ROC-Aとは?
ROC-A、正式名称「Restricted Operator Certificate With Aeronautical Qualification」とは、無線機を搭載した航空機を運用する場合に必要になる免許で、全てのパイロットが取得します。
生涯有効で更新不要の無線資格で、カナダ運輸省ではなく、カナダ革新科学経済開発省が発行を担当しています。(2015年にカナダ産業省から改称されましたが、あまり浸透しておらず、国内でもまだ「カナダ運輸省」での認識が強いことから、本記事内でも旧称で記載しています。)
試験の受検や資格の保有に際し、年齢や国籍による制限はありません。
使用できる無線機の範囲は「単純な外部スイッチを備える出力250W以下で、装置内に周波数を決める機能があるもの」と限定されています。つまり、多くの航空機に搭載されている押しボタン式で無線発信でき、周波数を自由に決定できるタイプのものが該当します。
試験について
カナダ政府が認定する試験官の裁量で試験を実施可能ですので、日本のように試験日が年に何回と決まっていたり、会場が都市部に限られるようなこともなく、近くの試験官に直接コンタクトして予定を調整することができます。
フライトスクールで認定資格を保有していたり、学校が担当の試験官と協定を結び、学校の責任でいつでも受検できるということも多いようです。
試験実施要領
筆記試験と実用試験、口頭試験の3部で構成されます。
筆記試験は制限時間1時間以内、25問の選択式(4択)で、70%以上で合格となります。
受験料については、担当のカナダ革新科学経済開発省は特に定めていません。学校や試験官によって異なり、学校の基本授業料に含まれる場合や$50、$100など様々です。受検予定先でご確認ください。試験の際には、有効なパスポートや免許証、出生証明、国籍証明などのID提示が求められます。
試験の目的
試験を通じてこれらが確認されます。
当記事では、2010年2月発効の第3版スタディガイドにならい、次の項目ごとにまとめを行っています。
1. 各種規則(Regulations)
2. 実際の運用方法(Operating Procedure)
3. 遭難時の通信方法(Emergency Communications)
4. 緊急時の通信方法(Urgency Communications)
通常の運用手順となる「1.各種規則」と「2. 実際の運用方法」は当記事で通常編とし、
緊急時の手順となる「3.遭難時の通信方法」と「4.緊急時の通信」を後半の緊急編として分けています。
それでは、実際に各項目を見ていきましょう。
各種規則(Regulations)
航空通信における優先順位(Priorities of Communications – Aeronautical Service)
航空界における通信の優先順位は次のとおり。
1. 遭難
2. 緊急
3. 無線方位捜索関連
4. 飛行安全関連
5. 気象情報関連
6. 飛行一般
7. 国連業務関連
8. 緊急要請のある政府関連
9. 通信業務など行政関連
10. その他の航空関連
通信のプライバシー保護(Privacy of Communication)
通信する者はプライバシー保護に留意すること。
無線通信法に基づき、認められた通信業者やカナダ政府機関、裁判所などを除いて通信の内容や存在を暴露してはならない。ただし「ALL STATIONS」宛の遭難・緊急通信や安全に関する交話を除く。違反者は、個人:$25,000以下の罰金または1年以下の拘禁、個人以外:$75,000以下の罰金。
通信の管制(Control of Communication)
航空管制機関との通信において、航空機は管制機関からの指示や通信時間、周波数選定に関する全てに従うこと。ただし、遭難・緊急通信等の実施時は除く。
管制する側:地対空では地上の管制機関、航空機間では呼ばれた側。
呼ばれた側は、呼び出しへの合意の可否を通信で示し、同意する場合はそれ以降指定されたチャンネルや周波数を聴取する。
不必要な通信と妨害(Superfluous Communications and Interference)
航空機間の通信:飛行安全に関する事項と航空一般のみ。不敬や卑猥な言葉の使用による不必要な通信は固く禁止。違反者は、個人:$5,000以下の罰金または1年以下の拘禁、個人以外:$25,000以下の罰金。
他局間の通信への干渉や遮断は禁止だが、遭難・緊急通信など、より高優先度の通信の必要がある場合を除く。違反者の罰則は上記と同様。
遭難信号の誤発信(False Distress Signal)
遭難信号や交話、交信、電報などを、不必要に意図して発信したり、誤りや不正な目的で結果として送信される操作を禁止。違反者には、個人:$5,000以下の罰金または1年以下の拘禁、個人以外:$25,000以下の罰金。
実際の運用方法(Operating Procedure)
話し方(Speech Transmission Technique)
無線通信の効果的な使用は、使用者の話し方や発音に左右される。子音をはっきり発音すると通信では曖昧に聞こえるし、同じ母音を含む音が似たような長さの言葉は似たように聞こえるので、適切な発音には注意が必要。
通信使用時は、各語が繋がらないように、平易で明瞭に話すこと。叫ぶように喋ったり、一言で続けて喋ったり、速く喋るのは避ける。通信使用時は、以下に留意すること。
速さ:遅すぎたり速すぎたりせず、 受信した側がメモをとれるくらいの一定の速度で話す。
リズム:単語間にはさむ”er”や”um”のような不要な発音を避け、 通常の会話のリズムと発音を維持する。
ヘッドセットのマイクの使い方としても、「ゆっくり話すこと」が大事と言えます。
日時(Time and Date)
24時間を4桁「HHMM」で表現。読み方は1文字ずつ。
標準時間帯として協定世界時を通常使用する。別の使用時間帯と区別するため、グリニッジ標準時やZタイムが使用される場合もある。一つの時間帯でしか運用されない場合は、ローカル時間帯を使用することもある。
最初の2桁を日にして「DDHHMM」の6桁にして表現する場合もある。
アルファベット(ITU Phonetic Alphabet)
聞きなれない用語を使用する場合には、国際電気通信連合(ITU)が定めたアルファベットのフォネティック呼称法が錯誤を招きにくいため、コールサインなどアルファベットを個別で発音する場合や、通信状況に応じて使用する。
アクセントは「Hotel」「Juliette」「Papa」「Quebec」は後ろ側に、「Sierra」は真ん中に来るので、日本語のカタカナでの感覚と異なるため注意が必要です。
数字は「3」はTREE、「5」はFIFE、「9」はNINERと発音します。
数字(Transmission of Number)
数字:1000未満は1文字ずつ読み、1000の単位だけ“thousand”を付ける。
小数点以下を含む数字:上記と同様だが、小数点を“decimal”と呼称。
お金の単位:書かれた順に読む。2桁以上でも1文字ずつ。
高度:千と百のフィート単位で読む。フライトレベルの場合は一字ずつ分けて読む。
航空機種番号、風速、雲の高さ:まとめた形で表現。
時刻:協定世界時(UTC)で読む。
「ZERO ZERO FOUR FIVE HOUR」といったように他の数字と区別するためにHOURを付けることもあるようです。実際の交話で聞いたことはありませんが。。
航空機の針路:国内の南部の空域では磁方位、北部の空域では真方位で3桁で読む。
飛行場標高:頭に“field elevation”を付けフィートで表現。
手続き上の語、フレーズ(Procedural Words and Phrase)
全ての通信の用語の使用法を決めるのは現実的でないが、“OK”, “REPEAT”, “TEN-FOUR”, “OVER AND OUT”, “BREAKER BREAKER”,“COME IN PLEASE”などのスラング表現は使うべきでない。適切に使える用語は付属B表参照のこと。
コールサイン(Call Signs)
各機を識別するため個別のコールサインが割り当てられている。少なくとも通信設定でイニシャルコンタクトするときと、通信を終了するときは使用すべき。全てフォネティックで発音される。
航空機のコールサインは基本的に登録番号と同じで、カナダ運輸省にアサインされる。
カナダの旅客機(Canadian Air Carrier)
カナダの旅客機は、社名に便名や登録番号の下3桁を付けてコールサインとする。
カナダの個人登録機(Canadian Private Civil Registration)
プライベート機は、製造社名か航空機種名に登録番号の下4桁で呼称する。
対空地上局・管制機関(Aeronautical Ground Stations)
対空地上局は、空港名か地名に機能を示す用語を付けコールサインとする。
航空機のコールサインのアサインはカナダ運輸省ですが、地上局のアサインはカナダ産業省が責任をもっているようです。
無線交話の呼び出し要領(Radiotelephone Calling Procedure)
一般に、無線交話の呼び出し要領は、管制機関を呼び出す航空機による。所定の空域に到着したら呼び出しを行うが、地上の管制機関から先に呼び出すこともある。
地上局が多数機からほぼ同時に呼び出された場合は、その応答順序は交話内容の重要度によって決められる。
呼び出し法(Calling)
交話を開始する前には、話そうとするチャンネルをしばらくモニターし、既に通信中の通信局を邪魔しないように配慮する。もし干渉してしまった場合は、最初の中断時に少し待つ。ただし遭難・緊急通信の場合は、いつでも割り込める。呼び出す先のコールサインは、常に最初に呼称する。
特定の1つの局を呼び出す場合(Single Station Call)
特定の局を呼び出そうとするとき、次に示す順番で交話する。
全ての局を呼び出す場合(All Stations General Call)
一定の範囲内にある全ての局を呼び出したいとき、“ALL STATIONS”を使用し、通常と同じ手順で呼び出す。
複数の局を呼び出す場合(Multiple Station Call)
同時に複数の局を呼び出すとき、任意の順番で呼び出せばよいが、呼び出した自身のコールサインと区別するために“THIS IS”を必ずつける。通常、呼ばれた順に応答する。
応答法(Replying)
自分が呼び出された場合は速やかに応答し、交話を継続できる場合は“GO AHEAD”、できない場合は“STAND BY”に加えて予想待機時間を分単位で示す。
呼び出しが聞こえたものの自分宛か不明である場合は、呼び出しが再び繰り返されるまで応答すべきでない。自分が呼ばれたのが明らかだが、誰が呼んだのが不明な場合は、速やかに“STATION CALLING”に自身のコールサインを付け“SAY AGAIN”及び“OVER”と応答する。
通信を終えるときは、単純に“OUT”を付ける。これで「交話終了、応答不要」の意味になる。
訂正と反復法(Corrections and Repetition)
交話の中で言い間違いをしたら、”CORRECTION“を付けて正しい語に訂正する。
受信した側が、再送を要求する場合は、交話内容全体なら“SAY AGAIN”、一部分だけなら次の用語を使用する。
交話内容の取扱い方(Message Handling Procedure)
メッセージ送信時は、発信前に交話内容を決めておくこと、他の通信を邪魔しないように少し聴いておくこと、出来る限り簡潔明瞭に標準用語を用いることに注意する。
基本的な交話の構成は、一般に次の4部からなる。
2回目以降の通信では、“THIS IS”や “OVER”は省略され、錯誤の恐れがなければ、コールサインも “SCHEFFERVILLE RADIO, BC, CONFIRM RIGHT ON S” のように省略される。
無線の点検法(Signal or Radio Check)
信号や無線の点検を実施する場合は次の手順による。
無線点検の種類は、次のとおり分類される。
お疲れ様でした!前半編はここで終了です。
第3章の「遭難時の通信方法(Emergency Communications)」からの後半の緊急編は、下記のリンクからお進みください。
管制機関→航空機の場合(管制機関が管制局)
PIPER C-FXQQ,
THIS IS OTTAWA RADIO,
GO AHEAD ON TOWER FREQUENCY 122.1 OVER.
航空機→管制機関の場合(この場合も管制機関が管制局)
OTTAWA RADIO,
THIS IS PIPER C-FXQQ,
ON FREQUENCY 122.1 OVER.
航空機A→航空機Bの場合(呼ばれた側の航空機Bが管制局)
CESSNA C-FXQT,
THIS IS PIPER C-FXQQ,
ON FREQUENCY 119.7 OVER.
PIPER C-FXQQ,
THIS IS CESSNA C-FXQT,
CHANGE TO SEARCH AND RESCUE FREQUENCY 123.6 OUT.