カナダBC州における車の貸し借りについて
カナダBC州唯一の自動車保険会社「ICBC」では、保険加入について基本的に次のように定めています。
- 車両ごとに保険に加入する
- 運転する人に対して保険をかける
- 車両ごとに運転する人をリストに登録する
すなわち、保有する車ごとに、その車に乗る人を決めて登録して、それに応じて保険料が決まる仕組みです。複数台保有している場合には、保有台数分×登録が必要な人数を登録することが必要になります。
この合計の保険料は、運転する人のうち一番保険料が高くなる人の保険料に合わせて決定されるので、運転者の登録を増やしたからと言って単純に倍になるというような考え方ではありません。
一般的に、経験の浅い人や事故歴のある人が保険料が高めになるようになっています。
もし、登録していない人に車を貸し出したときに、運悪く事故を起こしてしまった場合にはどうなるのか
結論から言うと、基本的には一回限りの罰金を支払うことで、それまで加入している保険内容を使用することができます。
ただし、条件次第では罰金も掛からない場合もありますし、この罰金を免れる救済措置も用意されています。それが「非登録運転者保護」の枠組みです。
非登録運転者保護 (Unlisted Driver Protection) とは
「非登録運転者保護」は、ICBCの基本保険に付属する保護規定です。
大前提として、ICBCでは車両ごとに運転者を事前登録する仕組みですが、登録をしてない運転者が事故を起こした場合には「one-time financial penalty」と呼ばれる1回限りの罰金の支払い義務が生じます。
しかし、この保護規定「Unlisted Driver Protection」が機能すると、この罰金を支払う義務から免れることが出来ます。どういった場合にこの罰金支払い義務から免れることが出来るのか、次の項目で詳しくみていきましょう。
適用条件
まず、その事故が「不定期の使用」だったと言えることが前提の条件となります。
「不定期の使用」とは
「不定期の使用」とは、車の保有者やリースなどで借りている人、もしくは主要な運転者が所有する車両を、事故発生日から遡って、過去12ヵ月以内に12日以上運転していない場合が該当します。
つまり、頻繁に使用している事実がある場合には、不定期だったとは言えないということです。
具体的には、次のような例が「不定期の使用」と言えるケースとなります。
- 他州から訪ねて来た友人に対し、買い物に必要なため貸した場合
- 子どもの迎えに行こうとしたご近所さんの車が不調だったために貸した場合
- 体調が悪くなってしまったため、同僚またはクラスメイトがあなたの車で家まで送ってくれた場合
適用されない運転者の例
次に示すような人がドライバーだった場合には、たとえ上記のような不定期な使用のケースに合致していたとしても、保護規定は適用されません。
- 有効な免許を持ってない運転者
- 主要運転者と同じ世帯で生活する人または従業員
- 登録保有者またはと同じ世帯で生活する人または従業員
- 普段からあなたの車を運転する家族または友人
- 過去に登録保有者またはリースなどで借りる人の車両において事故を起こした人
例外
次のような例は、個別の適用基準があります。
- 医療的な緊急事態の場合 ⇒ 例外
- 整備士やホテルなどの車両係などが運転する場合 ⇒ 彼らの保険適用範囲でカバー
保護にかかる保険料と事故時の罰金について
Unlisted Driver Protection の加入料金
登録をしていない運転者が事故を起こさない限り、ずっと無料で加入し続けることが出来ます。
運悪く登録していなかった人に車を貸した際に事故が起きてしまった場合、これまで無料で加入できたこの保護オプションも、適用を継続したい場合には次回の更新で有料となる仕組みです。
ちなみにこれは、罰金的に支払う「financial penalty」とは別に払うものとなります。
one-time financial penalty の罰金額
登録していない人に車を貸して事故が起きると、「Unlisted Driver Accident Premium」と呼ばれる1回限りの罰金の支払い義務が生じます。
この罰金がいくらになるのかは、運転歴や事故回数などを元に個別に計算された要素係数が関係してきます。
基本的な考え方としては、自身が払っている保険料と、その運転者が保険に加入していた場合に払っていた金額との差額が基準となってこの罰金額が決定されます。
具体的には、基本保険料の金額の差額 (最大$5,000) ×15倍と、追加保険項目に掛かる金額の差額 (追加保険項目金額の2倍が上限) ×15倍の合計が罰金として課されます。


もし、ご自身とその運転者の運転歴や事故歴などの要素から、保険金額に差異が生じなかった場合には、計算上罰金は「0」となりますので、その場合には支払いの義務はありません。
しかしその場合でも、登録してない人に車を貸して事故が起きたという事実には変わりはありませんので、次回更新時の「Unlisted Driver Protection」には無料で入ることができなくなります。
具体的な計算例
罰金が課される具体例とその金額の計算法について、次のような例を使って見てみます。
マイクは、車を保有するジェニファーと同棲しています。
ジェニファーは、彼を保険のリストに登録していませんでしたが、彼が運転をした際に事故が起きてしまいました。マイクは同一世帯の構成員という扱いになるため、この保護規定は適用できないということになります。
ジェニファーのは基本保険料は$900で、追加保険カバー分が$300、すなわち合計$1,200の保険料を払っているとします。もしここにマイクも併せて保険に入れるとしたときに、 $1,300となるとすると、その差額分は$100となります。
これにより、今回の罰金額は「15 x $100 = $1,500」となります。
さらに、今回までは無料で加入できたこの保護規定も、次回の更新からは無料ではなくなってしまいます。
なお、事故の処理に関する保険請求は、ジェニファーがもともと入っている保険プランを適用することができます。これは、基本保険部分はもちろん、オプションで加入している追加保険項目についても同様に適用されます。
まとめ
- 基本的に車に乗る予定があればリストに登録すべき。保険料が倍などにはならない。
- リスト外の運転者が運転をすること自体はリスクはあるが禁じられてはいない。
- 条件に合致しない、リスト外の運転者の事故が起きたら罰金を支払う。
- 保護規定が利用できれば、条件次第で罰金は不要となる。
- この保護規定自体の加入は無料。
- 罰金は結構高い。翌年からはこの保護規定の加入自体も有料になる。
- 結論、運転する可能性がある人はリストに登録すべき。(繰り返し)
- それ以外では、よっぽどでない限り自分の車を貸すべきではないが、条件に合致すればある程度はリスクも低減できる。