2021年1月更新の第11版の多発機操縦資格用「飛行実技検定ガイド」(飛行機)を参照して作成しています。
飛行検定に関する共通事項
自家用操縦士免許(PPL)、事業用操縦士免許(CPL)、多発機飛行資格(Multi)、計器飛行証明(Instrument)、飛行教育証明(Instructor)など、飛行実技検定が必要な免許や資格/証明がありますが、その中でも検定に関する一般事項として、申請要領、採点方法など共通の事項については、下の記事でまとめていますので、こちらをご覧ください。
飛行検定課目一覧
1 航空機の慣熟と飛行準備
1A 書類および耐空性(地上課目)
1B 性能諸元と運用制限(地上課目)
1C 飛行原理-片発不作動(地上課目)
1D 重量平衡と負荷(地上課目)
1E 飛行前点検(飛行課目扱い)
1F エンジン始動/試運転/チェックリストの使用
2 航空機システム付属装置の操作
3 地上滑走(タクシー)}
4 離陸/場周飛行/着陸
4A 離陸
4B 場周飛行
4C 進入と着陸
5 巡航飛行
6 エンジン故障(巡航中)と片発運用での飛行
6A 機体制御
6B コックピット点検
6C 片発飛行
7 低速時の飛行
8A 失速(ストール)
8B 失速への接近
9 急旋回(スティープターン)
10 復行時のエンジン故障
10A 機体制御
10B コックピット点検
11A 予防エンジン停止
11B 到着/進入と着陸-片発不作動
12 緊急手順/不具合対処
オレンジ色で示されている課目が採点対象であるが、12は3つ選択されるので、合計26項目となる。
各項目「4点」(満点)~「1点」(不合格)の4段階で評価され、合計点数が70%以上の73点以上にて合格となる。
第11版での変更 (追加) 事項
2019年9月25日発効のアドバイザリーサーキュラー第408-002号「飛行検定における2点の制限数について」に基づき、検定内で取得する「2点」の上限数が、4つまでと明記されました。つまり、検定の結果「1点」の項目がなければ、「2点」を4つまで取得しても合格であるということです。
この条項は、再検定や部分再検定場合にも、シミュレーターを使用した検定にも適用されるとされています。
再検定については、「2点」と「1点」の合計ポイントが「4」になるかどうかで完全再検定か部分再検定になるかが変わります。
なお、各検定における「2点」の取得許容数は、以下のとおりです。
レク操縦士 RPP | 自家用操縦士 PPL | 事業用操縦士 CPL | 多発資格 Multi Rating | 計器飛行証明 Instrument Rating |
---|---|---|---|---|
6 | 5 | 4 | 4 | 3 |
用語の定義
臨界発動機
故障に際し、機体の性能や操縦性にもっとも悪影響を及ぼすエンジン
設計フラップ速度(VF)
フラップを展張できる最大速度
意図的片発不作動速度(VSSE)
- 1つのエンジンが突然停止したときに、横方向と方向管制に対する余裕を確保するために選択されるVMCと失速速度よりも大きい速度
- この速度未満での意図的な片発故障は非推奨
- POH/AFMにVSSEが示されていない場合は、VMC+10ktを使用
運動速度(VA)
空力的な制御をできる限り最大限行っても、機体には過大な負荷とならない最大速度
最大フラップ展張速度(VFE)
フラップ展張状態における最大許容速度
最大脚下げ速度(VLE)
着陸装置の展張状態における最大許容速度
最大脚操作速度(VLO)
着陸装置の操作における最大許容速度
最小操縦速度(VMC)
臨界発動機の突然の故障の際に、最大ラダー、バンク5°未満で機体の操縦と水平飛行を維持することができる最小飛行速度
- 臨界発動機の不作動のときに全エンジンが最大出力を発揮
- 機体が実用上の最小重量で、重心位置が後方限界
- ギア格納、フラップ離陸位置、故障した臨界発動機側のプロペラはウィンドミル状態、速度VMC未満、機体は故障エンジン側にヨー及びロール
作動エンジン側の出力を減少させること、またはピッチ姿勢の変化による増速、またはその両方だけで操縦性が十分回復することを特に強く強調
片発不作動時の最大上昇角速度(VXSE)
片発不作動状態における水平距離あたりの最大の高度を獲得できる速度
片発不作動時の最大上昇率速度 (VYSE)
片発不作動状態における時間あたりの最大の高度を獲得できる速度
失速速度(VSO)
機体が着陸形態で操縦可能となる最小飛行速度
課目1:航空機の慣熟と飛行準備
1A 書類および耐空性(地上課目)
- 機内搭載が必要な書類の有効性を正しく評価できること。
- 文書による確認で判断できる限り、機体が耐空性を有しており飛行業務可能な状態であること、予定の飛行をしても次回の整備作業までに十分な飛行時間があることを確認すること。
- 機内搭載するすべての書類の有効性の確認
- 所要整備完了の認定の取得の確認
- 予定の飛行時間中に計画整備事項が発生しないことの確認
- 機内に搭載する書類が有効であることを示す。
- 整備に関する認定があること、機体が使用可能状態であること、予定飛行に必要な計画整備が行われているかを確認する。
- 次回の整備業務や作業までの残飛行時間数を示す。
- 整備に関する状況や制限がないことを確認する。
- 機体の運用に関する先送りされた欠陥事項が予定の飛行に及ぼし得る影響について示す。
- 飛行中に機体に使用不可能な事項が見つかった場合の対処要領について説明する。
飛行訓練施設(FTU)における整備管理マニュアル(MCM)や、使用する機体に関する認定整備計画(AMS)に関する知識を示す必要はない。
1B 性能諸元と運用制限(地上課目)
- 検定に使用する機体に関する性能諸元や運用制限に関して、実用上の知識を有していることを示すこと。
- 重要な速度に関する事項は記憶から示すこと。
- 航空図や、離陸距離、上昇、巡航、片発巡航、飛行可能時間、着陸距離などの機体の性能を算出するための各種性能表などの実用的な使用法について示す
- 制限超過時に起こり得る悪影響について説明
- 重要な性能速度は記憶から説明
- 機体の性能データはPOH/AFMから参照
- 記憶から次の重要な速度について示すこと。
- 最大着陸重量時の失速速度–着陸形態(VSO)
- 片発不作動時の最良上昇率速度(VYSE)
- 片発不作動時の最良上昇角速度(VXSE)
- 運動速度(VA)
- 最小操縦速度(VMC)
- 最大脚下げ速度(VLE)
- 最大脚操作速度(VLO)
- 最大フラップ展張速度(VFE)
- 意図的片発不作動速度(VSSE)
- 予定飛行に関する次の事項を算出すること。
- 加速停止距離(データがある場合)
- 50ftまたは実在の障害物を回避するための合計離陸距離
- 特定高度までの上昇に必要な所要時間と所要燃料量
- 片発不作動時の上昇率
- 予定巡航高度における片発不作動時のエンルート性能
- 計画巡航における出力設定(%/MP/RPM)と予想巡航速度(KTAS)
- 搭載燃料量と予定出力設定での飛行可能時間
- 50ftまたは実在の障害物を回避するための合計着陸距離
1C 飛行原理-片発不作動(地上課目)
片発不作動時の飛行原理に関する実用的な知識を有していることを示す。
- 片発不作動時の飛行原理に関する実用的な知識
- 航空機の性能に影響を及ぼす要素の重要性の説明
- 臨界発動機の推力損失時の操縦性の説明
- 最良の性能を発揮するため、効力の減少と作動エンジン側への適切なバンクの重要性について説明する。
- 推奨速度に設定することとそれを維持することの重要性を説明する。
- 適切な機首位置とバンクを入れた姿勢、操縦の調和、トリムの使用を維持することの重要性について説明する。
- 「臨界発動機」の意味するところを説明する。
- 最小操縦速度(VMC)に影響する要素について説明する。
- 意図的な片発不作動速度(VSSE)について説明する。
- 次の各形態における片発不作動時の使用可能な性能について説明する。
- ギアの展張
- フラップの展張
- ギアとフラップ両方の展張
- 不作動エンジン側のウィンドミル状態のプロペラ
- 検定で使用する機体で片発不作動時に着陸復行を実施しなくてはならない場合の形態、速度、飛行諸元について説明する。
1D 重量平衡と負荷(地上課目)
検定で使用する機体に関する重量平衡計算を正しく実施すること。
- 検定で使用する機体の実際の重量と公式の重量平衡データを用いて、離陸重量、着陸重量、零燃料重量を含むほぼすべての座席や荷物区画に割り当てられた実用上の負荷に関する精確な算出を実施
- その機体で使用可能な負荷に関する性能表やコンピューターがあれば使用可
- 重量平衡の性能表や包囲線図に関する知識と、重心位置の変化が飛行特性に与える影響について示す
- 重心位置が制限範囲外であったり、総重量が超過している場合の修正要領について、実用上の知識を示す
- 指定された負荷を搭載した場合にも、離陸重量、着陸重量、零燃料重量、重心位置が制限範囲内にあることを判断する。
- 重心位置が制限範囲外にある場合、重量制限を超過している場合の修正要領に関する実用上の知識を示す。
- 重心位置の変化が飛行特性に与える影響について説明する。
1E 飛行前点検(飛行課目扱い)
- POH/AFMにしたがって、航空機が予定された飛行を実施できることが確認できる機内外点検をよく整理された要領で実施すること。
- 異常が発見された場合の対処法に関する知識を示すこと。
- 予定する飛行ができる状態にあるのかどうかを確認
- 搭載すべき機器や書類が所定の場所に搭載されており、飛行前点検で確認できる限り、機体が耐空性を有していることを確認
- 燃料量、燃料規格、燃料混濁度、潤滑油量について、POH/AFMにしたがい目視点検を実施
- 航空機の設計上、POH/AFMに燃料量を目視点検を実施する要領が示されていない場合には、燃料搭載票、搭載記録やその他の信用に足る要領をもって実際の搭載燃料量を確認
- 飛行前点検を終了後、検定官により検定に使用する機体に関する質問を実施
- 飛行前点検時に不具合事項が発見された場合、どのような対処を行うべきかについて説明
- そうした事項が発見されなかった場合には、その後に起きる事項に関する知識を示す
- 口頭で搭乗者に対する安全ブリーフィングを実施
- これを省略した場合、検定官が実施するように受検者に促す
- 少なくとも航空機の製造社または所有者が列挙する事項を含んで、順序立った手順で航空機を点検する。
- 各種スイッチ、サーキットブレイカー、予備フューズを識別し、日中と夜間いずれにも適切に使用可能であることを確認する。
- 予定の飛行に十分な燃料量と潤滑油量を搭載していること、緊急対処要領、必要な予備燃料を確認する。
- 機体が安全な飛行を実施しうる状態にあることを確認する。
- 検定官により指摘もしく発見された不具合事項に対する適切な対処要領を示す。
- 荷物や搭載機器の搭載位置と安全性を確認する。
- 飛行に使用する物件や機器を使用可能になるように整理しておく。
- 次の各事項を含む効果的な安全ブリーフィングを搭乗者に対して行う。
- ドアの使用と安全性について
- シートベルトやショルダーハーネスの使用法について
- 非常出口、緊急位置発信機(ELT)、消火器の位置と使用法について
- 喫煙に関する制限
- 緊急着陸の際にとるべき行動について
- 航空機からの脱出に関する搭乗者が考慮すべき事項について
- 検定に使用する航空機特有の事項
- 緊急時に関するその他の事項
1F エンジン始動/試運転/チェックリストの使用
POH/AFMにしたがいエンジン始動、暖機運転、試運転、システム点検を行って飛行できる状態にあることを判断すること。
- 航空機の製造社または所有者が示すチェックリストを使用
- エンジン始動、暖機運転、試運転、機体のシステム点検について推奨する手順を用いて、機体が耐空性を有し飛行できる状態にあることを判断
- 外部電源を使用した方法や、あらゆる状況下に適応した方法を含む、推奨されるエンジン始動手順について実用的な知識を示す
- 誤った手順でエンジン始動を実施した場合の影響についても示す
- 検定官により確認または指摘された不具合事項について、とるべき適切な対処法について実用的な知識を示す
- エンジン始動前または始動中に、周囲の人や物に対する配慮を示す。
- 航空機の製造社/所有者が示す適切なチェックリストを使用する。
- 誤った手順によってエンジン始動をした場合の影響に関する知識を示す。
- 推奨されるエンジン始動手順の知識について示す。
- 推奨手順によりエンジン始動を完了する。
- 周囲に物がなく航空機移動できる適したエリアにおいて、試運転による点検を行う。
- エンジンと機体に関する各種点検を精確に完了する。
- 操縦系統が自由に動くことと正しい動きをすることを確認する。
- 実際に発生した不具合事項に対し、適切に対処を行う。
- 検定官に指摘された不具合事項に対し、どのように対処するかについて実用的な知識を示す。
- 飛行検定中に使用する無線航法機器が使用可能な状態であることを確認する。
適切なチェックリストを使用しない場合は、この課目は不合格となる。
課目2:航空機システム付属装置の操作
選択されたシステムに関する実用的な知識を示し、POH/AFMにしたがって航空機のシステムを操作すること。
検定で使用する機体に搭載されるシステムの運用法に関する実用的な知識を示し、POH/AFMにしたがって機体のシステムを操作
POH/AFMにしたがって機体に搭載されたシステムを適切に運用できることを示し、次に示すうち検定官が指示する3つの機器の操作法について説明する。
- 主操縦装置/トリム
- キャブレターヒート/代替空調装置
- カウルフラップ
- ミクスチャー
- プロペラ
- 燃料系統/潤滑油系統
- 燃料噴射系統
- 過給機
- 作動油系統
- 電気系統
- フラップ
- 降着装置(ギア)
- ブレーキ
- 航法機器
- 自動操縦装置
- プロペラ同調装置
- ピトー静圧系統/吸気圧力系統/関連飛行計器
- 暖房/空調系統
- 防除氷系統
- 検定に使用する機体に関するその他の系統
課目3:地上滑走(タクシー)
他機に対し不必要な干渉をすることなく航空機を安全に地上で操作すること。
- 検定中に特に指示されない限り、駐機場から使用する滑走路の間、機体を地上滑走
- 他機の状況が許せば、誘導路の中心線に沿って実施
- タクシー中に飛行計器の作動確認を実施
- 計器の点検を省略した場合には、検定官が離陸の前に実施を促す
- ブレーキ点検を行う。
- 出力装置、操縦装置、ブレーキを適切に使用する。
- 適切なタクシー速度を用いる。
- 駐機場や移動エリアにいる他機に配慮しつつ、安全に機体を移動させる。
- 飛行場の方針、手順、航空交通業務の許可や指示にしたがう。
- 飛行場にある誘導路や滑走路の標識、マーキング、灯火を識別し正しく読み取る。
- 飛行計器が正しく作動することを確認する。
- 着陸後、滑走路や誘導路エリアをクリアし適した駐機場や給油エリアまでタクシーする。
- 付近の人や物の安全に配慮しつつ、航空機を正しくかつ適切に停止させる。
課目4:離陸/場周飛行/着陸
4A 離陸
- 実際の風の状況、滑走路表面、滑走路長に応じた正しい手法や手順を用いて安全に離陸できること。
- ウィンドシアや後方乱気流などのさらなる状況の可能性についても評価できること。
- 通常離陸を実施
- 可能であれば、横風の状況下での離陸を実施
- 離陸に先立ち、コックピットでの良好な連携を実現するため、機長要務を行う受検者が搭乗者に対し、離陸や最初の上昇時の手順や使用速度に関するブリーフィングを実施
- 実際にエンジン故障が発生した場合の内容を含む
ガストや横風が吹いている状況で推奨速度を変動させなくてはならない必要性について説明できるようにしておく。
- 搭乗者に対する効果的な安全確認を行う。
- 適切な離陸前チェックリストを行う。
- 実際の風などの状況に応じて操縦装置の使用や飛行形態の設定を行う。
- 離陸滑走開始位置までタクシーして進入し、機体を滑走路中心線にアラインさせる。
- スロットルを円滑に離陸出力まで進める。
- 離陸出力が出ているかを確認する。
- 離陸滑走中、滑走路中心線に沿った円滑な操作を維持する。
- 推奨速度で引き起こし操作を行う。
- 推奨上昇速度+10kt~-5ktまで増速し、その速度を維持する。
- 正の上昇率の確認後またはPOHで示されるタイミングで脚を格納する。
- 安全高度で必要に応じフラップを格納する。
- 安全運動高度に達するまで離陸出力を維持し、その後に上昇出力(±0.5” MP/±50RPM)に設定する。
- 左右プロペラを同調させる。
- 偏流を修正し、滑走路中心線とその延長線上に沿った航跡を飛行する。
- 騒音低減方式があればそれにしたがう。
- 適切な離陸後の各種点検を実施する。
4B 場周飛行
飛行場周辺の空域において機体を安全かつ一定の精度内で運航させること。
- 使用する飛行場における出発や会合を含む正しい場周飛行要領を実施
- 他機と間隔を維持しつつ、ATFやMFの手順、管制許可/管制指示にしたがう
- 実際の管制許可と管制指示にしたがう。
- 場周経路の進入要領、出発要領にしたがう。
- 既定の場周経路にしたがう。
- 他機との間隔を修正しつつ精確な場周経路を維持する。
- 実航跡を適切に維持するために偏流修正を行う。
- 使用中の滑走路に対して常に注意を向ける。
- 場周飛行高度±100 ftと宣言した適切な速度±10ktを維持する。
- 適切な点検を完了する。
- その時に有効になる必要な手順にしたがうこと。
※離着陸中に使用する滑走路の横方向の位置精度は、次の基準で評価される。
「4」機体胴体が中心線上を維持
「3」主翼の位置が中心線上を維持
「2」翼端が中心線を超えるほどに逸脱
「1」機体の縦軸が中心線から滑走路幅の半分以上を超えるほどに逸脱
4C 進入と着陸
- 実際の風の状況、滑走路長に対応した正しい手順と手法を用いて、安定した進入と着陸を安全に実施できる適した接地点を選定すること。
- ウィンドシアや後方乱気流のようなさらなる状況の発生の可能性についても評価すること。
- 適切な滑走路に向けて安定した進入と着陸を示す
- 可能であれば、横風の状況下で実施
- 実際の風の状況に対応した受検者が適切に進入要領を選定できるかによって、進入と着陸に関する評価を実施
ガストや横風が吹いている状況で推奨速度を変動させなくてはならない必要性について説明できるようにしておく。
- 搭乗者に対する効果的な安全確認を行う。
- 適切な着陸前点検を実施する。
- 風、着陸表面、障害物の状況を考慮する。
- 適切な接地点を選定する。
- 推奨される進入着陸時の形態を確立する。
- ファイナルにおいては滑走路中心線上の飛行を維持する。
- VFRでの安定した進入に関する一般事項にしたがい、+10kt~-5ktの範囲内での安定した進入を維持する。
- 進入と着陸を通して、横風に対する修正を行い、方向管制を維持する。
- 着陸前の引き起こしや接地時には、円滑で適時の正しい操作を行う。
- 機体ごとに推奨される姿勢で接地する。
- その時の状況に応じて、最小安全速度で円滑に特定の接地点の+300ft~-100ftの範囲内に接地する。
- 滑走路中心線に機体の縦軸をしっかりアラインさせて接地する。
- 前脚の滑走路接地を制御する。
- ロックや滑りのないように必要に応じてブレーキを使用する。
- 適切な点検を完了する。
課目5:巡航飛行
POH/AFMにしたがい、課目1Bで事前算出した出力設定で巡航飛行させること。
POH/AFMの性能表や機体に掲示されるプラカードまたは製造社が定めるその他の手段に基づいて事前に算出した出力設定で巡航飛行
- 指定針路±10°と指定高度±100ftを維持すること。
- スロットル、プロペラ、ミクスチャーをPOH/AFMにしたがって事前計画した出力に設定する。
- 左右プロペラを同調させる。
- 機体の形態やその他の考慮事項ごとに製造社が定める追加の推奨要領を適用する。
- 巡航性能を確認し、ETAや燃料量の修正などにより予想性能に変化があった場合には、それに適切に対応できる意思決定を行う。
- 適切な点検を行う。
課目6:エンジン故障(巡航中)と片発運用での飛行
巡航飛行中にエンジン故障が発生した後にも機体の制御を維持することができ、片発が不作動の機体においても飛行できることを示すこと。
- 運用安全高度または製造社による推奨最小高度のいずれか高い高度において、水平直線飛行、水平飛行、水平旋回実施中に検定官が片発不作動の想定を付与
- 水平旋回中にこの想定が付与された場合には、操縦を立て直し、メモリーで緊急処置の対処を完了した後に指定針路まで引き続き旋回
- 機体の制御、故障エンジンの特定、原因の確認、想定でプロペラのフェザリング、適切なチェックリストにしたがって故障エンジンを停止
- 不作動エンジンを使用せずに指示された針路まで旋回を継続し、30°を超えない適切なバンク角を使用しつつ指定高度まで上昇または降下を行ったのちに水平直線飛行を維持
- 巡航中のこうした不具合に対処するための良好な意思決定を実施
6A 機体制御
- 機体を制御する。
- 方向管制を行って指定針路を維持する、もしくは機体の制御を回復したらすぐに指定針路±20°まで30°を超えないバンク角を用いて旋回を継続する。
- 出力を設定し、ギアとフラップを上げ巡航形態を確認し、不作動エンジンを識別確認する。
- 最良の性能を発揮するため、作動エンジン側へのバンクを確立する。
- 出力を回復させるための適切な対処を行う。
- プロペラをフェザリングし故障エンジンを停止するための想定の対処を行う。
- 機体をしっかりとトリムさせる。
- 推奨速度±10ktを維持する。
- 指定高度±100ftを維持する。
6B コックピット点検
- エンジン故障時の重要な点検事項をメモリーで実施する。
- 想定エンジン故障の原因特定に努める。
- 飛行中のエンジン故障時の緊急チェックリストにしたがってすべての対処を行う。
- 故障エンジンの再始動の蓋然性について判断し、必要であれば再始動手順にしたがって実施する。
- 再始動が不適であれば、緊急チェックリストにしたがってエンジン停止点検とその他の必要な点検を行う。
- 作動エンジンをモニターし、制限内で運用できるように適切な対処を行う。
- 故障に対する一連の流れの中で、良好な意思決定を行うこと。
6C 片発飛行
- 適切な機首位置とバンクの姿勢を維持する。
- 上昇降下や指定針路への旋回時に適切な操作とトリムを行う。
課目7:低速時の飛行
最終進入時の速度範囲での飛行時にすべての形態における安全な操縦を維持することで、推力や効力などのエネルギーを制御する技術を示すこと。
この課目はスローフライトではない。
- 運用上の安全高度または製造社が示す推奨最小高度以上のいずれか高い高度で開始
- 機体を1.3 VSO KIASまたはVMC+10ktのいずれか大きい速度で安定
- 偏向を増やすためにギアとフラップを展張してこの減速時の飛行を維持
- 低温時は、初期進入時のフラップとして最大の半分を展張し、指定速度まで減速して安定させることにより、エンジンへの逆効果を低減させる良いエアマンシップを発揮
- 良い出力管制を行う。
- 調和のとれた飛行を行うため十分なラダーを使用する。
- 選択速度+10kt~-5ktを維持する。
- 適切なバンク角を使用する。
- 直線飛行中に指定針路±10°を維持する。
- 指定高度±100ftを維持する。
- この課目は水平飛行で実施
- 目標速度における上昇降下は不要
課目8A:失速(ストール)
クリーン形態での実際の失速を認識し、そこから迎え角を減少させて安全、円滑かつ正しく回復し、通常飛行に復帰すること。
- 回復が可能な対地2,000ft以上または製造社が示す最小高度のいずれか高い運用上の安全高度で、全エンジンの出力をアイドル付近として、クリーン形態で水平直線飛行から失速を開始
- 失速に入ったことを認識してから、迎え角の減少により実際の失速状態からの復帰操作を開始し、通常飛行に復帰する
POH/AFMで意図的な失速が推奨されないもしくは禁止されている場合は、最初の失速の兆候が表れた際に回復を実施
- 失速に近づく前に、適切な安全事前注意を完了する。
- 指定の形態を確立する。
- 失速に近づくような姿勢に円滑に移行する。
- 失速警報、最初の空力バフェット、操縦効果の低減の体感をもって、失速を認識し宣言する。
- 失速に入れる。
- 迅速な迎え角の減少により失速状態から回復させ、翼を水平に戻すという正しい手順による適切な操作で円滑に回復する。
- 二次失速に入れず、高度損失を最小化するために出力を使用する。
- 検定官が指示する高度、針路、速度に復帰するための姿勢を確立する。
課目8B:失速への接近
着陸形態における失速への接近を認識し、そこから迎え角の減少により安全、円滑かつ正しく回復し、通常飛行に復帰すること。
- 回復が可能な対地2,000ft以上または製造社が示す最小高度のいずれか高い方の運用上の安全高度で、全エンジンの出力をアイドル付近として、着陸形態で水平直線飛行から失速への接近を開始
- 失速の最初の兆候の発生で認識をしてから、「失速」を宣言
- 迎え角の減少により円滑に回復し、高度損失を最小化するため加速
- 失速に近づく前に、適切な安全事前注意を完了する。
- ギアとフラップを最大に展張し、着陸形態を確立する。
- 失速に近づく姿勢に円滑に移行する。
- 失速警報、最初の空力バフェット、操縦効果の低減の体感などの最初の兆候の発生をもって、「失速」を認識し宣言する。
- 失速に入れないようにする。
- な迎え角を減少させる正しい手順による操作で、最初の兆候の発生の時点で、迅速かつ円滑に回復する。
- 方向管制を維持する。
- 二次失速に入れず、高度損失を最小化するために出力を使用する。
- 推奨される要領で、フラップを格納する。
- 正の上昇率を確立後、またはマニュアルにしたがいギアを格納する。
- 検定官が指定する高度、針路、速度に復帰する。
課目9:急旋回(スティープターン)
水平で調和のとれた急旋回を実施すること。
- 運用上の安全高度で、バンク角45°で180°のスティープターンを行い、途中で止まることなく反転して開始針路でロールアウト
- 旋回開始前に検定官が選定高度、開始針路、速度を指示
- 効果的な見張りを継続する。
- 円滑かつ調和のとれたピッチ、バンクと出力管制を使用してロールイン/ロールアウトする。
- 指定高度±100ft、指定速度±10ktを維持する。
- 安定した旋回を確立している間バンク角45°(±5º)を維持する。
- 180°旋回終了後、反転して逆方向で同様の旋回を実施する。
- 逆方向の旋回からロールアウトし、開始針路±10ºに向首する。
- 外の視認目標と計器指示とを適切に注意分配する。
課目10:復行時のエンジン故障
離陸または復行時のエンジン故障後にも安全な操縦を維持し、適切な緊急処置を実施すること。
- 進入降下が安定した後に、検定官が着陸復行を指示し、離陸出力までの出力が増加し、脚またはフラップを格納したらすぐに検定官がスロットルをアイドルまで絞り想定片発故障を模擬
- 適切な手順で操縦し、重要な処置を行い、安全な復行のための片発最良上昇率速度を確立
- 受検者がプロペラを想定でフェザリングしたらすぐに、検定官は想定の不作動エンジンをゼロ推力とする
10A 機体制御
- 1発のエンジンが推力を損失したことを迅速に認識する。
- 機体を制御する。
- 操縦を適切な手順で行い、出力管制と効力低減を行う。
- 不作動のエンジンを識別し、確認する。
- 推奨性能を発揮するため作動エンジン側にバンクを取る。
- 方向管制を指定針路±20°以内で維持する。
- 可能であれば、正の上昇率を維持する。
- 片発不作動時の最良上昇率速度(VYSE)+10kt~-5ktまで、障害物との間隔を維持する必要がある場合には、片発不作動時の最良上昇角速度(VXSE)+10kt~-5ktまで加速しそれを維持する。
- 必要に応じ機体をトリムさせる。
- 特定の高度まで着陸復行を継続する。
10B コックピット点検
- 必要な操縦系統の操作とスイッチ操作を行い、離陸時/復行時のエンジン故障の緊急手順チェックリストにしたがって、緊急手順を完了させる。
- エンジン故障時の重要な対処項目をメモリーで完了する。
- 緊急手順チェックリストにしたがって緊急処置を完了する。
- 適切な緊急手順チェックリストにしたがいエンジン停止点検とその他の必要な点検を完了する。
- 作動エンジンをモニターし、運転を制限内に維持するように適切な対処を行う。
課目11A:予防エンジン停止
- エンジンの予防停止の必要性を確認すること。
- 意図的な想定エンジン停止の手順を完了すること。
- エンジンの予防停止が必要となるような、重大な潤滑油漏洩、機械的不具合などの検定官により付与されるシナリオに対応
- 受検者により、エンジン停止を想定で実施し、適切なチェックリストを完了
- 検定官は、受検者が当該エンジンのプロペラを想定でフェザリングにしたところで、検定官は想定の不作動エンジンをゼロ推力とする
- 近隣に適切な飛行場を探す、管制官に状況を伝える等の次に行うべき対処について受検者は説明
- 検定官に示された状況を分析する。
- 適切な緊急手順チェックリストにしたがって必要なすべての点検を完了することにより、エンジンの停止手順を想定で完了する。
- 高度±100ftを維持する。
- 針路±20°を維持する。
- 推奨速度+10kt~-5ktを維持する。
- エンジン停止に関連する機器の不作動などの可能性に関する理解を示す。
- エンジンを再始動すべきかどうかについて判断し、理由を説明する。
- エンジン故障に引き続く事態を考慮する際に良い意思決定を示すこと。
課目11B:到着/進入と着陸-片発不作動
想定で片発不作動の状態における到着要領と進入着陸を安全に飛行できること。
POH/AFMの「片発進入着陸」で示される推奨手順にしたがい、安全な到着要領と着陸を実施
- 他機に配慮した適切な場周経路を飛行する。
- 到着、進入、着陸を完了する。
- 適切なチェックリストを完了する。
- 「VFRでの安定した進入」に記載される安定した進入を速度+10kt~-5ktで継続する。
- 通常の接地帯に着陸する。
- 滑走路中心線に機体の縦軸をしっかりとアラインして接地する。
課目12:緊急手順/不具合対処
緊急事態やシステムや機器の不具合に迅速かつ正しく対応できること。
- 緊急手順や異常事態に関する実用的な知識を示す
- 想定の緊急事態や不具合は検定のいかなるタイミングでも起こり得る
- 重要な対応操作をメモリーで実施し、その後に適切な緊急チェックリストを実施
- 実際/想定の状況分析を行う。
- 適切な対応操作を行う。
- 次に示す項目のうち3つの緊急チェックリストまたは手順を適切に実施する。
- 出力の一部損失
- エンジン不調/過熱
- 過給機故障
- プロペラ過回転
- エンジン火災
- 油圧低下
- 燃料欠乏
- ブーストポンプ故障
- クロスフィード
- 電気火災
- 吸気システム故障
- 電気系統不具合
- 着陸装置不具合
- ブレーキ故障/固着
- フラップ故障
- 暖房の過熱
- 上空でのドア開放
- 緊急降下
- 機体固有のその他の緊急事態
- 上記の緊急処置/不具合対処のうち1つは上空で実施することが求められているものの、機体の性能や天候状況、その他の状況に鑑みて上空で実施するのか、地上でエンジン運転中の実施に代えるのかは検定官の責任
- エンジン停止前であれば、いくつかの項目は検定可能
- 課目2の「付属装置の操作」で検討しなかった項目を選択