本記事は、カナダの西海岸にある州、ブリティッシュ・コロンビア州の最低賃金についてのまとめで、政府の公式発表を元にしています。
バンクーバーへのワーキング・ホリデーなどに来る方、学生として留学に来てビザの許す範囲でアルバイトをしようと思っている方などが最低限知っておかなければならない内容です。
最低賃金(Minimum Wage)とは
結論から言うと、
バンクーバーを含むブリティッシュ・コロンビア州における最低時給は、現在、
と定められています。日本円で約1168円相当です。(1カナダドル=80円換算)
最低賃金とは、雇用主が労働者に対して支払う法定の最低賃金ラインです。これは、年齢には関係ありません。また、特殊な職業には別の基準が設けられています。
これまでの推移とこれからの計画
2018年6月まで、BC州の最低賃金は$11.35と定められてきました。
そこから、次の図のような計画で徐々に賃金の上昇が計画されています。
最初の賃金上昇は2018年6月に行われ$11.35→$12.65に引き上げられました。これは単なる1ステップにすぎません。その後3年間で段階的に$15.20まで引き上げる計画です。
なぜ年々増額させるのか
ブリティッシュ・コロンビア州で働く全ての労働者は、妥当な賃金を受ける権利があるという考えに基づき、州政府が適正な労働賃金について議論・監督する委員会を設立しています。
この委員会は、労働部門の代表とビジネス部門の代表で構成され、BC州の広く人々を調査し、時給15ドルの達成と、その他の特定職種への最低賃金の値上げを行い、労働環境の妥当性を常に追求しています。
最低賃金労働者を妥当な賃金にすることで、最低賃金と生活コストの不一致をなくし、BC州で働くすべての人が前を向いて生活していけるように計画しています。
最低賃金の保証は、雇用する会社・店舗に課せられた義務です。
給料の払い方には関係ないので、時給でも出来高制でもこれが適用されます。
働く人の現実
でも実際には・・・
働く人のイメージと現実に働く人に差がある!
そして、働く人が働く理由は、現実的に生活をするために必要なもの!
BC州の最低賃金で生活するということとは
収入:各家庭の平均生活費は、1人あたりで月に$1,967必要と言われています。
これは、税金を差し引く前のもので、週40時間を最低賃が仮定される前の水準である時給11.35ドルで週40時間働くことを想定して計算しています。ここには通信費、養育費、医療費を含んでいません。
支出:一方、必要経費は、合計$2,283と言われています。
これは、食費$762+移動費$365+家賃$1,007+その他経費$150で計算されます。
すなわち、BC州で改定前の最低賃金で生活するということは「収入$1,967ー支出$2,283=-$316」となり赤字になるということです。最低賃金では、自立して生活することは極めて難しいということになります。
最低賃金を上昇させると誰が得をするのか
BC州で働く労働者の約20%が、時給$15以下で働いています。そのうち52%が25歳以下の若者で、大部分が学生、61%は家族と生活している者です。また、女性の62%が最低賃金で労働しています。
こうした状況から、最低賃金を時給15ドルへ増額することで、約40万人の労働者に影響があると言われています。若者や女性の自立を促進する効果が期待できます。
職種によって異なる最低賃金
これまで見てきた最低賃金は一般的な業種に適用されるものですが、次のような特殊な業種についてはまた別の最低賃金が適用されます。
酒類提供者
酒類提供者は、いわゆるレストランなどでお酒をお客さんのところまで持っていってサービングする業種です。2018の6月から毎年6月に徐々に増加させていき、2021年に一般最低賃金を15.20ドルまで引き上げる計画です。通常の業種の最低賃金と違いがあるため、お酒を提供する業種は、
「酒類販売の許可内での営業された店舗で、食事や飲み物をお客さんに直接提供する人」
と定義されています。この最低時給にサービスの対価としてのチップが加わります。
実際にお酒が提供されたかどうかでレートが変更されることはなく、その業種に対して一律で決められています。
お酒の調合だけしてサービングは別の係がするようなバーテンダー、ホストやホステス、バサーズ(テーブルの準備などをする係)、お酒を直接サービングする仕事を含まないキッチンスタッフは、この酒類提供者に含まれず、通常の業種に該当します。
酒類提供者の現在の最低賃金は、
とされています。
時給$10.10(2017年9月~)→時給$11.40(2018年6月~)→時給$12.70(2019年6月~)→時給$13.95(2020年6月~現在)→時給$15.20(2021年6月~、通常の業種と同じレート)
という段階的引き上げの計画になっています。
出来高制農業労働者
出来高制農業労働者は、2019年の6月から11.5%増加されました。今後も委員会による調査に応じて増額されていく計画です。
住み込みキャンプリーダー
住み込みキャンプリーダーは、日給で支払われ、2021年に日給$121.65になるように計画されています。
日給$90.80(2017年9月~)→日給$101.24(2018年6月~)→日給$110.87(2019年6月~)→日給$116.86(2020年6月~現在)→日給$121.65(2021年6月~)という計画で順次増額されていきます。
住み込み家事手伝い労働者
住み込み家事手伝い労働者は、日給で計算され、2017年9月から最低賃金は日給$113.50でした。しかし、現在は対象者が少ないためこのグループへの最低賃金は廃止され、通常の最低賃金枠が適用されています。
住居管理人
住居管理者は、月給で支払われます。次のような計画で増額予定です。
9~60部屋のマンション | 61部屋以上のマンション | |
---|---|---|
2017年9月から | 月給$681+1部屋ごとに$27.29 | 月給$2,319.65 |
2018年6月から | 月給$759.32+1部屋ごとに$30.43 | 月給$2,586.40 |
2019年6月から | 月給$831.45+1部屋ごとに$33.32 | 月給$2,832.11 |
2020年6月から | 月給$876.35+1部屋ごとに$35.12 | 月給$2,985.04 |
2021年6月から | 月給$912.28+1部屋ごとに$35.56 | 月給$3,107.42 |
最低保障日給について
労働者が得ることのできる最低日給は2時間分です。もしシフトが入っているにも関わらず、お店が忙しくないなど雇用主側の都合で仕事をさせてもらえない状況が発生した場合、たとえ2時間分を働いてなかったとしても、2時間分の時給を雇用主が払わなくてはならないというシステムです。
これは、働く人の生活のための給料支給を保障するための制度で、雇用主側の都合で仕事がなくなったときに、労働者は最低日給もしくは実際に働いた時間のより長い方の給料を支払われなければならないというものです。もし8時間以上のシフト計画がされていれば、最低4時間分が必要です。