2021年1月更新の第12版の計器飛行証明用「飛行実技検定ガイド」(飛行機)を参照して作成しています。
飛行検定に関する共通事項
自家用操縦士免許(PPL)、事業用操縦士免許(CPL)、多発機飛行資格(Multi)、計器飛行証明(Instrument)、飛行教育証明(Instructor)など、飛行実技検定が必要な免許や資格/証明がありますが、その中でも検定に関する一般事項として、申請要領、採点方法など共通の事項については、下の記事でまとめていますので、こちらをご覧ください。
飛行検定課目一覧
オレンジ色で示されている課目が採点対象であるが、8と11はそれぞれ2つずつ選択されるので、合計16項目となる。
各項目「4点」(満点)~「1点」(不合格)の4段階で評価され、合計点数が60%以上の39点以上にて合格となる。
第12版での変更 (追加) 事項
- 2019年9月25日発効のアドバイザリーサーキュラー第408-002号「飛行検定における2点の制限数について」に基づき、検定内で取得する「2点」の上限数が、3つまでと明記されました。つまり、検定の結果「1点」の項目がなければ、「2点」を3つまで取得しても合格であるということです。
この条項は、再検定や部分再検定場合にも、シミュレーターを使用した検定にも適用されるとされています。
再検定については、「2点」と「1点」の合計ポイントが「3」になるかどうかで完全再検定か部分再検定になるかが変わります。
- 航空機と装備品に関する条件に一部記載が追加されました。
なお、各検定における「2点」の取得許容数は、以下のとおりです。
レク操縦士 RPP | 自家用操縦士 PPL | 事業用操縦士 CPL | 多発資格 Multi Rating | 計器飛行証明 Instrument Rating |
---|---|---|---|---|
6 | 5 | 4 | 4 | 3 |
用語の定義
非精密進入は、VOR、NDB、LOCなどで、DMEと併用する場合もあるが、地上の無線標識と機上機器についてパイロットがその信号情報を読み取って行う進入
精密進入は、横方向と垂直方向の誘導を行うILS進入を意味し、アプローチチャートに示される進入条件がある。
LPVは、要求航法精度による進入における縦方向誘導におけるローカライザー性能のことで、GNSS(WAAS)受信機の最低条件がある。
関係略語一覧
略 語 | 意 味 | 備 考 |
---|---|---|
AAE | Above aerodrome elevation | 飛行場上空標高 |
ABAS | Aircraft-based Augmentation System (ICAO) | 航空機搭載型 衛星航法補強システム |
APV | Approach with Vertical Guidance | 垂直方向誘導機能付き進入 |
ATC | Air traffic control | 航空交通管制 |
CAP | Canada Air Pilot | カナダエアパイロット (情報誌) |
CDFA | Constant Descent Final Approach | 一定降下最終進入 |
CFIT | Controlled flight into terrain | パイロット操縦による 地上衝突 |
DA | Decision altitude | 決心高度 |
DH | Decision height | 決心高 |
DME | Distance measuring equipment | 距離測定装置 |
FAWP | Final approach waypoint | 最終進入ウェイポイント |
FD | Upper level wind and temperature forecasts | 上層風/気温予報 |
FFS | Full-flight simulator | フルフライトシミュレーター |
FSTD | Flight Simulation Training Device | 飛行模擬訓練装置 |
FTD | Flight training device | 飛行訓練装置 |
GFA | Graphic area forecast | 局地予報図 |
GNSS | Global Navigation Satellite System | 全地球的航法衛星システム |
IFR | Instrument Fight Rules | 計器飛行方式 |
ILS | Instrument landing system | 計器着陸用施設 |
IPC | Instrument Proficiency Check | 計器飛行技量検定 |
IMC | Instrument meteorological conditions | 計器気象状態 |
LNAV | Lateral Navigation by GNSS | GNSSによる横方向航法 |
LOC | localizer | ローカライザー |
LPV | Localizer Performance with Vertical Guidance | 縦方向誘導における ローカライザー性能 |
LVOP | Low Visibility Operations Plan | 低視程運航計画 |
MAP | Missed approach point | 進入復行点 |
MAWP | Missed approach waypoint | 進入復行ウェイポイント |
MDA | Minimum descent altitude | 最低降下高度 |
NDB | Non-directional beacon | 無指向性無線標識施設 |
NPA | Non-Precision Approach | 非精密進入 |
PIREPS | Pilot reports | パイロット通報式 |
RAIM | Receiver autonomous integrity monitoring (FAA) | 受信機自律型完全性監視 |
RNP APCH | Approach meeting Required Navigation Performance standard | 要求航法精度による進入 |
RVOP | Reduced Visibility Operations Plan | 低減視程運航計画 |
SBAS | Space-based Augmentation System (ICAO) | 静止衛星型衛星航法 補強システム |
SID | Standard Instrument Departure Procedure | 標準計器出発 |
SIGMET | Significant meteorological information | シグメット情報 |
SIGWX | Significant weather prognostic charts | 重大気象現象予報図 |
SOP | Standard Operating Procedures | 標準運用手順 |
TAF | Terminal aerodrome forecast | 運航用飛行場 予報気象通報式 |
TTL | Technical team Lead | 担当チーム |
VNAV | Vertical Navigation by GNSS + barometric sensing | GNSSと気圧検知による 垂直方向航法 |
VOR | Very high frequency omnidirectional range | VHF全方向式無線標識施設 |
WAAS | Wide-Area Augmentation System | 広域補強システム |
進入方式の種類
RNP APCH
一定降下最終進入(CDFA)について
CDFAとは
一定降下最終進入(CDFA)は、非精密進入(NPA)において、最終進入セグメントを飛行する際に一定で安定した進入を行う要領と技術である。
最終進入フィックス(FAF)高度以上の高度から、滑走路末端にあたるおよそ50ftの高さの地点または着陸前の引き起こし操作の開始地点までの間を、レベルオフすることなく一定の降下を行う。(ICAO文書8168より)
一定の降下角で飛行する技術は、カナダの民間航空安全に対し重大なスレット(脅威)となり続ける、「パイロットにより十分制御された機体による地表への衝突」いわゆるCFIT事故を防止するために、ICAO内に設置された対策本部により示されたものである。
事故調査と研究により、CFITは非精密進入(NPA)の際に発生リスクが高くなることが分かっている。
手順そのものが本質的に不安全といえるものではないにせよ、非精密進入時のこの既存のステップダウン式の降下方式の使用がエラーを引き起こす可能性があると考えられている。
多くのICAO加盟国ではCDFA方式の使用を要求しており、もし適用できない場合には、より視程やRVRの条件値に大きいものを適用して対策を行っている。
CDFAの有効性
CDFA方式は、通常の非精密進入に必要な機器以外で必要になるものは特にない。
パイロットは、基本的な操縦技術、飛行管理システム(FMS)、RNP進入システムの使用のみで非精密進入にCDFAを適用して安全に飛行することができる。
CDFAによる飛行を行える場合は、ほとんどの非精度進入(NPA)において使用が理にかなうため、これを使用するべきである。
降下して着氷環境から早めに脱したい場合や、着陸に周回進入が必要な場合など、CDFA飛行の適用が実用的ではない場合には、CDFA方式を使用するべきでないものの、パイロットがワークロードを軽減でき、エラーの発生可能性が減り、より安全になるような必要な場合には使用していくべきである。
MDA/DAへの降下とCDFA
CDFA方式は、レベルオフすることなく一定の降下を求めるもので、機上機器によるVNAV誘導または対地速度(GS)から判断する降下率の手動計算のいずれかにより飛行する。
降下率は、滑走路末端にあたるおよそ50ftの高さの地点または着陸前の引き起こし操作の開始地点に至るまでの一定の降下角を得るために選択され調整される。
降下は各進入フィックスでの最低高度以上を通過するように計算される。
非精密進入を実施する場合、パイロットは一般に垂直方向の経路管制を行うための3つの方式のうち1つを利用する。
この中では、CDFA方式が好ましいとされている。
進入復行とCDFA
機体が最低降下高度(MDA)に達していれば、取りうる方法は、次の3方式になる。
- 中間のレベルオフをすることなく、必要な目視物標の視認を続けながら最低高度未満まで着陸のための降下進入を継続する。
- 視程状況が差し迫った状態でなければ、MDAに到達したところで進入復行を行う。
- MDA以上の高度でレベルオフを行い、着陸のためもしくは進入復行点(MAP)に達するための飛行場へのインバウンドを継続し、進入復行手順を開始する。
MDA+50ftといったMDA以上の高度でレベルオフを開始すること。
着陸に必要な目視物標が視認できない、または機体がMDAに接近する際に差し迫った状況でなければ、パイロットはそれを決心高度(DA)と考え、MDA以上の高度から進入復行としての上昇を開始すべきである。MDAでこれを開始するMDA未満まで降下してしまう可能性があるため、十分余裕をもった高度で開始するべきである。
このように、降下する前にMAPに到達する場合や、MDA付近においては、進入復行はMAPで開始しなくてはならない。
CDFAを使用した降下からの進入復行を行う際に、MDA未満まで降下をしてはならない。
進入復行中のいかなる旋回もMAPに到達する前に実施しないこと。
飛行訓練におけるCDFAの教育
飛行訓練施設(FTU)では、非精密進入方式における垂直方向の経路管理の標準要領について、訓練でよく強調していくべきである。
MDA未満への降下をしてしまわぬよう、レベルオフや着陸復行を開始する場合には、MDA以上の高度で行うようによく指導がなされるべきである。
参照:カナダ運輸省アドバイザリーサーキュラー(AC)第700-028号「非精密進入における垂直方向の制御について」(2013年4月22日)
検定受検の前提条件
飛行実技検定を実施する前に、検定官に次の各書類を提出する必要がある。
- 免許または許可証
- 有効な航空身体適性
- 受検者が、規則第421条「飛行搭乗の許可、免許と資格」の項目の第421.14項に定められる必要条件を満足していることの証明
- カナダ航空法425.21(9)により認定される者により署名され、次の内容を含む推薦書
- 受検者が必要な訓練を実施して飛行経験(飛行時間)を取得したこと
- 受検者が検定を受検するに際して十分な技能基準に達していると認められること
課目1:飛行前準備
1A 気象情報の取得(地上課目)
計器飛行方式にしたがって行う飛行を安全に実施するために必要な航空気象情報を、取得または読み取ること。
検定でアサインされた飛行経路に関する航空気象情報の取得と読み取り
次の事項に関する情報を取得し、読み取る。
- 気象通報と予報
- 局地予報図(GFA)
- 地上分析図
- レーダー/衛星画像
- 気象カメラ
- 重要気象予報図
- 上層風/外気温
- シグメット
- パイロット通報
- WAAS NOTAMとRAIM予想を含むNOTAM
1B 飛行計画(地上課目)
性能表、重量平衡計算、適切または適した経路/高度/代替飛行場などのその他の情報を活用しつつ、計器飛行方式にしたがって行う飛行の安全な実施に必要な飛行計画を行うこと。
- アサインされた目的飛行場に向けた飛行を計画
- フライトログ、重量平衡計算、IFRフライトプランを準備
- 気象の条件が性能特性に与える影響を示し、またこうした要素を性能図表やグラフなどの性能データに正しく適用する。
- 機体の性能に影響を与える運用上の要素に適用しつつ、手順や計画に関する知識を示す。
- 適切な経路、高度、代替飛行場を選定する。
- 予定する飛行にとって重要な情報を使用する。
- 気象報告や予報、地上天気図、重大気象現象予報図、上層風/外気温、着氷/乱気流/氷結高度図、PIREP、NOTAM、WAAS NOTAMS、SIGMETなどの情報を飛行計画に統合する。
- 出力設定、運用高度、風、必要予備燃料などの要素を基に予想飛行時間、所要燃料量を算出する。
- 計画する飛行に必要な性能が、機体の能力や運用制限内であることを確認する。
- 飛行計画に利用可能な情報を基に「GO」「NO GO」の判断を行う。
- 予定の飛行の状況を反映してフライトプランを完了する。
1C コックピット点検
計器飛行方式(IFR)での安全な飛行に必要となる、IFR運航に必要な機体の各種システム点検などのコックピット点検を実施すること。
IFR飛行に必要なすべての点検を刊行されたSOP、所有者が作成するチェックリスト、POH/AFMにしたがって完了
- 飛行前の計器、航法機器、コックピット点検を実施する。
- 安全な計器飛行を実施できるように機体が適切に装備され使用可能であることを確認する。
- 使用する刊行物やデータベースが最新であることを確認する。
- 見つかった不具合状況に対し、適切な対処を行う。
- 防除氷や着氷警報システムなどの適切な点検を完了する。
課目2:IFR運航知識(地上課目)
本課目では、合格できるレベルの知識は飛行検定の地上課目として最低限必要になるが、実用的な知識の活用法の確認については、上空での評価も可能
点数評価は検定終了後に実施
- IFR要領に関する十分な知識を有していること。
- アサインされたIFR飛行の内容を安全に実施できること。
- 検定官による何問かの簡潔な口頭質問に対する応答を通じ、予定の飛行に関するIFR手順について実用的な知識を示す
- こうした知識の飛行への適用を通じて実用的な知識を示す
出発前に、安全な飛行を行うためのIFR手順に関して、次に示すような内容について十分な実用的な知識を有していることを示す。
- 離陸気象制限
- 出発要領
- 代替飛行場の最低気象条件
- 離陸最低気象条件(着陸最低条件以下の気象)
- 着氷域との遭遇
- 着陸最低気象条件
- 減少/低視程運航(RVOP/LVOP)
- 進入禁止(運航の種類による)
- アプローチチャート
- 計器気象状態やIFR下での機体の運航や操縦に必要な航法機器、電気機器、計器の使用法、制限と使用可能性
- 自動操縦の使用法と制限
課目3:航空交通管制許可
管制許可を取得、復唱し、それにしたがう要領を示す。
飛行全体を通じて、実際/想定の管制許可に基づき、許可を取得、復唱、したがう要領を示す
- 適切な用語を用いて、適切な管制機関や無線局との双方向無線交話を実施する。
- 管制許可を取得し、復唱する。
- 必要に応じ、明確化や確認を要求する、または対応できない場合には変更する。
課目4:出発要領
出発方式や管制許可、管制指示にしたがって安全に出発すること。
- 計器機能点検を実施しながら出発方式を完了
- 許可された計器飛行方式にしたがってエンルートのコースに会合
- 出発方式で別示されない限り、飛行場標高+400ft以上で飛行計器のみを参照して機体を制御
- 適切な無線周波数を選定する。
- 予定出発フェーズに対応する無線航法施設を選定し識別する。
- 航法機器の表示が意図するコースと一致することを確認する。
- 計器点検を実施する。
- 滑走路標識にしたがって滑走路侵入しないよう安全にタクシーする。
- 適切なチェックリストと推奨手順を完了する。
- 運用制限や推奨形態にしたがい機体の制御を維持する。
- 手順、経路、管制許可、管制指示にしたがい、航跡、ラジアル、方位にタイミングよく会合する。
- 出発方式、騒音低減方式、移行要領、管制指示にしたがう。
- 指定針路±10°を維持する。
- 指定航跡や方位±10°を維持する。
- 指定高度±100ftに上昇し維持する。
課目5:エンルート飛行要領
- 経路に会合する要領を示すこと。
- 適切な機体制御と運用形態や運用制限内での飛行を維持し、許可されたエンルート飛行要領にしたがって飛行すること。
- エンルートのコース上を維持して飛行
- 計器飛行方式として許可されたエンルート飛行要領にしたがって飛行すること。
- 飛行計器の参照のみにより機体を制御
- 適切な無線周波数を選定し使用する。
- 予定するエンルートの飛行段階に関する無線航法施設を選定し識別する。
- 航法機器の表示が意図するコースと一致することを確認する。
- 飛行段階に関する機体のチェックリストを実施する。
- 経路や管制許可にしたがい、航跡、ラジアル、方位にタイミングよく会合する。
- エンルート飛行要領にしたがう。
- 運用制限や運用形態にしたがい適切な機体制御を維持する。
- 指定針路±10°を維持する。
- 指定航跡±10°を維持する。
- 指定高度±100ftを維持する。
課目6:到着要領
許可された到着要領にしたがうことを示すこと。
- 計器飛行方式にしたがって許可された到着要領を完了
- 飛行計器のみを参照して機体を制御
- 適切な無線通信周波数を選定し使用する。
- 予定する到着段階に関する無線航法施設を選定し識別する。
- 飛行段階に関する機体のチェックリスト項目を実施する。
- 手順、経路や管制許可にしたがい、針路、航跡、ラジアル、方位に効果的に会合する。
- 到着要領にしたがう。
- 運用制限や推奨形態にしたがい適切な機体制御を維持する。
- 指定針路±10°を維持する。
- 指定航跡や方位±10°を維持する。
- 指定高度±100ftまで降下し、それを維持する。
課目7:待機要領
実際/想定の管制許可にしたがって待機パターン内での飛行を確立すること。
- 実際/想定の管制許可にしたがい、待機パターンへの適した進入手順を選択し、待機経路に進入し、待機状態を確立
- 搭載燃料、使用可能燃料、待機と代替目的地への飛行に必要な燃料などを考慮して待機できる飛行時間について、十分な知識を有していることを示す
- 待機フィックスへの到着を認識し、待機パターンへの進入を開始する。
- 保護空域内での飛行ができるように適した進入手順を実施する。
- 待機に入るフィックスの通過を報告し、管制機関に求められた場合は待機態勢の確立を報告する。
- 適切なタイミングを用いる。
- DME距離が公示されている場合にはレグの長さにしたがう。
- 風の影響を予測と評価し、効果的な偏流修正と時間調整を行う。
- 指定の航跡やコース±10°、コース偏位表示器から½スケール以内を維持(GPS搭載時は感度をターミナルモードとする)
- 宣言速度±10ktを維持する。
- 指定高度±100ftを維持する。
- 適切な機体制御を維持し、運用形態や運用制限内で飛行する。
- IFRフライトプランと搭載燃料を基に、理に適いに精確な予想最大待機可能時間を検定官に示す。
課目8:進入要領
2種類の計器進入を実施すること。1つはRNAV(GNSS)進入を行うこと。
最初の計器飛行証明の飛行検定の場合、縦方向誘導付きのILS精密進入も必ず実施すること。
ILS進入を実施するにあたりLPV進入を行う場合には、もう一つの進入は縦方向誘導なしの非精密進入を必ず実施すること。
計器飛行技量検定(IPC)の場合、1回のRNAV(GNSS)進入を縦方向誘導があってもなくても構わない。もう一つの進入は既存の地上局を利用した縦方向誘導なしの進入で必ず実施すること。
GNSS進入は一部の飛行訓練装置(FTD)を利用して実施することは不可。
グループ1または2の計器飛行証明の検定の場合、1回の計器進入の際には、想定エンジン故障を実施すること。
進入角が3.5°以下となる非精密進入の場合、中間セグメントと最終セグメント全体において、中間セグメント中の最も高い高度から最低降下高度(MDA)までの間、一定降下による最終進入(CDFA)要領での飛行を行うこと。
一定降下による最終進入(CDFA)要領が可能かつ実用的である場合に、ステップダウン式の進入を行うことは「重大なエラー」として評価される。
進入は、ATCによる誘導でも全手順を実施してもよい。
飛行場の外気温が0°以下の場合、カナダエアパイロット(CAP)の総則で示される要領でアプローチチャート上に記載される最小高度への高度規正を行うこと。
進入の間に発生した「重大な逸脱」が安全を阻害する程度のものではない場合、進入復行を行い、再度実施した進入が問題無ければ評価は「2点」とする。2回目の試行ができるのは、1回のみである。
操縦者のエラーや技量不足により、公示された最低降下高度以下へ降下した場合など、安全を阻害する行為または許容できない内容であった場合には、進入復行を受検者の判断で実施しなければ「1点」(不合格)で評価される。
GNSS受信機を装備しない個人所有機により検定を受検する場合には、個人的な計器飛行技量検定(IPC)のためにRNAV(GNSS)進入を実施するという要件からは除外される。
8A 非精密計器進入
LOC、VOR、NDBによるいずれかの非精密進入を安全に実施すること。
- 無線局への進入への移行後またはATCによる誘導開始後、進入復行点または着陸するまでの間、アプローチチャートで示される進入要領を実施
- 飛行計器のみを参照して飛行を実施
- 受検者は、検定官の意図するところが直線進入か周回進入による着陸なのかを確認して明確化
- 飛行段階や進入セグメントでそれぞれ必要となる用語や交話法を用いて、ATCとの双方向通信を確立する。
- タイミングよく管制許可、管制指示、ATCにより指示される手順にしたがい、できない場合にはその旨を示す。
- 実施する計器進入方式を選択し、それにしたがって実施する。
- 計器進入に使用する地上設備と機上航法機器を選択、選局、識別、確認し、運用状態のモニターを行う。
- 乱気流、ウィンドシアやその他の気象状況を考慮しつつ、使用可能滑走路長やカナダ式滑走路摩擦指標(CRFI)などの運用状況に鑑み、機体の形態の確立や速度の選定を適切に行う。
- エンジン故障時の進入手順、着陸時の点検など、各飛行段階や進入セグメントにおいて適切となる機体のチェックリスト項目を完了する。
- 必要に応じて、公示された最低降下高度(MDA)と各進入方式による視程条件において、外気温、NOTAM、機体や地上航法施設の不作動、着陸環境に関連する目視装置等の不具合などへの必要な調整を行う。
- 最終進入コースへの進入前に、許可または宣言した高度±100ftを維持し、針路±10°を維持する。
- 宣言した進入速度+10kt~-5ktを維持する。
- 中間進入と最終進入セグメントにおいて、次の基準以内で飛行する。
- VOR、LOCのトラッキングを½スケール以内のコース偏位で維持する。NDBアプローチの場合は、特定航跡の5°以内を維持する。
- 可能なところではCDFAを使用し、アプローチチャートで示される最低高度以下への降下をすることなく最終進入における安定した進入を行う。
- 最低降下高度(MDA)まで降下した後に精確にその高度を維持して進入復行点(MAP)もしくは目視による進入部分を通常の降下率と最小の運動のみで安全に完了できる推奨最小視程距離まで飛行する。
- 進入復行点(MAP)までに必要な目視物標の視認ができなければ、そこで進入復行を行う。もしくは
- 直線進入または周回進入により通常着陸を行う。
8B ILS/LPV計器進入
ILSまたはLPV進入を安全に飛行できること。
- 進入施設への移行後またはATCからの誘導開始後、ILS進入の場合、ローカライザーとグライドスロープをインターセプトし、決心高(DH)まで降下
- LPV進入の場合は、最終進入コースとグライドパスをインターセプトし、アプローチチャートに示される決心高度(DA)まで降下する。
- 飛行計器のみを参照して機体を操縦
- 受検者は、検定官の意図するところが直線進入か周回進入による着陸なのかを確認して明確化
- LPV進入を実施した場合、検定の評価は、ILC周回進入の欄で行い、備考欄に記載
- 飛行段階や進入セグメントでそれぞれ必要となる用語や交話法を用いて、ATCとの双方向通信を確立する。
- タイミングよく管制許可、管制指示、ATCにより指示される手順にしたがい、できない場合にはその旨を示す。
- ILSまたはLPVの計器進入方式を選択し、それにしたがって飛行する。
- 計器進入に使用する地上設備と機上航法機器を選択、選局、識別し、運用状態を確認する。
- 乱気流、ウィンドシアやその他の気象状況を考慮しつつ、使用可能滑走路長やカナダ式滑走路摩擦指標(CRFI)などの運用状況に鑑み、機体の形態の確立や速度の選定を適切に行う。
- エンジン故障時の進入手順、着陸時の点検など、各飛行段階や進入セグメントにおいて適切となる機体のチェックリスト項目を完了する。
- 必要に応じて、公示された決心高(MH)、決心高度(DA)、各進入方式による視程条件において、外気温、NOTAM、WAAS NOTAM、機体や地上航法施設の不作動、着陸環境に関連する目視装置等の不具合などへの必要な調整を行う。
- 最終進入コースへの進入前に、許可または宣言した高度±100ftを維持し、針路±10°を維持する。
- 最終進入コースにおいて、ローカライザー/横方向誘導、またはグライドスロープ/グライドパスのトラッキングを½スケール以内のコース偏位で維持する。
- LPV進入を実施中、最終進入コースに入り最終進入地点(FAWP)に到達する前に、2NM以内のアプローチ・アクティブモードにあることを確認する。
- LPV進入を実施中、機体が最終進入コースに乗った際にRAIM警告が表示された場合、適切な対処を行う。
- 宣言した進入速度+10kt~-5ktを維持する。
- 決心高(DH)や決心高度(DA)までの安定した降下を維持する。
- 進入復行点(MAP)までに必要な目視物標の視認ができなければ、そこで進入復行を行う。もしくは
- 最小限の運動で着陸に移行する。
8C RNAV(GNSS)計器進入
RNAV(GNSS)進入を安全に実施できること。
- オーバーレイ進入以外に、RNAV(GNSS)進入を実施
- アプローチチャートに記載される進入航跡を飛行し、進入復行地点(MAWP)または着陸するまで進入を実施
- 飛行計器のみを参照して機体を制御
- 受検者は、検定官の意図するところが直線進入か周回進入による着陸なのかを確認して明確化
- 飛行段階や進入セグメントでそれぞれ必要となる用語や交話法を用いて、ATCとの双方向通信を確立する。
- タイミングよく管制許可、管制指示、ATCにより指示される手順にしたがい、できない場合にはその旨を示す。
- GNSS受信機のWAAS機能が不作動でない限り、要求航法水準(RNP)進入を実施する際には、進入に先立ってRAIM点検を実施する。
- RNAV(GNSS)計器進入方式を選択し、それにしたがって飛行する。
- データベースと各進入方式に使用する進入ウェイポイントからRNAV(GNSS)進入に関する情報を取得する。
- 乱気流、ウィンドシアやその他の気象状況を考慮しつつ、使用可能滑走路長やカナダ式滑走路摩擦指標(CRFI)などの運用状況に鑑み、機体の形態の確立や速度の選定を適切に行う。
- エンジン故障時の進入手順、着陸時の点検など、各飛行段階や進入セグメントにおいて適切となる機体のチェックリスト項目を完了する。
- 必要に応じて、公示された最低降下高度(MDA)と各進入方式による視程条件において、外気温、NOTAM、機上装備の不作動または着陸環境に関連する目視装置等の不具合などへの必要な調整を行う。
- 最終進入コースへの進入前に、許可または宣言した高度±100ftを維持し、針路±10°を維持する。
- 機体が最終進入コースに乗った際にRAIM警告が表示された場合、適切な対処を行う。
- 宣言した進入速度+10kt~-5ktを維持する。
- 中間進入と最終進入セグメントにおいて、次の基準以内で飛行する。
- GNSSトラッキングバーを½スケール以内のコース偏位で維持する。
- 可能なところではCDFAを使用し、アプローチチャートで示される最低高度以下への降下をすることなく最終進入における安定した進入を行う。
- 最終進入コースに入り最終進入地点(FAWP)に到達する前に、2NM以内のアプローチ・アクティブモードにあることを確認する。
- 最低降下高度(MDA)まで降下した後に精確にその高度を維持して進入復行地点(MAWP)もしくは目視による進入部分を通常の降下率と最小の運動のみで安全に完了できる推奨最小視程距離まで飛行する。
- 進入復行地点(MAWP)までに必要な目視物標の視認ができなければ、そこで進入復行を行う。もしくは
- 直線進入または周回進入により通常着陸を行う。
RNAV(GNSS)において、LNAV/VNAVミニマまでの間、低気温時に最終進入フィックス(FAF)通過高度以下でFAFを通過することがある。
これは、温度補償機能のない航空機において、進入がチャートに示されている最低使用温度以上で飛行が行われる場合には許容される。
課目9:進入復行
公示された要領または管制官により指示された要領で安全に進入復行を行うこと。
- 進入に引き続き、公示された要領または管制官により指示された要領で進入復行を実施
- 飛行計器のみを参照して機体を制御
- MAP/MAWPまたはDH/DAで迅速に進入復行を開始する。
- 進入復行要領を開始した旨を通報する。
- 公示された要領または管制官により指示された要領にしたがう。
- 管制許可、制限、上昇勾配にしたがえない事態が発生した場合には、管制官(または検定官)にその旨を知らせる。
- 適切な着陸復行手順による点検項目を実施する。
- 代替飛行場または検定官が指示する内容での再度の進入許可を要求する。
- 推奨速度+10kt~-5ktを維持する。
- 針路、航跡、方位をそれぞれ±10°以内で維持する。
- 公示された進入復行高度または管制官や検定官に許可された高度±100ftまで上昇し、その高度を維持する。
課目10:着陸への移行
- 進入のための最低高度からの着陸に向けた目視による降下を安全に実施できること。
- 必要に応じ、周回進入を行うこと。
- 目視による降下を行い、過剰な運動をすることなくMDAまたはDH/DAからの着陸を実施
- または周回進入の最低気象条件までの計器進入を実施後、着陸に向けた周回進入を実施
- NOTAMや乱気流、ウィンドシア、風や視程などの気象要素を考慮した運航を行う。
- 後方乱気流、滑走路表面、ブレーキングコンディション、その他の要素を考慮した運航を行う。
- 管制指示を確認し、意図を伝え、管制官や検定官によるすべての制限事項や指示にしたがう。
- 着陸を意図する滑走路に必要な目視物標を視認できたところで、進入のための最低高度からの着陸を行う。
- 明確に意図するところが周回進入である場合、
- 機体に適した方式や運動能力を考慮し、適切な周回進入手順を選択し、それにしたがって飛行する。
- 目視物標の視認のみにより、最終進入コースにアラインせずに滑走路に通常着陸できる飛行経路を維持し、雲のシーリングと周回進入できる最低高度の間で、機体を操縦する。
- 通常または異常な状態に適した手順を実施し、機体の形態を確立する。
- 過剰な運動をすることなく、また通常の運用制限を超過することなく手順を完了する。(バンク角は30°まで)
- 承認された最低周回進入高度を精確に維持し、推奨速度+10kt~-5ktを通常着陸を安全に実施するための降下をする地点まで維持する。
- 周回進入において進入復行を行う場合は、適切な方向に旋回し、正しい手順と進入復行への移行に適した形態の設定を行う。
- 周回進入に必要なすべての手順を実施し、円滑で積極的、タイミングのよい制御を行う。
課目11:緊急手順
検定官は3つの緊急処置またはシステム不具合について検定する。
グループ1または2の計器飛行証明(多発)の検定においては、少なくとも1つは課目11Aのエンジン故障項目を実施すること。
グループ3(単発)の場合は課目11B~Dのみを実施する。
片発での進入時に着陸復行が必要な場合は、両エンジンが着陸復行に使用できるということを予め確認しておくべきである。
すべての航空機が、あらゆる状況で片発の上昇性能要求を満たしている訳ではない。
片発による進入の検定を実施するも、片発の着陸復行を要求する訳ではない。
11A エンジン故障
- 安全に多発機の操縦を維持すること。
- エンジン故障が発生した場合の適切な故障対処を行うこと。
- 片発不作動の状態で安全着陸を完了すること。
- 対地1,000ft以上の安全高度で検定官がエンジン故障を模擬
- 受検者は故障エンジンを特定し、緊急処置チェックリストにしたがいエンジン故障時の要領を想定で実施
- 引き続き、課目8で行う安全な着陸に向けた進入のうち1回分を実施
- 滑走路上の必要な目視物標の視認が出来なかった場合には進入復行を実施
- いずれも片発をフライトアイドルまたはゼロ推力に設定して行う
- 飛行計器のみを参照して機体を制御
- 検定官による模擬もしくはエンジンを停止せざるを得ない必要性のあるシナリオにしたがい、エンジン故障を認識する。
- 機体の操縦を維持する。
- 出力を設定し、必要な操縦を適切な手順で行い効力を減少させる。
- 不作動エンジンを識別し、確認する。
- 機体ごとの最良片発不作動速度に設定し、機体をトリムする。
- 時間が許す限り、出力の復活と、不作動側のエンジンを停止するためのチェックリスト手順の完了を確認する。
- すべての飛行段階で必要な運動と性能の最大発揮のための推奨飛行姿勢と形態を確立し維持する。
- 必要に応じ、指定高度±100ftと指定針路±10°を維持する。
- 作動しているエンジンのすべての機能をモニターし、必要な調整を行い、機体ごとのエンジン不作動時の運用制限にしたがい、片発不作動状態で安全な着陸を行う。
想定エンジン故障は課目9「進入復行」と一緒に行ってはならない。
11B/11C/11D 各種システムの不具合と緊急手順
IFR飛行に関連するシステム不具合や緊急事態に際し、推奨される点検と手順を完了すること。
- IMC状態での安全な飛行の継続に影響のある想定不具合や緊急事態のシナリオに沿って、推奨される点検と手順を完了
- こうした状況は、検定に使用する機体に適用可能なものであること
- この項目は、地上または上空のいずれで検定が行われてもよいが、少なくとも1つは上空で実施
- 機体の性能、天候状況、その他の要素により、上空での安全な実施ができるかどうかを検定官が判断
- 次に示すシステム不具合について、評価を実施
- 無線機器と航法機器
- 電気系統
- 吸気系統
- 防除氷系統
- IFR飛行に必要なその他の搭載機器
- 不具合事項を迅速に識別する。
- 必要に応じ適切なメモリーアイテムを実施する。
- タイムリーに、正しい点検と適切なチェックリスト、POH/AFM、承認されたデータに基づく手順を実施する。
- システムの運用に関する制限事項や限界事項を考慮し、飛行を継続するための適切な対応を実施する。
- 残り飛行時間のための合理的な行動方針を追求する。