カナダの市民権授与式「Citizenship Ceremony」に行ってみたレポート

EXPERIENCE

僕はカナダのブリティッシュ・コロンビア州でルームシェアで生活しています。
ルームメイトがこの度、長年の念願が叶ってカナダの市民権を得ることができ、先日そのセレモニーが行われたので、友人として参加させて頂きました。(もちろん僕の市民権ではありません)

市民権とは

カナダの永住権を保有し、過去5年間のうち3年間居住し、必要な納税を行っており、カナダの権利・責任・知識に関する試験に合格し、英語能力を証明した者が、候補者として申請できる権利です。カナダ人と同じ権利を手に入れることができますが、同じくカナダ人と同じ義務責任を負うことになります。

Citizenship Ceremonyとは

決して任意参加の祝賀会のようなものではなく、市民権申請の長い手続きの最後のステップで、正式な式典です。

成人と14歳以上の子どもは必ず参加しなくてはなりません。14歳未満の子どもには参加義務はありませんが、一生の記念になる日なので、是非参加してくださいという位置付けです。

参加のお知らせは手紙やEメールで届けられますが、ルームメイトはその前日まで母国に長期で帰省をしていました。Eメールをしっかり確認していたので、問題はなかったようです。対象者全員が指定日の指定会場で式典に参加しなくてはなりませんが、万が一参加できない場合は、会場や日程を調整により変更することができます。

会場になったのは、カナダ移民難民市民権省(IRCC)のオフィスです。
BC州ではSurrey、Vancouver、Victoriaにオフィスがあります。それぞれのオフィスで週に3~5回ほど開催されているようです。

家族や友人の参加も歓迎されています。

式次第

会場に到着すると、候補者は書類の確認や手続きを行ないます。ここでいったん友人と別れ、ゲスト参加者として来た僕は先に式場に入り、待機します。式場の後ろ側と左右両サイドに2~3列の椅子があり、好きなところを取っていいようでした。

宗教上の理由がなければ、脱帽を係員から指示されるなど、厳正な雰囲気と言えます。

通常は写真撮影はできない会場ですが、「#MyCitizenship」でシェアしよう!というポスターもあり、式典中の写真撮影は禁止されていません。

開始前の会場の雰囲気

開会

まず、カナダ首相のジャスティン・トルドー首相のビデオレターが流れました。「皆さんを今日カナダのファミリーとして迎え入れられることを嬉しく思う」という激励のビデオメッセージです。

その後、Clerkが現れ、司会を行います。式典は長くても45分との説明でしたが、実際は30分ほどで終わりました。式典は基本的には英語で行われるという断りがありましたが、これは地域によって異なるんだと思います。

その後、全員で起立し判事を迎え入れます。女性の判事で、ところどころフランス語も入れてお話しして下さりました。

参加者に配布されるもの

誓い

市民権授与の誓いoath」をします。右手を胸の高さまで上げて、次の言葉を宣誓します。ゲストとしてきた参加者は、もちろん誓いをする必要はなく、起立をして見届けるだけでですが、「よろしければご一緒にどうぞ」と勧められます。この式典の中のクライマックスとも言える大事な項目です。一言ずつ判事が読み上げていくので、それに続いて誓いを述べていきます。

I swear (or affirm)
That I will be faithful
And bear true allegiance
To Her Majesty Queen Elizabeth the Second
Queen of Canada
Her Heirs and Successors
And that I will faithfully observe
The laws of Canada
And fulfil my duties as a Canadian citizen.

カナダ市民権授与の宣誓(英語版) 出典:canada.ca

一通り終わると、「今度はフランス語でもやるので、頑張って一緒に挑戦してみて」と言われ、フランス語で始まります。皆初めは元気がいいのですが、一言が長くなる3行目あたりからごにょにょになっていきます。

Je jure (ou j’affirme solennellement)
Que je serai fidèle
Et porterai sincère allégeance
à Sa Majesté la Reine Elizabeth Deux
Reine du Canada
À ses héritiers et successeurs
Que j’observerai fidèlement les lois du Canada
Et que je remplirai loyalement mes obligations
de citoyen canadien.

カナダ市民権授与の宣誓(仏語版) 出典:canada.ca

これが終わると、「今の瞬間をもって、皆さんは正式にカナダ市民になりました!」と感動的な瞬間を迎えます。

市民権証明書の授与

誓いをした後は、その証明書の授与が行われます。候補者たちは座席から立ち上がって、事務机の前に向かい、まずは先ほど行った宣誓に対してサインを行います。誓いは読んで終わりではないんですね。その後、判事の前に赴き、判事から直接一人ひとりに対して握手とともに証明書が手渡されていきます。

国歌斉唱

これも非常に面白いです。アメリカにいるときは、国歌を至る所で聴く機会があった記憶がありますが、そういえばカナダの国歌を聴くのは、恥ずかしながら今回が初めて。カナダの小学校では毎週月曜日に歌う時間があるという話も聞きました。

せっかくなので、国歌を紹介します。

O Canada! Our home and native land!
True patriot love in all of us command.
Car ton bras sait porter l’épée,
Il sait porter la croix!
Ton histoire est une épopée
Des plus brillants exploits.
God keep our land glorious and free!
O Canada, we stand on guard for thee.
O Canada, we stand on guard for thee.

カナダ国歌「O Canada」英語版 出典:canada.ca

ここでも英語版が終わったら、フランス語版で歌います。

Ô Canada! Terre de nos aïeux,
Ton front est ceint de fleurons glorieux!
Car ton bras sait porter l’épée,
Il sait porter la croix!
Ton histoire est une épopée
Des plus brillants exploits.
God keep our land glorious and free!
O Canada, we stand on guard for thee.
O Canada, we stand on guard for thee.

カナダ国歌「Ô Canada」仏語版 出典:canada.ca
カナダ国歌「O Canada」音量注意! 出典:canada.ca

もちろんフランス語で歌う時は、みんな声が急激に小さくなります。お約束。

閉会

この日に私が行った式典では、19ヵ国からの50名に市民権を授与されたそうです。カナダの強みは多様性だということに感銘を受けました。

写真撮影

最後に、その日市民権を得た一人ひとりが、記念に判事と一緒に写真撮影を行うことができます。家族や友人と一緒に来ている人は、本人だけで撮って、その後に家族と一緒に撮ることもできました。

まとめ

この会場では、終わりがけに係員が次の回の式典用の準備を始めていました。この日は同じ会場で計2回実施するそうです。家に帰ってから予定を見てみると、他の日も式典の予定はたくさん計画されていました。参加者にとっては人生で一回きりの行事ですが、カナダという国自体は、こうしたことを積み重ねて国に貢献してくれる人材を世界中から集めているんだと実感しました。

国籍や市民権」ということ、「その国の強み」ということを深く考えさせられました。また、 8年前にヨーロッパから単身カナダに渡って来て、色んな仕事をしながら「決してキラキラした楽しいことだけではなかった」と言うルームメイトの、市民権を獲得するための長年の努力が報われた一日でした。僕が本当に尊敬する彼の、一生に一度の大事な晴れの舞台に立ち会わせてもらうことができ、本当に嬉しい一日でした。

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