アメリカやカナダなどは、国土が非常に広大です。
市民の生活から切り離せない「自動車の利用」が、これまた生活や交流に欠かせない「飲酒」とどのように共存し、そして日本では絶対的に禁じられている飲酒後の運転について、どのように考えられているのでしょうか?
各州によって詳細の規定が異なることから、ここではブリティッシュ・コロンビア州を例にとって罰則規定を軸に飲酒運転についての考え方をみていきます。
先に結論から
先に結論を示すと、カナダでは、
少しだけ飲酒しても法律上運転することができます。
では具体的にどれくらいの量までが許容されるのか、また罰則規定はどのようになっているのかを見ていく前に、まずお断わりをします。
飲酒運転に関する基礎知識
カナダでも日本と同じ単位を使用する?
日本では呼気中アルコール濃度を使用するのが一般的ですが、カナダでは血中アルコール濃度を示すBAC(Blood Alcohol Concentration)と呼称し、「0.05 BAC」といったように単位化して使用しています。
どうやって飲酒運転を取り締まる?
検査要領については日本とほとんど変わらず、通常の巡回の中で、警察官が飲酒運転の疑いのある車両を停車させ、検査します。また、検問を特定の箇所で実施することもあります。飲酒運転が多くなると予想される金曜日の夜などは、遅い時間まで取り締まりを実施していることもあります。
検査の要領ですが、こちらも日本と同じで、検知器を用いて呼気で検査を実施します。
5段階の罰則
BC州では、飲酒運転の悪質度に応じて、次に示す5段階の罰則が規定されています。
【1】12時間の運転禁止(初心運転者のみ)
初心運転者は量にかかわらず極微量でもアルコールが検知された場合、12時間の運転禁止措置がとられます。
アルコールだけでなく、大麻やコカインの反応が出た場合も、同じく対象になります。
この罰則を受けるとどうなる?
L→N→本免許という、ただでさえ長い3年間の道のりがリセットされるのは痛いですね。
さらに・・・
運転改善プログラムにしたがって、過去の違反歴が照会され、状況によっては追加の罰則が科される可能性があります。
また、血中アルコール濃度が 血中100mLあたり50mg以上であったり、薬物の影響が顕著だと判断された場合、初心者だからと許してもらえず、通常の運転者と同じ罰則が適用されます。
【2】24時間の運転禁止
警察官が、運転者が飲酒状態ではないかと何らかの合理的な根拠に基づいて察知した場合、24時間の運転禁止通知を発行します。(薬物の影響を察知した場合も同様)
この罰則を受けるとどうなる?
所定の運動検査とは? 車両運送法で以下の3つが定められています。
水平眼振検査 / 歩行検査 / 片足立ち検査
出典 fieldsobrietytests.org
異議を申し立てたいときは・・・
この運転禁止がアルコールの影響と疑われる場合、警察官に対して
認可された呼気検査装置を用いた血中アルコール濃度検査を求めることができます。
この運転禁止が薬物の影響と疑われる場合、警察官に対して
所定の運動検査の実施を求めることができます。
さらに・・・
運転者がフラフラ運転していたり、停まるところでしっかり停まっていなかったりという危険な飲酒運転の兆候を警察官が察知した時点で、停車させて罰則を与えることができるんですね。
一方で、冤罪や不当な処罰を防ぐためには運転者自身が、問題ないことを証明しなくてはならない、日本とは違った考え方で取り締まりが行われています。
【3】即時運転禁止(3日間/1週間/1ヵ月/3ヵ月)
もし警察官が、運転者が飲酒運転状態にあるという合理的な疑いをもった場合、または警察官が 認可された呼気検査装置を用い、血中アルコール濃度検査をし、その結果で与えられる罰則です。
警察官はこの罰則を運転者に与えようとする場合、運転者にセカンドチャンスとして、 別の認可された呼気検査装置を用いてもう一度呼気検査をさせなくてはなりません。
もし結果が異なった場合は、低い方の数値が適用されます。
もし本当に結果に疑問をもち、警察官がもう一度の検査を提案してくれなかった場合は、堂々と主張してください!
もし呼気検知器に「WARN」の結果が表示されたら・・・
「WARN」= 血中アルコール濃度が血中100mLあたり50mg以上=0.05BAC
初回 | 3日間運転禁止 | 罰金$200 | ― |
過去5年で2回目 | 7日間運転禁止 | 罰金$300 | 責任ある運転プログラム参加 |
過去5年で3回目 | 1ヵ月運転禁止 | 罰金$400 | 責任ある運転プログラム参加 車両点火装置強制ロックプログラム参加 |
0.05BACとなる血中濃度100mL中の50mg以上とはどれくらいの量か?
日本の基準で考えると、「酒気帯び運転」の基準は、呼気中濃度0.15mg/ℓです。血中:呼気中は1:5で換算できますので、0.03BACに該当します。
すなわち、この時点で日本の酒気帯び運転の検挙基準を遥かに超えているんですね。
もし呼気検知器に「FAIL」の結果が表示されたら・・・
「FAIL」= 血中アルコール濃度が血中100mLあたり80mg以上 =0.08BAC
呼気検査を拒否した場合も同様です。
さらに・・・
【4】行政処分による運転禁止(3ヵ月)
どういった場合に適用される?
警察官は下記の状況を認めた場合に、この罰則を運転者に与えることになります。
さらに・・・
薬物の種類とその量についての細部の基準も示されています。行政処分だけあって、間違いがあってはならないと評価方法など細部にわたってしっかり定められていますね。
【5】刑事処分による運転禁止
カナダ刑法では、アルコールと薬物、またはその両方の影響による運転に関する罰則の規定を設けています。
呼気、血液、唾液、尿の検査や、運動検査などに従わない、もしくは規定の基準を超えた場合に、警察官は刑法に基づいて運転者を処分することとなります。
もし裁判所で有罪判決がなされた場合、次の処罰が行われます。
さらに・・・
さらに下記のようなおまけもついてきます。
実際の検挙実績のデータ
BC州では各種データを公開しており、その中で交通安全に関する部門である「RoadSafetyBC」が飲酒運転関連の検挙数を月別にデータ公開しています。
まずは、下の表をご覧ください。
ものすごい数の検挙数が報告されています。。
一番左が【3】即時運転禁止に該当しますが、0.05BAC超の「WARN」は毎月300人~500人が検挙されています。すなわち、毎日10人~15人は0.05BAC超で警察に検挙されていることになります。もちろん、平日は少なく、週末は多いでしょうから、検問などを通じてどれだけの規模で検挙がされているか現実を実感して頂けたかと思います。
また、0.05BAC超で処分をもらう人は、そのうち約1割の人が2回目を、そのうち更に約1割の人が3回目の検挙をされているのも面白い事実です。
不思議なことに、「FAIL」の欄を見てみると、なんと「WARN」で検挙される数より多いではありませんか。しかも検査拒否をする人もその中の2割程度いることを考えれば、かなりの数になります。おそらく警察は、なんでもかんでも捕まえて呼気検査をさせているのではなく、本当に飲酒運転による危険を感じたときに検挙しているのではないかと推測します。
他にも、ドラッグに影響による行政処分の基準を開始してからの検挙はまだゼロであったり、暖かくなる7~9月の夏季に検挙数が増加しているなど面白い事実も分かります。
まとめ:飲酒運転での検挙を防ぐためには・・・
いかがでしたか?
BC州では、昨今の飲酒運転に起因する事故の増加に伴い、罰則を強化しているところです。
警察にお世話にならないためには、飲酒後の運転を控えるのがベストですが、車の利用とアルコールを含む日々の生活とが切り離しにくい環境にありますから、最低限、次のことを心掛けていきましょう。
自分の身体的特性を理解しておく
基準数値上では、カナダの法律は、日本の酒気帯び運転の検挙基準に比べて緩い設定になっています。しかし、警察官が飲酒運転の兆候を察知したり、疑念を抱いた場合には容赦なく検挙できる制度になっています。
体調にも左右されますが、自分がどれだけのお酒を飲むと、どれだけの反応が出て、またどれだけの数値が出るのかを日ごろから理解しておくことが大切です。
自宅や車内にあるアルコール検知器を準備しておき、いつでも測定できるようにしておくのも大事です。
運転代行サービスの利用など代替案を持っておく
運転代行サービスはカナダにもありますが、あまり目にすることはありません。
英語で「Designated Driver」と呼ばれ、DDと略称されることもあります。
ウェブ検索すると次のようなサービスにヒットします。
ここではピックアップに$17.5、代行運転1キロごとに$2.5、+10%の税で24時間対応可能の運転代行を行ってくれます。
決して安価なサービスではありませんが、万が一の場合のためにこういったサービスの存在を知っておくことは大事ですね。