バンクーバーやBC州で生活している方、または旅行したことがある方ならば、一度は見たことがある、もしくは通ったことがあるであろうバンクーバーの象徴「Lions Gate Bridge(ライオンズゲートブリッジ)」について、不思議に思ったことはありませんか?
そう、この橋はなんと3車線という奇数で運用されているのです。交通量に応じてコントロールされているんだろうな、とは思いつつ、いったい誰が、どこで?と疑問に思うのです。
BC州の交通関係の担当機関である「TranBC」がその疑問を下記の記事で紹介していて、今回はそれを参考にしつつ謎を解明していきたいと思います。
そもそもライオンズゲートブリッジとは?
バンクーバーのダウンタウンやスタンレーパークがある南側と、ノースバンクーバーやウェストバンクーバーのある北側を結ぶため、1938年に開通された吊り橋です。長さは高架橋も含めると1,823mともなるこの橋の正式名称は、その入り江にちなんで「First Narrows Bridge」といいます。1日の交通量は60,000~70,000台と言われ、2005年にはカナダ国定史跡に指定されています。
橋の北の方向には2つの尖った山頂のある山「The Lions」があります。古くから先住民の崇拝の対象であったこの山の方向に向かう門となる橋という意味合いで、敬意をもって「Lions Gate Bridge」と名づけられました。
開通した翌年の1939年、カナダ人の著名な彫刻家により「2体のライオン像」が橋の南端に狛犬のように設置されました。このライオンが橋の名前の由来になった訳ではなく、あくまでも象徴的な存在なんですね。
歴史的に、もともとは、会社が運営する有料の橋でした。
その建設にあたっては、反対意見もあったといいます。しかし、建設に意欲的だったある地元の技術者が、各方面に熱心に働き掛けを行い、住民投票で大多数の賛成を受けるに至ります。そして、あのビールで有名なギネス一族が彼の熱意に賛同したことで、経済的援助を取り付けることになり、総工費約600万ドルを費やして建造が行われました。1年半という歳月をかけ、ついに橋が完成すると、当時は自動車や馬車には25セント、歩行者や自転車の通行にも5セントを通行料として徴収していたそうです。1963年にその管理権が政府に渡るまでの四半世紀の間は、通行料が必要な橋として使用されてきたのです。
建設当時から今のスタイルだった訳ではありません。当初は片側1車線の橋として建設されましたが、橋の開通によりウェスト・バンクーバーの人口が増えたために交通量が急増し、苦肉の策として3車線に増やされることになったのです。ただ、真ん中のレーンは当初「追い越し車線」として設置されました。ご想像のとおり、対向車との衝突が多く発生し「自殺専用車線」と揶揄されたとも言われています。。その噂を知ってか知らずか、その後に信号による管制が行われるようになると、どちらの方向にも安全に通行することができ、緊急車両も通過しやすくなりました。
橋の交通のコントロールについて
そもそも誰がコントロールしているのか?AI?
人工知能による自動管制ではありません。BC州が一部の道路事業を委託している「ミラー・キャピラノ・ハイウェイ・サービス社」が、橋の上や周辺道路に設置された計40ヵ所以上のビデオカメラを24時間監視し、道路の交通量のコントロールを行っています。さらに、早朝の6:00から22:00の間は、2人の作業員が橋の両端に実際に立って、事故防止のための交通整理作業を行っています。
では、いったいどういったタイミングで3車線の車線の管制を行っているのでしょうか?
平日の午前中のオペレーション
まず、時間帯によって状況が変わってきます。
平日の早朝6:00には北側のノースバンクーバーエリア方面からダウンタウン方面に移動する車両が多く、通勤ラッシュが発生します。その間は、中央車線を南向きにします。その際、ダウンタウンエリアに入ってすぐのジョージア通りでも同じく混雑が発生します。こちらは市の管轄の道路になりますが、タイミングをうまく連携し、南向きの車線を増設するようにコントロールします。ダウンタウン内に入ってしまえば、そこまで混雑はしないので、そこに至るまでの通勤車両をいかに流すことができるか、というのがポイントになります。
朝9:30頃になると、市はこの南向き追加車線をなくします。その時間帯に、橋の中央車線も北向きに変更されます。
平日の午後~夜間のオペレーション
朝9:30の変更後の時間帯からは、交通状況に応じて中央車線の向きをコントロールする必要があるため、車線監視員は非常に忙しくなります。
15:00になると、今度は帰宅ラッシュの時間帯になるので中央車線は基本的に北向きになります。ただし、ノースショアのある北側からバンクーバー方面に南向きで入ってくる車は、決して減るわけではありません。橋のあるジョージア通りに入ってくる分岐などで渋滞が発生しないか、よく見張る必要があります。特に高速道路のHWY1にまで待機車両があふれてしまわないよう、よく注意します。そのため、この時間帯は状況に応じて急に中央車線の向きが変更される可能性があるのです。
平日の深夜のオペレーション
平日の深夜0時から朝6時までの間、緊急車両の通行が容易にできるよう、中央車線は基本的に閉鎖されます。交通量も少ない時間帯で特に大きな問題にはなりません。
週末のオペレーション
週末は非常に忙しいと言えます。朝から晩まで一日を通じ、双方向の交通量を監視し、状況に応じて車線方向を変更していく必要があります。
車線の向きの変更はどうやって行われるのか?
オペレーターが車線方向の変更を決断すると、変更終了まで5分間の時間をかけて注意喚起をしていきます。まず、中央車線の信号機は30秒間黄色の点滅を行います。その後、1分30秒の黄色点灯、その後に3分間の赤信号になります。その後に青信号になる側も含めて両側がまずこれでクリアになります。完全にクリアになったのを確認してから、新しい方向の信号が手動で青にされます。
リアルタイムに知りたい
ATISというシステムを州政府が設置してくれています。
パイロットの皆さんは、飛行場情報の放送システムね、と直感で考えますが、もちろん違います。Advanced Traveller Information Systemの略で、先進型通行車情報システムとでも訳されるでしょうか。詳しくは、下記のリンクにて有効な車線の向きとカメラ映像をリアルタイムでご覧いただけます。
まとめ
この業務に携わる多くのスタッフが、混雑の防止という一般的な目的だけでなく、緊急車両の通行を円滑にするという重大な使命を負って、今日も監視を続けてくれています。