第4部 よくある質問
本記事は、4部で構成される飛行教官ガイドの第4部に基づくものです。
「飛行教官ガイド」の4部構成
第1部「学習と学習要素」
第2部「地上/飛行指導シラバス」
第3部「訓練計画の作成」
第4部「よくある質問」
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より生産的な指導を行ったり、目的達成に向けた訓練を実施するためには、地上教育を全て完了し飛行教育を開始する前 / 同乗教育前 / 単独飛行承認前の訓練において、各課目の訓練目的や手順を学生が十分に理解していると教官が判断することが重要です。
そのためには、学生に課目の重要な要素について質問をしたり、すでに実施した関連課目を復習して、知識や技量を定着させます。
特に単独飛行前の段階においては、過去の教育内容を十分に吸収していなければ、新しい事項の習得は困難です。
そのため多くの場合、単独飛行前の段階においては反復訓練が効果的と言われています。
学生は、飛行教育だけでなく学科教育も同時に受けているので、往々にして前回の指導内容を忘れてしまいがちです。
前回の指導内容の復習は、学生に質問した内容の反応で判断することができます。
教官がどのように質問をすればこれを確認できるのか、いくつかの要素が次のように示されています。
質問のしかた
- 質問は、考えさせる内容のものもしくは簡潔で事実的な回答を求めるような内容であるべき
具体的な質問のしかた
- 各質問は、考えさせるものや迅速で事実に基づく回答であること
- 「YES」か「NO」で回答できる質問は少なくし、「知っているとよい」が重要でない質問は避ける
- 学生の考えを求める領域に導き質問を行うことがより効果的
- 学生は状況を視覚化して質問への回答を考えるため、多くの場合で「どうやって」と「なぜ」という質問を加えることで、学生をより関与させることができる
- 一般的に、何が発生したかを知るよりもなぜ発生したかを理解する方が重要
- 学生が質問を理解しやすいように、使用する用語は使い慣れたものを選定
- 学生がどういった回答が求められているのかを正確に把握できるよう、状況や条件は明確にする
- 参考書などで文字になっている表現をそのまま使用することは非推奨
- 各質問は、1つのアイデアのみに集中し、教官は「誰が何をいつどこでどうして」を巧みに活用し、複雑な手順に関する質問について回答させる
- 学生の回答から、以前の指導内容が教官が期待するほど学生が吸収していなかったことを知るきっかけとなる場合がある
- トリッキーな質問や無関係な質問は避ける
教官は、学生が挑戦的であり質問に関する判断材料を有していることを確認
学生による質問への回答によって、次の訓練段階への移行可否を判断します。
以前に実施した指導内容について、教官が納得できるレベルの学生の理解度を確認できれば、訓練を予定どおり続行します。
学生が誤った回答をしたが、以前の指導内容について大方理解できている場合には、教官は訓練を進める前に学生が有している可能性のある誤解を止め、修正します。
このレビュー中に学生の理解度が不十分と判断される場合には、計画された訓練を進めても得られる効果がほとんど期待できないため、教官は訓練内容について完全なレビューに変更することを検討する必要があります。
学生が訓練内容について十分理解する前に指導を行っても、有意義な指導や学習が行われる可能性ははるかに低くなります。
個々の学生に合わせ教官が準備した一般的な質問を行います。
課目1:慣熟
課目2:航空機の慣熟と飛行準備
航空機への慣熟や飛行準備に関する2項目は、基本的に「教示」型の課目です。
この段階で非常に初歩的な質問以外にも学生が回答することを期待すると、最初の飛行で学生が劣等感を感じたり、後に苦手意識や自信喪失の経験となってしまう可能性があるため、注意が必要です。
課目3:付属装置の操作
キャブヒートを使用すると
- 回転計の読みにどう影響するか?
- なぜこの影響が発生するか?
- エンジン音はどう変化するか?
発生条件が整っているとして、どの外気温度の範囲でキャブレターでの氷結が生じるか?
訓練課目を実施中に、混合器の設定位置はどうなっているか?
機体の外部点検の目的は何か?
課目4:地上滑走 (タクシー)
強風時に地上滑走する際、操縦桿を特定位置で保持する必要がある。
次の風向の場合について説明せよ。
- 右後
- 左前
なぜ操縦桿をこうした位置で保持する必要があるか?
良好なエアマンシップを発揮するため、エンジン試運転を実施する前に事前注意すべき事項は何か?
課目5:姿勢と運動
本日の飛行に使用する機体で、巡航回転数で得られる指示対気速度はいくらか?
機体をバンク姿勢としておくと、どのような動きをするか?
大幅な出力変更を行うと、機体はヨーイングやローリングが生ずる場合がある。
- それはなぜか?
- ヨーイングはどのようにして防止されるか?
課目6:水平直線飛行
水平飛行中に出力を減じた場合、直線水平飛行を維持するためにどのような制御操作が必要になるか?
真っすぐ飛ぶには、翼を水平に保つ必要がある。それはなぜか?
一定の高度と一定の対気速度での飛行には、多くの理論が適用される。
減速した状態で水平飛行を行う場合に使用される例を挙げよ。
方位計を設定する際、機体を真っすぐに加速せずに飛行させる必要がある。
それはなぜか?
課目7:上昇
上昇の方法によってさまざまな固有の速度がある。
次に示す場合の速度は?
- 通常上昇
- 最大上昇率上昇
- 最大上昇角上昇
短距離で障害物を回避する離陸を行っている際、障害物を回避するためには最大上昇角を使用する。
なぜ最大上昇率を使用しないのか?
この機体で上昇中、直進を維持するため右ラダーを使用する。
なぜこれが必要か?
上昇から水平直進飛行に復帰する際も、初めは上昇出力を引き続き使用する。
なぜこうした手順を行うのか?
課目8:降下
一定の対気速度で降下する際にフラップを展張すると降下率が増加する。
これはなぜか?
障害物を回避するためのアプローチを行う際の最終進入速度を確認するのにパイロット運用ハンドブックを参照する。
飛行訓練で使用する機体で降下する際には、どの指示対気速度を使用するか?
パワーオフ降下中は、定期的に出力を最大付近まで使用する必要がある。この目的は何か?
正面風でパワーオフ降下中に、増速させることで飛行範囲を広げることができる。
なぜこうなるのか?
課目9:旋回
旋回前に効果的な見張りを実施する際、片側から反対側への流れるようなスキャニングではなく、セクター単位で見張り範囲をスキャニングする必要がある。
これはなぜか?
旋回時にロールインやロールアウトするときに、ラダーを使用する。この理由は何か?
一定高度を維持して急旋回を実施中、選定した開始速度を維持するためには、出力を増加させる必要がある。なぜ必要か?
パワーオフでの急降下旋回中に機首をある一定よりも下げると、速度が急速に増加する。
なぜすぐに処置を行う必要があるのか?
課目10:航続距離と飛行可能時間
重量増加は飛行耐久性 (飛行時間) にどのような影響を及ぼすか?またそれはなぜか?
風は飛行耐久性 (飛行時間) にどのような影響を及ぼすか?またそれはなぜか?
どの高度で飛行耐久性は最大になるか?
風は飛行範囲 (距離) にどのような影響を及ぼすか?説明せよ。
課目11:低速飛行 (スローフライト)
低速飛行の形態で針路と高度を維持して飛行中に対気速度の低下に気付いた場合、高度を維持するためにどのような操作を行う必要があるか?
機体が低速飛行を維持しているとき、最大飛行耐久性を発揮する場合よりも高い出力設定が必要となる。それはなぜか?
低速飛行の形態から通常の巡航形態に復帰する際、フラップを上げる前に必要な出力を設定し、対気速度がフラップ0°での失速速度以上であることを確認する必要があるのはなぜか?
フラップを段階的に上げることが推奨されるのはなぜか?
フラップ20°で低速飛行を訓練中、うっかりして機体を失速させたとして、失速回復のどの段階でフラップを上げるか?
低速飛行の場合、エンジンの温度と圧力の確認の際に特に注意を払う必要があるのはなぜか?
課目12:失速 (ストール)
失速からどのように回復するか説明せよ。 (「どう、何を、いつ、どこで、なぜ」)
ローリングを伴う失速から回復するとき、エルロンのみで回復しないのはなぜか?
パワーオン失速を実施する場合、失速の時の指示対気速度がパワーオフ失速の場合よりも遅いのはなぜか?
失速へのエントリーを設定するとき、なぜ翼を水平に、ボールを中央に保つ必要があるのか?
失速からの回復中に降下率をできるだけ早く止めるため、どの位置まで機首を上げてそれを維持すべきか?
急降下からの回復中、航空機が通常の巡航姿勢にある場合でも、回復中に失速を引き起こす可能性がある。なぜか?
課目13:初期スピンと完全スピン
初期スピンからどのように回復するかを説明せよ。 (「どのように、何を、いつ、どこで、なぜ」)
失速の時に、ヨーイングを発生させるとする。回復操作は、それ以上のヨーイングを防止することと、機首下げ、必要に応じた出力増加を同時に行う。それ以上のヨーイングを防ぐことが重要なのはなぜか?
パイロット運用ハンドブックで特別な記述がなされている場合を除き、スピンから回復するための操作は、「逆ラダーを一杯、スピン停止までエレベータを前方に制御、ラダーを中央に戻し、降下から抜け出す」ことである。スピンが停止するまでエレベーターを徐々に前方に制御することが重要なのはなぜか?
機体が完全スピンに入っているとき、エルロンだけでは下側の翼を持ち上げることはできない。なぜか?
課目14:螺旋降下 (スパイラル)
スパイラル降下からどのように回復するか説明せよ。 (「どのように、何を、いつ、どこで、なぜ」)
スパイラル降下中は、すぐに回復することが不可欠である。なぜか?
スパイラル降下は、速度が急速に増加するため、スピンとは異なる。スピン中に速度は増加しない。なぜか?
課目15:すべり飛行 (スリップ)
機体が過度な機首上げ姿勢で横滑りすると、回復操作中に機首を下げないと機体が失速するのはなぜか?
バンク角が極端に急激な横滑り中は、ヨーイングを制御できない場合がある。なぜか?
課目16:離陸
次の手順を説明せよ。
- 横風離陸
- 不整地離陸
- 短距離離陸(「どのように、何を、いつ、どこで、なぜ」)
不整地離陸の際、機体が浮揚したらできるだけ早く安全な高度で水平飛行を行う必要がある。この理由は何か?
外気温度が高温な場合に機体の離陸距離にどのような影響を及ぼすか?またそれはなぜか?
横風離陸の際に、機体が地面から安全に離れたらすぐに、機首をわずかに風上側に向ける必要がある。この操作の目的は何か?
横風離陸で風上側に向けるとき、なぜ調和のとれた旋回を行うことが重要なのか?
大型機の着陸後に小型機が離陸する場合、離陸地点は、大型機の接地点の奥側まで伸ばすのはなぜか?
荒地からの離陸では、柔軟地での離陸と同じ基本操作法を用いる。なぜか?
大型機の離陸後に離陸する際に注意が必要な理由を説明せよ。 (「どのように、何を、いつ、どこで、なぜ」)
前輪のある機体で横風離陸中、過度の前方エレベーター圧を加えた場合、機体は突然、滑走路の側面方向に向けて制御できない変化を起こすことがある。何が原因か?
課目17:場周飛行 (サーキット)
サーキットでダウンウィンドレグを飛行中、管制塔に着陸許可を与えられた。サーキットを完了して着陸しなければならないか?
サーキットが設定されていない半面からサーキットのダウンウィンドレグに進入する場合、アクティブな滑走路の中間点をサーキット高度で横断する必要がある。なぜサーキット高度を維持する必要があるか?
課目18:進入と着陸
小型機の横風着陸では、風上側の翼が下がる。なぜか?
着陸滑走路で強い横風がある場合、その滑走路の使用を選択する前に「横風制限」の性能表を調べる必要がある。なぜか?
前輪のある機体で横風接地中、過度の前方エレベーター圧を加えた場合、「ホイールバローイング」現象が発生する可能性がある。この現象をどう防ぐことができるか?
ホイールバローイングから何が起こる可能性があるか?
障害物を越える短距離進入を実施する場合、良好なエアマンシップを発揮するには、着陸のフレアを行うまで出力を完全に減少させないことが必要である。なぜか?
障害物を越える着陸進入中には、対気速度の監視が不可欠である。なぜか?
課目19:初単独飛行
既存の条件に該当する質問
課目20:偏流による錯覚
強風時に低高度で飛行中、風上から風下への旋回中に、危険な錯覚が飛行に影響を及ぼす場合がある。
- その錯覚は何か?
- なぜ危険なのか?
強風時に低高度で風下側に飛行する場合:
- どのような錯覚が発生する可能性があるか?
- これが危険となる可能性のある条件を挙げよ。
背風から正面風方向に旋回する際、実際の飛行経路は必ずしも上空での飛行経路に沿うとは限らない。なぜか?
課目21:予防着陸
予防着陸を行うために、選定した着陸地の点検中、地表面の状態、風速、障害物などに考慮する。この点検について、次に答えよ。
- 使用する最低の対気速度はいくらか?
- 地上からどの高さで飛ぶか?
- なぜ地表面付近を操縦する際の対気速度の監視が重要なのか?
- 良好な視程状況で飛行する必要があるサーキットの大きさとは?
緊急事態に予防着陸を行うことはあるが、他にどういった実用的な用途があるか?
課目22:不時着陸
エンジン故障時、通常「MAYDAY」遭難通信を行う前に、出力損失時の点検を完了させるのはなぜか?
不時着陸のための進入中、パイロットが意図する接地点への到達を確認した後にフラップを下げる必要があるのはなぜか?
不時着陸のための進入中に理想的な滑空速度を維持することがなぜそれほど重要なのか?
不時着陸のための進入中は、旋回時に緩旋回から中程度のバンク角を超えないことが推奨される。バンク角を増加させた場合に機首位置の姿勢についてどういった操作を取る必要があるか?またそれはなぜか?
課目23:パイロット航法
カナダ航空規則 (CARs) では、「航空機の機長は、飛行出発前に目的の飛行に適した入手可能な情報に習熟する必要がある。」と示しているが、場外飛行においてこの要件をどのように満たすか?
10°偏流線を利用すると、飛行前に算出された以外の偏流があった場合に、航跡を取り戻すことができる。 この方法で飛行する場合、なぜ精確な方位管制が必要なのか?
場外飛行では、対地速度の確認が不可欠であるが、針路設定後、数分以内に対地速度の確認をしようとすると、どのような問題が発生するか?
倍角修正法を使用する場合、実際の偏流誤差を認識し修正する前に、適切な距離を飛行する必要がある。なぜこれが必要なのか?
VOR受信機を利用してVOR無線局との位置関係から相対的な自機位置を特定しようとする場合、現在の方位を特定するには、方位セレクターの「FROM」の読み取りが必要となる。「TO」方向にある局の方位に向けて飛行する場合、正確な磁方位を決定して飛行するためにはどのような手順を行う必要があるか?
課目24:計器飛行
機首位置を知るための計器として、姿勢計、対気速度計、高感度気圧高度計、昇降計がある。直線飛行において、突然の姿勢変化が生じた場合、どの計器がこの変化を最初に示すか?
なぜ他の計器は姿勢変化をすぐに示さないのか?
外部の視覚的参照が失われた際に、身体感覚を一切無視して、計器に完全な信頼を置くことが不可欠である。 「ズボンのお尻部分」の感覚(自身の感覚)以外で、これらの偽の感覚を引き起こす可能性が最も高い体の部位はどれか?
方位計とマグコンパスを少なくとも15分ごとに同期させる必要がある。なぜか?
課目25:夜間飛行
夜間の離陸中は、離陸後の正方向の上昇が不可欠である。昇降計で、実際に確実な上昇となっていることが確認できる。離陸上昇中のこの間に姿勢計に完全に頼ることができないのはなぜか?
夜間着陸時、接地前の「ホールドオフ」では、着陸面と飛行経路角を小さくするために出力を使用する。着陸面のおおよその高さを決定するために使用できる外部の参照事項は何か?
夜間のVFR中に雲に遭遇した場合には、視覚情報を再度すぐに得るためには180°旋回を行う必要がある。この旋回には、どのレートターンを使用する必要があるか?
課目29:緊急手順
パイロットは緊急事態の可能性を減らすためにどのような対策をとることができるか?
正しい緊急処置を思い出すための最良のテクニックは何か?
緊急事態に対処する際にATCに状況を伝えることが重要なのはなぜか?
飛行教官ガイドまとめ①~④
https://flyinbc.com/inst-guide4
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