カナダの道路を走っていると、後ろに「N」を付けた自動車を見かけたことはありませんか?あれは一体何なのか、緑色のNなので、何となく初心者マークのような気はするけれど・・・
この記事では、カナダの初心運転者プログラムについて、紹介していきます。
日本語に寄せて「初心者」や「初心運転者」とここでは称していますが、本来の意味では、「段階的免許制度」などと解釈するのが適当です。
本免許取得までの長い道のり・・・
制度全体の流れをまず図示すると次のようになります。
このプログラムは、安全で信頼あるドライバーとしての技術と心構えを身に着けるための運転練習制度です。日本人の皆さんが、このプログラムを使って免許を取得することはほとんどないと思います。
しかし、カナダの若者である彼らは、 最短3年間、免許をすでに保有している人を教官として同乗させたり、自分ひとりで運転を練習したり、涙ぐましい努力と辛い期間を過ごしていることを知っていただけたらと思います。
彼らには更にその訓練の集大成として、学科試験と2回の路上実技検定が待っているのです・・・
学科試験と視力検査
まず最初の関門は、学科試験です。
ICBCの運転免許センターにあるタッチスクリーンタイプのコンピューター端末上で試験を実施することができます。
問題は全て選択式で、制限時間1時間で50問中、40問以上の正解で合格となります。中でも10問は標識に関する問題です。試験料は$15で、不合格になると7日間は再受検ができなくなりますが、何度でも再受検は可能です。
視力検査も併せて実施します。眼鏡の使用者は、検査時に着用します。私の場合は、日本でも最近普及してきた「覗き込むタイプ」の視力測定装置でした。試験官のお兄さんの指示に従って、質問に回答していきます。
第1段階:Learner stage(練習期間)
見事、学科試験と視力検査に合格すれば、練習ライセンスをもらうことができ、監督者(教官)を乗せて運転する練習期間が始まります。
- 練習期間は1年間
- 16歳以上であること(19歳未満は親の同意書が必要)
- 本免許証を保有する25歳以上の運転者を教官として常に助手席に同乗させる
- 運転中は車の後部に常に 「L」マグネットを掲げておく
- アルコール・ドラッグは完全にダメ
- 教官以外に乗せられる乗客は1名だけ
- 電子機器はハンズフリーでも使用禁止
- 深夜0時から早朝5時までの運転禁止
ただ1年間待てばいいの?
いいえダメです。
この練習期間をICBCは非常に重要な練習期間と位置付けていて、練習を実施した証として「運転練習記録」を付けなくてはなりません。ここでは、最低60時間の運転の記録が求められ、下記の指定練習項目を実施していく必要があります。
- 1. Pre-trip check(出発前点検)
- 2. Starting up and pulling away(エンジン始動と発進)
- 3. Stopping(停車)
- 4. Backing up(バック)
- 5. Space margins, See-Think-Do(車間距離の取り方)
- 6. Driving straight through(直進)
- 7. Right and left turns(右左折)
- 8. Driving on hills and curves(カーブや坂道の運転)
- 9. Starting and parking on hills(坂道の発進・停車)
- 10. Stall parking(駐車場での停め方)
- 11. Two and three-point turns(2点転回と3点転回)
- 12. Parallel parking(縦列駐車)
- 13. Sharing the road, yielding(道路の譲り方)
- 14. Lane position, lane changes(車線変更)
- 15. Driving in traffic(交通の中での運転)
- 16. Choosing a safe speed(安全速度の選択)
- 17. Driving on highways and freeways(高速道路の運転)
- 18. Driving at night(夜間の運転)
- 19. Driving in bad weather(悪天時の運転)
- 20. Hazard perception(危険予知)
ひぇ~。。
教習所はあるの?
公営の自動車運転教習所のような施設はありませんが、ICBC認定の自動車学校の制度は存在しています。 BC州内にその数なんと1252校!(2020年1月現在)
訓練者の要望に応じて、単純に運転だけを教わるものから、学科教習を含むもの、またICBCの認定訓練プログラムを実施するものまで様々あります。
このICBC認定訓練プログラムというのは、16時間以上の学科教習+12時間以上の路上教習という内容になっていて、技術を磨けるだけでなく、次のような特典が用意されているのです。
このプログラムの履修後、無事故・無違反で6ヵ月を経過すると、もれなく6ヵ月前倒しで次のステージにいける!すなわち、1年間のLライセンス期間を半分に短縮することができるのです!
そしてなんと高校によっては、単位を取得することができる!
だからこんなに数が多くなるほど需要があるんですね!
高校生なのにお父さん(教官)を乗せて彼女とドライブに行きたくないですからね。。早く次の「N」に行きたいでしょう。
公認の自動車学校は、下記のリンクで地域ごとに検索することができます。留学生などを対象に、 必要に応じて各言語に精通した教官を探すことも出来ます。
そして路上実技検定(クラス7)
2回あるうちの最初の路上実技検定は、クラス7というカテゴリーでの検定です。
ICBCの検定官を乗せ、指定された経路を走行しながら安全性についての確認をされる45分間の検定です。主に、安全で円滑に車両をコントロールできるかを検定官は重点的に見ていきます。
Lライセンス自体は2年間有効なので、1年以上経過して準備が整った時点で予約をして受けることになります。検定料は$35で、不合格になっても再受検は可能ですが、初回は14日間は再受検ができなくなります。なお、2回目は30日間、3回目は60日間に延長されていきます。
第2段階:Novice stage(初心者期間)
無事に練習期間である1年間の運転練習を終え、路上実技検定に合格すると、初心者ライセンスをもらうことができ、やっとひとりで運転できる初心者期間が始まります。
- 練習期間は2年間
- 乗せられる乗客は1名だけ(25歳以上の本免許を保有する運転者を同乗させるか、同乗者が近親者であればOK)
- 運転中は車の後部に常に 「N」マグネットを掲げておく
- アルコール・ドラッグは完全にダメ
- 電子機器はハンズフリーでも使用禁止
Lライセンスに比べると、教官を乗せなくてよくなっていたり、深夜の運転制限なども解除されていますね。
ちなみに、極微量でもアルコールやドラッグが検問などで検知されてしまうと、こちらの記事にも記載していますが、2年間の練習期間はリセットされ、その日から2年間のカウントがリスタートすることになります。。
そして路上実技検定(クラス5)
2年間の練習期間を無事に終え、その最終段階として2回目の路上実技検定を受けることになります。ここではクラス5というカテゴリーで受検することになり、45分間の指定された経路の走行による検定に見事合格すると、夢にまで見た「制限なしの本免許」が交付されることになります。
受検料は$50です。もし検定に不合格となっても、練習をして再度受検することができますが、Lライセンスの時と同じく、14日間は再受検ができません。2回目の30日間、3回目の60日間の待機期間の発生もLライセンスのときと同じです。
余談ですが、日本と同じ状況で、免許を取った後の若者の多くは、嬉しさのあまり免許を持って自撮りをし、インスタにアップしてしまうそうです。こうして情報をさらしてしまうのがにわかに社会問題になっているようです。。
くれぐれも情報管理には気を付けましょう。。
まとめ
いかがでしたか。
長い道のりであるカナダBC州の初心運転者プログラムについて、理解していただけたでしょうか。
もしあなたが「L」も「N」もつけなくていいドライバーだったら、街で見かけた彼らの車に今までよりも優しく道を譲ってあげられるのではないかと思います。