2006年8月発効の第3版「学習参考ガイド」をもとに、記事を作成しています。
航空機型式証明の受検に求められる知識要件検定
重量平衡のグラフやヒューマンファクター、操縦に2名以上を要する機体に関する航空関連の知識が問われます。
受検資格
カナダ航空規則(CARs)の第401.13(1)項では、筆記試験受検の条件として、次に示す条件が求められています。
筆記試験の受検に必要な条件
- 航空身体適性
- 身分証明証
- 受検者の訓練に責任を有する飛行教官による推薦状
航空機型式証明の受検前提条件
所要の飛行訓練内容の50%を完了済みであること。
すなわち飛行機での総飛行時間125時間があれば受検が可能です。
筆記試験内容
科目は全部で9つの分野に分かれています。
筆記試験(IATRA)の科目
- 航空法と各種手続き
- 機体構造、エンジン、プロペラ、各種系統
- 航空気象
- 飛行計器
- 航法
- 無線通信と航法無線機器
- 飛行運用
- 飛行理論
- ヒューマン・ファクター
第1部: 航空法と各種手続き
一般規定
一般規定
序説
101.01 序説(定義)
個人の免許等と訓練
搭乗員の許可証 / 免許証 / 資格・証明
一般
401.03 搭乗員の許可証 / 免許証 / 資格・証明の取得要件
401.05 更新要件
運航全般と飛行方式
空域
空域の構成 / 分類 / 使用
601.01 空域の構成
601.02 空域の分類
601.03 トランスポンダー空域
601.04 クラスF特別使用制限(アドバイザリー)空域でのIFRまたはVFR飛行
601.05 クラスA~E空域とクラスF特別使用制限(アドバイザリー)空域におけるIFR飛行
運航と飛行方式
一般
602.02 搭乗員の適性
602.03 搭乗員のアルコールとドラッグ
602.05 各種指示の遵守
602.07 航空機運用制限
602.08 可搬式電子機器
602.09 エンジン稼動中の燃料搭載
602.10 航空機エンジンの始動と地上運転
602.11 航空機の着氷
602.31 航空交通管制指示と管制許可の遵守
602.32 速度制限
602.34 巡航高度と巡航フライトレベル
602.35 高度計規正地域における設定と運用手順
602.36 標準気圧地域における高度計規正と運用手順
602.37 両地域間の移行地域での高度計規正と運用手順
602.38 公海上の飛行
602.46 輸送の拒否
カナダ運輸省(TC)では、学生の受検データを元に、この分野では特に「指定山岳地域における最低IFR高度」に関する知識が弱いと分析しています。
飛行準備 / 飛行計画 / 飛行旅程
602.71 飛行前情報
602.72 気象情報
602.73 飛行計画/旅程の提出要件
602.74 飛行計画/旅程の内容
602.75 飛行計画/旅程の提出
602.76 飛行計画内の変更
602.77 到着報告の提出要件
飛行前と搭載燃料要件
602.86 持ち込み荷物 / 装備 / 貨物
602.87 搭乗員の指示
602.88 必要搭載燃料量
602.89 乗客に対するブリーフィング
飛行場またはその付近における運航
602.96 一般
602.97 義務周波数(MF)空域内の非管制空港におけるVFRとIFRの運航
602.98 MFにおける一般的な通報要件
602.104 IFR機が非管制飛行場に進入および着陸する際の通報要領
602.105 騒音運用基準
602.106 騒音低減滑走路
カナダ運輸省(TC)では、学生の受検データを元に、この分野では特に「非管制空港からのIFR出発」に関する知識が弱いと分析しています。
緊急通信と安全
602.145 防空識別圏 (ADIZ)
602.146 ESCATプラン
個人運航の乗客輸送
一般事項
604.01 序説
604.02 適用
604.03 禁止事項
飛行運航
604.25 運航管制システム
604.26 機長と副機長の指定
604.28 計器進入と着陸
飛行運航に関する文書
604.36 チェックリスト
604.37 航空機運航マニュアル
604.38 飛行運用データシート
飛行運航と乗客
604.81 客室乗務員
604.82 客室の安全
604.83 乗客搭乗中の給油
604.84 乗客搭乗中かつエンジン運転中の給油
604.85 乗客へのブリーフィング
604.86 安全事項記載カード
飛行時間と飛行義務時間
604.98 飛行時間制限
604.99 飛行義務時間と休息期間
604.100 分割飛行義務時間
604.102 不慮の勤務状況
604.103 遅延報告時間
604.104 指定要務のない時間
604.105 搭乗員の休息期間
604.106 フライトデッキでの管理休息
整備
604.128 整備 / 初等作業 / サービシング
個人に関する要件
604.139 有効期間
604.143 搭乗員の資格と訓練
安全管理システム
604.205 個人の義務
航空機に関する要件
一般
605.04 航空機飛行マニュアルの使用可能性
605.06 機体装備品基準と使用可能性
605.08 使用不可及び除外された装備品一般
605.09 最小装備品リストのある機体と使用不可性 / 非搭載装備品
605.10 最小装備品リストのない機体と使用不可性 / 非搭載装備品
航空機に搭載する装備品に関する要件
605.30 防除氷に関する装備品
605.32 酸素の使用
605.33 飛行データ記録器とコックピット音声記録器の要件
605.36 高度警報システムと機器
605.37 対地接近警報装置 (GPWS)
605.40 緊急位置送信機 (ELT) の有効化
605.41 第3の姿勢指示器
技術的記録
605.94 ジャーニーログ要件
605.95 ジャーニーログの機上搭載
事業的航空業務
一般
飛行時間と飛行義務時間制限と休息期間
700.15 飛行時間制限
700.16 飛行時間制限と休息期間
700.17 不慮の勤務状況
700.18 遅延報告時間
700.19 勤務から解放される時間の要件
700.20 搭乗員の配置
700.21 予備の搭乗員
700.22 長距離飛行
700.23 フライトデッキにおける指定休息
航空輸送業務
機体の装備品に関する要件
703.65 704.64 705.70 上空での雷雨探知器と気象レーダー装置
703.67 704.66 705.71 呼吸保護装置
703.69 704.68 705.75 ショルダーハーネス
飛行に関する運用
703.26 704.22 705.30 緊急事態の模擬
704.20 705.25 燃料搭載要件
704.26 705.34 離陸における最低気象条件
704.27 705.35 IFR飛行における代替飛行場の非設定
コミューターおよびエアラインの運用
機体性能上の運用制限
704.46 705.56 離陸時の重量制限
704.47 705.57 離陸時の鉛直飛行経路
704.48 705.58 片発不作動時の巡航制限
エアラインの運用
705.26 延長距離双発機運航 (ETOPS)
705.29 操縦業務にある搭乗員
705.31 搭乗員に対するブリーフィング
カナダ運輸省(TC)では、学生の受検データを元に、この分野では特に「耐空性に関する指示」に関する知識が弱いと分析しています。
各種手続き
各種手続き
■航空情報マニュアル (TC AIM)
- 航空安全調査
- 各種定義
- 航空事象発生の報告
- 事故現場の保存と機体に関する書類提出
- ノータム
国内空域の高高度運航
- 高度計規正要領
- 巡航高度
- マッハ数と真対気速度 (TAS) の変化
航空交通業務と要領
- 航空交通とアドバイザリー業務
- ■通信要領
- レーダー業務
- 航空交通管制許可と管制指示
- 後方乱気流のための待機間隔
- 管制 / 非管制の空港 / 飛行場の運用
- 義務周波数と飛行場周辺機共通周波数
- VFR巡航飛行要領
- ■VFR飛行待機要領
- ■着陸及び滑走路前待機運用法 (LAHSO)
カナダ運輸省(TC)では、学生の受検データを元に、この分野では特に「TCASアドバイザリー」に関する知識が弱いと分析しています。
第2部: 機体構造、エンジン、プロペラ、各種系統
機体構造 / エンジン / プロペラ / 各種系統
エンジン
- ターボプロップエンジンの原理
- ターボプロップエンジンの取扱い要領
- ターボジェットエンジンの原理
- ターボジェットエンジンの取扱い要領
プロペラ
- 制御
- 地上 / 上空の作動域
- フェザリング
- リバース
各種系統
- 作動油系統
- 警報系統 (着氷 / 火災 / 対地接近 / 他機接近 / 高度)
- 防除氷系統
- 酸素系統
- 与圧系統
- 降着ブレーキ系統
- 抽気系統
第3部: 航空気象
航空気象
乱気流
- 晴天乱気流
- ■尾流雲
カナダ運輸省(TC)では、学生の受検データを元に、この分野では特に「ジェット気流の構成、高度、季節変動」に関する知識が弱いと分析しています。
雷雨
- 各種の危険性
各種の危険性
- 乱気流
- 雹
- 雨
- 氷
- 高度計
- 発雷
- 突風前線
- ダウンバースト
- マイクロバースト
- ウィンドシア
カナダ運輸省(TC)では、学生の受検データを元に、この分野では特に「ウィンドシアの効果と回避、回復」に関する知識が弱いと分析しています。
気象図と予報図
- 発出時刻と有効期間
- 記号と読み方
- 地上天気解析
- 上層解析図 (850 / 700 / 500 / 250mb)
- 上層予報図 (FL240 / 340 / 450)
- 重大気象現象予報図 FL100~250 (700~400mb) と FL250~630 (400~100mb)
- 衛星画像
- レーダー画像
航空気象予報
- 発出時刻と有効期間
- 読み方
- 局地予報図 (GFA) / 上空気象勧告 (AIRMET)
- 飛行場空域予報 (TAF)
- 上層風 / 気温予報 (FD)
- 上空重大気象現象警告メッセージ(SIGMET)
機体の着氷
- 着氷の種類(ライムとクリア)
- 通報基準
- 雲の種類と着氷
- 氷雨と霧雨
- ■晴天下での着氷と降霜
- 着氷の捕捉率
パイロットが利用可能な気象サービス
- 飛行情報センター (FICs)
- 航空気象ウェブサイト
- パイロット自動通話気象回答業務 (PATWAS)
- 自動飛行場情報業務 (ATIS)
- VOLMET (HF) 放送
航空気象通報
- 航空定期気象通報 (METAR)
- 特別観測気象通報式 (SPECI)
- 読み方
- 自動気象観測局 (AWOS)
- パイロット通報 (PIREP/AIREP)
カナダ運輸省(TC)では、学生の受検データを元に、この分野では特に「自動気象観測局 (AWOS) の作動原理と読み取り」に関する知識が弱いと分析しています。
第4部: 飛行計器
飛行計器
原理と運用的使用
- マッハ計
- 高度計とエンコード装置
- 無線 / レーダー高度計
- 姿勢計 (AI)
- 飛行指示器
- 無線磁気指示器 (RMI)
- 水平方向状態指示器 (HSI)
- 迎え角指示計
エンジン計器の原理と使用法
- エンジン圧力比 (EPR)
- タービン温度計 (ITT/TIT)
機上コンパス機器
- ■マグコンパス
- ジャイロ式リモートコンパス
第5部: 航法
航法
■飛行計画の算定
- 針路と真対気速度 (TAS)
- 風と風速
- 各種対気速度 (指示 / 較正 / 等価 / 真)
- 航跡と対地速度
- マッハ
- 重量平衡と負荷調整
- 飛行計画での燃料必要量 / 燃料搭載 / 零燃料重量
- 決心限界点 (CP)
カナダ運輸省(TC)では、学生の受検データを元に、この分野では特に「燃料流量算出」に関する知識が弱いと分析しています。
■飛行計画の様式
- 飛行計画
- 飛行旅程
巡航航法
- 航空図の使用
- 風速の決定
第6部: 無線通信と航法無線機器
■無線通信と航法無線機器
緊急位置送信機 (ELT)
- 試験
- 墜落機の使用要領
航法系統と進入機器
- 全球測位衛星システム (GNSS) / GPS
- 自動方向探知機 (ADF)
- VHF全方向式無線標識 (VOR)
- 距離測定装置 (DME)
- 広域航法システム (RNAV)
- 慣性航法装置 (INS)
- 慣性参照装置 (IRS)
- VHF方向探知機 (VHF – DF)
- 計器着陸装置 (ILS)
- 目視進入角表示システム (VASIS) と 精密進入経路表示 (PAPI)
第7部: 飛行運用
飛行運用
性能
- 巡航可能距離と時間
- 飛行性能と各種V速度
- 重量や重量分布の変化による影響
- ハイドロプレーニング現象
- ウィンドシアの影響と回避法
- 着陸技術
図表とグラフ
- 重量平衡
- 離陸
- 上昇
- 巡航
- 降下
- 着陸
- 横風
カナダ運輸省(TC)では、学生の受検データを元に、この分野では特に「重量平衡と機体の負荷」に関する知識が弱いと分析しています。
致命的な機体表面混濁
- 機体を清潔に維持することと実施法と技術
- 寒冷での機体氷結現象
- 防除氷剤の塗布手順
- 残置時間
- 致命的表面点検
- 離陸前点検
- 除氷剤の健康への影響
- ガイドライン表の適用
後方乱気流
- 原因と効果
- 回避要領
- 待機間隔基準と免除
第8部: 飛行理論
飛行理論
翼の設計
- ■翼端渦
- 後退翼
- 前後縁の装置
- ボルテクス・ジェネレーター
- ■スポイラー
第9部: ヒューマン・ファクター
ヒューマン・ファクター
航空生理
- 低酸素症と過呼吸
- 気体膨張効果
- 聴力
- 視覚と前庭錯覚を含む方向感覚とその喪失
- 正および負G
- 24時間周期リズムと時差ぼけ
- 睡眠と疲労
運航環境
- 処方された薬品 と薬局で購入する薬品
- 物質の乱用(アルコールとドラッグ)
- 妊娠
- 体温上昇と低下
- 騒音と振動
- 一酸化炭素などの中毒の危険性
航空心理
- 意思決定の要素と要領
- 状況認識
- ストレス
- リスク管理
パイロットと装備品
- 標準運用手順 (SOPs)
- 航空図 / チェックリスト / マニュアルの正しい使用法
- コックピットでの視覚(視点の参照点と座席)
対人関係
- ■コクピット・リソース・マネジメント
- 会社や乗務員、乗客とのコミュニケーション
- ■安全管理システム (SMS)
- ■リスク管理
TC推奨参考教材
TC推奨参考教材
- Canadian Aviation Regulations (CARs)
- Aeronautical Information Manual (TC AIM) (TP 14371E)
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