飛行訓練装置(FTD)の使用も可能
飛行機の検定使用条件
- パイロットの運用ハンドブック(POH)や航空機飛行マニュアル(AFM)により、計器飛行方式(IFR)による飛行が承認された型式であること。
- LNAV/VNAV機能や、DMEやNDBアプローチの代替となるようなその他の機能を有しRNAV(GNSS)アプローチを実施可能な承認を受けたGNSSの受信装置を搭載していること。
- LPVアプローチを実施するため、GNSS(WAAS)受信機器は承認を受けたものであること。
- GNSSやFMSのデータベースが最新であること。
- 航空法第605.18項の「動力機によるIFR飛行」の要件を満たす予備無線航法装置を装備し、メインの装備がどの課目のどの段階で故障したとしても、次の条件を満足できるようにすること。
予備無線航法機器の条件
- 目的飛行場または着陸に適したその他の飛行場に向かえること
- 航空機がIMCで運航中には、計器進入や必要に応じ進入復行の手順を完了できること
- 高度計測機能付きのトランスポンダーが、航空法に準拠して24ヵ月以内に無線点検に合格していること。
- 電子的主要飛行情報表示計器(PFD)または別体の旋回/傾斜計か一体型の旋回計を搭載していること。
- 予備席に検定官を搭乗させる場合は次の条件を満足すること。
予備席に検定官が搭乗する場合の条件
- 耐空性基準に基づいて設置された安全帯が使用できること
- 航空機の計器、無線、航法機器への視界が遮断されないこと
- 機内交話装置や対地上及び対航空機無線が装備され聴取できること
FSTDの検定使用条件
- 検定に使用できる飛行模擬訓練装置(FSTD)は、航空法で認定されたものであること。
- 認定されたFSTDは、検定に使用されるにあたり、改訂第2版または第3版の飛行機及び回転翼機のシミュレーターマニュアルの要件を満たしていること。
- 当日の検定官も使用できるように訓練を受けているか、正しく扱える者の支援が必要となる。
- 通常のエンジン始動から停止まで、タクシーから駐機まで、離陸から着陸までと実機同様にすべての課目を実施すること。
- 操縦席は必要な人員のみ着席するようにし、1名で運航できる航空機の場合は受検者のみとなる。
FFSの検定使用条件
- フルフライトシミュレーター(FFS)はレベルA以上の認定を受けたものであること。
- 操縦席は必要な人員のみ着席するようにし、1名で運航できる航空機の場合は受検者のみとなる。
FTDの検定使用条件
- 飛行訓練装置(FTD)は、レベル2以上の認定を受けたもので、計器飛行技能検定(IPC)のみに使用できる。
- 実機で検定を行う場合は、外の視覚的目標物に頼らずに計器飛行状態を模擬できつつ、検定官に対しては安全な視界を確保できる効果的な手段(フード等)
- 適切かつ最新の電子データベース、検定で飛行する予定の地域を含んだエンルート/ターミナル/アプローチチャートで公式のもの、最新のカナダ飛行情報補足誌(CFS)
- タブレットコンピューターや航空アプリを搭載した電子飛行カバン(EFB)は紙のチャートの代用として使用可能。EFBは状況認識上有用なものであるものの、航空機に搭載されている本来の航法機器の代用として使用しないこと。搭載するEFBは、認められた要領で装着するか、検定中に衝撃などで外れたりしないような固定をすること。
保険の加入
受検者は、飛行検定に先立って、検定官自身もカバーされる保険の加入について、口頭説明でなく証明を提示して説明する。
飛行検定
飛行検定報告書に記載されたすべての飛行検定項目が実施される。
CPLで統合コースの場合は、VFR航法検定において、23A~23Dまでの項目に合格した者のみが受検対象となる。
最低合格基準
PPL:62点以上 (31項目×50%以上)
CPL:93点以上 (33項目×70%以上、統合コースの場合は81点以上)
Multi:73点以上 (26項目×70%以上)
Instrument:39点以上 (16項目×60%以上)
受検者は、各項目で示される「合格基準」を満足する検定内容を示すこと。
検定は、飛行機の運航に危険性のない天候状況で行われ、飛行機が耐空性基準を満足しており、カナダ航空法で求められる受検者と航空機に関する文書が有効であること。
検定の実施可否や、部分項目のみの実施の適否などの最終判断をする責任は、検定官にある。
次の項目は地上検定項目となり、飛行検定に移行する前に査定される。
地上検定項目
PPL/CPL:2A 2B 2C 23A
Multi:1A 1B 1C 1D
Instrument:1A 1B 2
会話的な英語実力確認が、質問や地上検定項目の査定を通じて検定官により行われる。
飛行検定を通じて、条件となっている「エキスパート」または「オペレーショナル」な言語能力の発揮が求められる。検定においてオペレーショナルレベルが認められない場合には、検定官は地上検定項目部分を不合格として、飛行検定にはついて中止する。
この場合検定官は、「文書及び耐空性」の項目で「1点」を付け、備考欄にその状況を記載する。
事業用操縦士免許(CPL)の場合
CPLについては、課目13の旋転(スピン)を実施するために別の機体を使用して2回目の飛行を実施する場合に、最初の検定飛行で終了した項目を再度実施し、その際に検定項目の目的に合致しなかった場合には、「1点」が与えられ不合格となる可能性がある。
計器飛行証明(IFR)の場合
可能な限り、計器飛行証明の飛行検定にあたっては、実際のIFR飛行計画をATCに提出することが望ましい。IFR管制環境下では、操縦士としての受検者と航空管制官の直接の交信がより現実的で、効果的な検定が実施可能になる。また、適切な無線航法施設が運用され利用可能であることが必要である。
受検者は、搭載された自動操縦機能や飛行管理システム(FMS)を航空機のマネジメントを支援するものとして検定中に活用することが推奨される。
検定官は、搭載され運用されているシステムに関して、地上の口頭質問や飛行中の検定の範疇で受検者の知識を確認することが求められる。
受検者は、計器進入のうち1回は、自動操縦機能やFMSを使用した進入を行い、十分扱えることを示すこと。ただし、少なくとも1回は手動操縦での計器進入を行うこと。
検定が飛行模擬訓練装置(FSTD)で行われる場合には、実機と同様全セグメントを実施すること。
検定項目の再実施
飛行検定項目や運動は、下記の状態であれば再実施(やり直し)となる。こうした状況は、公平性と安全のために設けられたものであり、課目内容の出来によって再実施が認められるものではない。
項目の再実施が必要となる条件
中断
適切な安全上の理由から、運動が継続できない場合がある。例えば、ゴーアラウンドやもともと計画した運動から変更の要が生じた場合。
衝突防止
検定官は、他機との衝突を回避するために飛行制御に介入することがある。これは、受検者が位置的もしくはその他の理由によりこれを認識できなかった場合。
要求の誤解
特定の運動を実施する際に、受検者が検定官の意図した要求を理解しなかった正当な場合。要求された特定の運動の性質を理解しなかったことが、受検者による過失である場合には、再実施は認められない。
その他の要因
無線交話や、他機との安全確保など、検定官が別のことに気を取られてしまうような状況が生じて項目の審査が出来なかった場合。
検定の中断や未完了
もし検定が、受検者の制御可能な範疇を超えて起きる状況により完了しなかった場合は、次に行われる飛行検定では、最初の検定での未完了項目を必ず含み、最初の推薦書の日付から30日以内に再実施すること。
中断により再実施する際の手続き
- 受検者は、最初の検定時の飛行検定報告書を受領する。
- 飛行検定は後日に行われること。
- 検定官は変更になっても構わない。
- 最初の推薦書は引き続き有効。
- 前回完了した項目については再度審査は必要ないものの、飛行の過程でもしその目的に合致しないと認められた場合には、前回完了していても「1点」の評価となることがある。
- 前回の未完了時点で発行された飛行検定報告書は、再実施時にも使用される。
- 再実施までに期間が空く場合に、学生は訓練飛行を実施してもよい。
もし最初の検定時に2つ以内(IFRは1つまで)の飛行項目に不合格の内容があれば、これらの項目の部分再検定は、次の条件を満足すれば、受検者が再実施に必要な項目をすべて終えたところで併せて実施することが可能。
再実施時に部分再検定を同時実施する条件
- 不合格項目の再検定の開始に先立って最低合格基準に達している場合
- 再実施時の項目で追加の不合格項目がない場合
- 部分再検定の実施に必要な教官による推薦書が検定時に提出された場合
検定の不合格
最低合格基準に到達しないもしくは検定項目に不合格がある場合には、検定全体は不合格となる。地上項目での不合格の場合には、全ての再検定が必要となり、飛行項目の検定に移行しない。地上項目は部分検定の対象外である。2つ以内の飛行項目の不合格の場合には、これらの項目に対する部分再検定が必要となり、3つ目の不合格項目がある場合にはすべての項目の再検定が必要となる。
検定官は、「1点」を付けるような項目があった場合や、受検者が次のような安全を阻害する行為を行った場合には、検定を中断し再検定が必要となる。
検定が中断となる安全阻害行為
- 技量や訓練の不足に起因しない不安全または危険な飛行を行った場合
- 運動前もしくは運動中の他機見張りのための目視スキャニングについて、不適切なパターンにある場合
部分再検定が妥当ではあるが全体としては不合格である飛行検定の終了後、受検者は部分再検定の実施要件を満たす内容が記載された飛行検定報告書のコピーを受領する。
検定内容の不服申し立て
もし検定内容に疑義がある場合には、受検者は飛行検定の実施もしくは検定官の審査能力に関する不服申し立てを書面で提出することができる。検定官に関する不服申し立ての際には、検定官について責任を有するカナダ運輸省の地上事務所にも併せて提出する。
もし不服申し立てが受理された場合には、受検者はカナダ運輸省(TC)に対して検定が適切に行われなかったことを説明する必要が生ずる。個別の事象に配慮して、飛行訓練に責任を有する地域事務所の技術チームは、民間航空局の試験官もしくは別の検定官をアサインして、この飛行検定の疑義の提起に関連する記録のない状態で偏見なく再検定を実施させる。
許可範囲を超える行為の禁止(IFRガイドの記載)
カナダ航空文書(CAD)で定められた特権範囲(Privileges)をいかなる場合も越えてはならない。
各種の資格や証明を含む操縦士免許もカナダ航空文書(CAD)の一部である。航空法により、これらの権限は停止、取消、更新の停止や今後の更新の禁止などあらゆる措置をとることが可能である。
受検者がカナダ運輸局(TC)との協議に納得できていない場合に控訴する唯一の手段は、オタワにあるカナダ連邦裁判所への控訴である。
部分再検定
全体の合格基準は満足しつつ、部分的に2つ以内の飛行項目で「1点」の不合格が生じた場合には、再検定を実施して合格することで免許証発行のための技能基準は満足しているものとみなされる。
再検定の受検に必要な推薦書は、有効な飛行教育証明を保有し、受検者の追加訓練を担当した教官の署名をもって作成されること。
「1点」の不合格となった項目について、受検者は再検定で実施する必要がある。再検定以外の項目については審査されないが、安全上の理由や課目の目的を達成していないと判断される場合には、「1点」の不合格となる可能性もある。
部分再検定は、前回の不合格日から30日以内に実施すること。
認定シミュレーターによる再検定
部分検定において、検定官の裁量により、シミュレーターを用いて項目29の緊急手順及び項目24Dの無線航法(CPLのみ)について再検定することができる。
再検定に使用可能なシミュレーター要件
- カナダ航空法606.03「総合飛行訓練装置」により認定
- 「飛行機シミュレーターマニュアル(第3版)」により認定
緊急手順の再検定に使用可能な要件
- 不合格となった飛行検定で使用した飛行機の型式を模擬できること
- レベル3,5,6の飛行訓練装置
無線航法の再検定に使用可能な要件
- CPLの再検定のみ対応
- レベル2以上の飛行訓練装置
- レベルA以上のフルフライトシミュレーター
再検定の実施
再検定は、次のいずれかの条件が生じた場合に行われる。
再検定の実施条件
- 検定において、求められる合格基準を満足しなかった場合
- 地上項目で不合格だった場合
- 3つ以上の飛行項目で不合格だった場合(IFRの場合は2つ以上)
- 部分再検定での項目の不合格を生じた場合
- 技量や訓練不足に起因しない不安全または危険な飛行を行った場合
- 運動前もしくは運動中の他機見張りのための目視スキャニングについて、不適切なパターンにある場合
- 部分再検定が不合格となった検定の30日以内に完了しなかった場合
再検定の場合、受検者は検定官に前回不合格だった飛行検定報告書のコピーを検定官に提出又は提示すべきではない。
計器飛行証明の更新のための有効期間の延長措置
更新を行う要件を満足するために、既に計器飛行証明の有効期限が切れた場合でも、検定官がその権限で最初に取得した計器飛行証明の資格範囲を一時的に付与することができる。これはあくまで更新の飛行を行うための特別措置であり、有効期間は更新が行われるまでの最大90日間となる。
検定前ブリーフィング
検定官は、次の項目について、受検者にブリーフィングさせる。
検定前ブリーフィングの内容
飛行検定項目の実施順序
受検者は検定項目の実施順序を記憶する必要はなく、検定官が各項目についての指示を与える。
疑問点は確認すること
何をするように指示されているかはっきりとしない受検者は、気兼ねなく尋ねること。検定官の指示のしかたが不明瞭な場合の可能性もあるため。
検定中は誰が機長(PIC)なのか
航空法401.03項と401.19項「学生操縦許可証(SPP)の許可範囲」によれば、検定官が機長(PIC)となる。受検者による行為または行為の不履行が、飛行安全を脅かしたり、法規違反が差し迫った状態となる場合には、検定官はそのすべての場合において、受検者の操縦を遮ったり、航空機の操縦をとったりするような安全確保をする責任がある。
検定官が機長となること
- 航空法で「機長(PIC)」とは、航空機に関して、飛行中の航空機の安全と運航に関して責任と権限を有するパイロットとされている。
- 検定中における検定官の責任と権限は、次のようなものを指す。
検定中の検定官の責任と権限
- 航空機の飛行経路を決定する
- 離着陸のための態勢を確立する
- 飛行課目実施中の受検者に対し指示を行う
- 特定の飛行課目の準備のために自身の裁量で操縦桿や出力管制装置を操作する
- 飛行の安全な継続に必要な場合はいつでも操縦を遮る
- 飛行の継続の要否について意思決定する
もし検定官が上記に列記されるような状況で責任を遂行するため行為を行う場合には、検定官は機長(PIC)として行う。どういった状況でも、検定官は、機内で最も資格のある人物であり、すべての過失や、同等の立場の他の人物であれば通常行うような合理的な行為を実行しなければ、その責任を負う人物である。
実際に緊急事態が発生した場合にはだれか対処を行うのか
検定官は機長(PIC)であるものの、受検者が機長業務を行い、検定官に対して実際の緊急事態で受検者と検定官が実施する行動の詳細について、ブリーフィングを行うこと。(IFRの場合は、検定官と相談を行う。)
操縦権の移管法
誰か操縦しているのかが不明確になる状況を作らないために、検定中は特に「You have control」「I have control」の適切な用語を用いて、操縦権の移管を行うこと。移管が行われたことを確認するための目視確認の実施が推奨される。
地上目標
短距離着陸や不整地着陸及びそれらの進入時において、検定官は、滑走路状況や、進入中や滑走路末端にある障害物、利用可能な滑走路長に関する想定を明確に付与する。受検者は、進入を意図する接地帯や得点接地点について明示する。
緊急事態の模擬要領
エンジン故障は製造社の推奨要領に則って実施しなくてはならないし、それがなければ、スロットルを絞るか出力をアイドルまで減じることで実施できる。アイドル・カットオフするためのミクスチャーのコントロールは、製造社により推奨されている場合のみ実施すること。
飛行検定での緊急事態模擬に関する禁止事項
- 燃料バルブの閉鎖
- マグニートスイッチの停止
- サーキットブレイカーの引き抜き
- 対地500ft以下の高度でのエンジン故障想定の開始(多発機の場合)
- 対地1000ft以下の高度でのエンジン故障想定の開始(IFRの場合)
電子機器の故障想定(IFRの場合)
電子飛行計器やマップディスプレイなどの故障想定も、関連書籍に従って実施可能である。この場合は、検定官の裁量により故障想定を行うこと。
飛行管理
飛行管理とは、ディスパッチャーやその他の搭乗員たち、整備員、管制官との共同作業など、利用できるすべてのソースの効果的に使用することである。検定項目や各種作業の不出来は、飛行管理能力の弱さとして説明される。
問題解決と意思決定
- 危機に対する対応を避けるため、前もって先々にある脅威を予想すること
- 効果的な意思決定過程を持つこと
- 適切な質問を行うこと
- 意思決定に役立つ最大の情報を得られる作業を優先すること
- 意思決定に役立つあらゆる資源を効果的に使用すること
- 検討中の意思決定の「下流」にある結果を考慮すること
状況認識
- 積極的に天候、航空のシステム、計器、航空管制通信を確認すること
- ストレスで警戒心が低減してしまうような視野狭窄状態に陥らないこと
- 予想され得るもしくは緊急事態に備え、常に「航空機の前にある」こと
- 環境の些細な変化に警戒し続けること
コミュニケーション
- 徹底したブリーフィングを実施すること
- 情報やアドバイスを求めること
- 意思決定を明確に伝えること
- 自分の立場を適切に主張する
ワークロード管理
- コックピットにある様々なものをよく整理しておくこと
- エラーを効果的に管理すること
- 自身の過負荷状態を認識すること
- 負荷の高い状況における注意散漫を排除すること
- 負荷の高い状況での適応能力を維持すること
エアマンシップ
受検者のエアマンシップは、各項目での点数を付与する際に、他の要因とともに評価される。他機の監視、チェックリストの使用、地上および空中での他機への配慮、試運転エリアの選定、滑走路の選定、長時間滑空中のエンジン清掃などの項目が評価される。
受検者は、よいエアマンシップを示し、正確な点検を継続的に実施し、円滑で調和のとれた操縦桿とスロットルの使用を行うこと。
エラー
エラーとは、搭乗員の意図や期待との相違を招く行為または行為の不履行のこと。
軽微なエラー
軽微なエラーとは、課目等の実施成果が、推奨された最良の結果とは異なるとしても、作業や手順または運動を完了させるあたって、そこまで重要ではない行為または行為の不履行のこと。
重大なエラー
重大なエラーとは、不適切な管理が行われたことにより、所望しない航空機の状態または安全に関するマージンの減少を招く行為または行為の不履行のこと。
または、安全上のリスクを冒すほどではないが、各項目の目的の達成からはある程度離れたエラーのこと。
致命的なエラー
致命的なエラーとは、管理の不徹底により、所望しない航空機の状態を継続して招いたり、次に示すような安全に関する問題が生じる行為または行為の不履行のこと。
致命的なエラーの例
- 航空法(CARs)や運用手順で定められた必要事項に従わないこと
- 繰り返し行われる不適切なエラー管理や不正確で認識されないような、航空機を所望しない状態に陥れるような脅威
- 繰り返し行われる重大なエラーまたは各項目の目的として重要な合格基準として示される要素の不履行
基準からの逸脱
基準からの逸脱とは、パイロットによるエラーまたは航空機の誤った操作の結果として、検定項目について示された特定の制限に関する精度に現れる変動を意味する。
軽微な逸脱
軽微な逸脱は、特定の制限範囲を超えない程度の逸脱のこと。
重大な逸脱
重大な逸脱とは、特定の制限範囲を超える逸脱、または安定せず繰り返される軽微な逸脱のこと。
致命的な逸脱
致命的な逸脱とは、次に示すように、繰り返し行われ過度で修正のなされない重大な逸脱のこと。
致命的な逸脱の例
- 特定の制限範囲を繰り返し遵守しないこと
- 重大な逸脱を特定したり修正しないこと
- 特定の制限範囲を倍以上逸脱すること
4点制の評価
4点制の評価基準は、特定の検定項目を実施する上で、受検者の検定内容に適用できる一番弱い要素を最もよく示す評価法である。
「4」
検定内容は現在の状況を考慮した上で良く実行されている。
航空機の取り扱い
高いレベルの精度をもって円滑で積極的である。
専門技量
手順や航空機のシステム、運用制限や飛行特性に関して十分な知識を有している。
状況認識
継続した先見性と警戒心を示している。
飛行管理能力
模範的であり、脅威を一貫して予想し、認識し、よく管理している。
安全に関するマージン
一貫しており、航空機のシステムの効果的な管理や運用上の義務事項をよく維持している。
「3」
検定内容に軽微なエラーを含んでいる。
航空機の取り扱い
軽微な逸脱を含むものの適切な操作を実行している。
専門技量
作業や操作を無事に遂行するための適切な手順や航空機のシステム、運用制限や飛行特性に関して十分な知識を有している。
状況認識
検定項目の目的を達成しつつも、安全維持のため、飛行する環境の中にある手がかりや小さな変化に対して適時に対応する状況を適切に維持している。
飛行管理能力
効果的に発揮している。脅威を予想し、エラーを認識し修正している。
安全に関するマージン
航空機のシステムや運用上の義務事項を効果的に使用して維持している。
「2」
検定内容に重大なエラーを含んでいる。
航空機の取り扱い
重大な逸脱や安定性に欠ける場面、過大/過少な操作や急激な操作がみられる。
専門技量
作業や操作の完了を妨げない程度ではあるものの、知識の量や手順への理解、航空機システムの活用、制限事項や飛行特性に対する欠如がみられる。
状況認識
手がかりの看過や実施タイミングの遅延があり、手がかりや変化を運航に適用するのに理想よりも時間を要するため、状況認識不足がみられる。
飛行管理能力
一貫した能力の発揮ができていない。脅威とエラーの認識が遅いものの、対処または修正することにより、計器表示、航空機の警告や自動機能を活用して、所望しない航空機の状態になることを避けている。
安全に関するマージン
管理法に問題があるものの、安全のマージン自体は損なわれていない。
「1」
検定内容に致命的なエラーが含まれている、もしくは項目の目的を達成していない。
航空機の取り扱い
致命的な逸脱、安定性の欠如、粗い操縦があり、航空機の制御が失われているか疑わしい状態にある。
専門技量
作業や操作の完了を妨げる程度で、知識量や、手順、航空機のシステム、運用制限や飛行特性に対する理解が許容できないレベルにある。
状況認識
正確な状況を維持するための適切なスキャニングが欠如していたり、利用できる情報をうまく活用できておらず、正しく状況認識ができていない。
飛行管理能力
効果的な明確手法を実践できていなかったり、定められた手順に準拠していなかったり、修正要領が効果的でないもしくは実施されていない。
安全に関するマージン
安全に関するマージンがないがしろにされているか、明確に減少している。
飛行検定の結果と個人情報保護
政府機関が保有する個人の情報に関するプライバシーは、個人情報保護法により保護される。
飛行検定では、検定を実施する受検者や検定官、訓練に責任を有する飛行訓練施設(FTU)の識別を通じて受検者を推薦した教官、及びその学校の主任教官(CFI)について、その検定内容が判断される。これらのすべては、飛行検定報告書の中で確認がなされる。
個人情報の使用目的
個人の情報は、個人情報保護法の第8(2)(a)項に基づき、「機関が情報を取得するため、もしくはそれに合致した情報の使用をするため」という正当な目的で開示される。ただし、飛行検定に関する情報を期間が取得する目的とは、あくまでもカナダの航空安全に寄与するためのものである。
ここでいう特定の目的とは、受検者が免許証や資格の発行に必要な検定の合格基準を満足しているか、受検者を検定に推薦した教官が適切であったか、検定官が基準に則って適切に検定を実施したか、飛行訓練施設(FTU)が資格発行のための一般的な条件に準じて機能しているかといったことを確認するため必要なものである。
TCからの個人情報の提供
また、個人情報保護法の第8(2)(a)項に基づき、飛行検定報告書のコピーが受検者と検定官に渡され、検定官はこれを保管する。また、受検者を検定に推薦した教官と、飛行訓練に責任を有する主任教官(CFI)にも手渡される。結果に記載される特定の情報は、個人情報保護法に基づく求めがあった場合を除き、カナダ運輸省(TC)からはこれらの個人以外には提供されることはない。
飛行検定内容の評価
合格基準とは、各検定項目の点数基準を示す。この基準は、パイロットの運用ハンドブック(POH)や航空機飛行マニュアル(AFM)やその他の承認されたデータにより記載される製造社の仕様や推奨速度、形態を基準に考えられており、通常時以外の状況を想定したものではない。
受検者は、示された検定内容の合格基準にあった行動をとり、基準を満足すること。
上昇/進入速度に関する記載(CPLのみ)
上昇や着陸進入速度は、POHやAFMにより記載されているその時の重量に応じて修正された速度を使用することが推奨されており、そういった記載がない機体の場合には、航空法の第523.63項「上昇に関する一般事項」と同523.73項「参照着陸進入速度」に従うこと。
飛行検定を通じて、受検者はチェックリストの適切な使用法について常に評価される。
適切な使用とは、評価される作業や操作によって異なる。検定項目の目的を達成しようとする間に、チェックリストを使用することがかえって不安全または不適切な場合もある。こうした場合には、検定項目の目的を達成してから使用することが適切であるといえる。また、チェックリストの使用中には適切な注意分配と目視のスキャニングをしっかりと行うことこなうこと。いくつかの項目については、メモリーによって実施されることは許容されるが、こうした場合には、実施後にチェックリスト項目を再確認することが必要である。
天候や他機の状況、受検者の合理的な制御範囲を超えたその他の状況により生じた示された合格基準からの避けがたい逸脱については、考慮される。
こうした状況を避けるため、検定は可能な限り平易な状況で実施されるのが好ましい。
IFR検定での飛行計画の提出
可能な限りIFR飛行計画を提出して検定を実施すること。これにより、実際の航空交通管制の中で効果的に検定飛行を実施することが可能となる。もし、状況的にこれが適わない場合には、検定官が管制官役となってロールプレイの中で想定の管制指示や管制許可を出す飛行を行うことになる。この場合、受検者は実際の管制官と検定官の両方の指示にしたがって飛行すること。
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